ケータハムの摩訶不思議 — ホットライン 2014 round16 ロシア
初めて行なわれたロシアGPは、想像以上に興味深いスペクタクルなレースとしてF1GPの歴史に1頁を書き加えた。
ルイス・ハミルトンが完全にレースを支配し、ニコ・ロズベルグがまたもやミスで後退、タイトルの流れが決まったかにも見えた。そして、可夢偉の不可解な”扱い”も、初のロシアGPの忘れられない出来事として記憶された。
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、手に汗握るロシアGPの熱戦を振り返り、今後の展開をズバリ診断する。
◆ナイーブなニコ、チャンプの貫禄、ルイス!
羽端恭一(以下、羽端):スティンガーの記事、レース後トップスリー会見の前説で、ニコ・ロズベルクが自分のミスを認めたのは、「サマーブレイク後の5戦で、ベルギー、イタリア、ロシアで3回目」だ!・・・・というのが可笑しかった。
(STINGER編集長山口正己(以下、STG):「正直はいいけれど、これではチャンピオンにはなれない?」と続くやつですね。じつは、翻訳の方の感想なのですが、その通りと思って(笑)。
羽端:ニコって、ひょっとしたら”いいヤツ”なのかもしれないけど、これではあまりにナイーブすぎる(笑)。チャンピオンというのは、やっぱりちょっと”悪人”じゃないとね。
STG:あれ、フェアプレーがお好きだったのでは?(笑)
羽端:ウン、ぶつけるのはダメ。でも、ぶつかっちゃったのは、しょうがないでしょ?
STG:確かに。しか、ぶつかっちゃった、としても、結果としてぶつかるのはダメですね。
羽端:誰がどう見ても、「あーあ、ぶつかっちゃったよ」と思わせる、そう見せるのがオトナ(笑)。
STG:まぁ(笑)。
羽端:こういう場合は質問も出ないですよね。記者も含めて、あれは仕方なかったと見えた場合は。
STG:すでにわかっていることだから。言わずもがな、ってやつで(笑)。
羽端:でもニコの場合は、バレバレで(笑)事故ってるから、みんなが質問する。あれはどうだったの?って。
STG:それもあるけれど、ある意味集団いじめに走っているような(笑)。
羽端:そして、それに対して、実はぶつけたんだと答えちゃうところも可愛い。まあ、そういうニコは微笑ましいですが。
STG:そもそも、彼はドイツ国籍だけれど、モナコできちんと育ってますから、礼儀というか、そういう点で、ちゃんとしているのかも、ですね。
羽端:今回はもちろん事故じゃなくて、”単独トラブル”ですが。でも、少しでもコーナーを速くしようって、ブレーキングを遅らせて、そしたら間に合わなくなって、タイヤにフラットスポットを……って、これもまた可愛いですが(笑)。
STG:あの瞬間、終わった、と思いましたけど、すぐにタイヤ交換して、その後、ずっと換えずに 結局2位まで上ったのは立派と思います。フテて、ていねいなレースができなくても、仕方ない状況であきらめなかったのは素晴らしいですね。
羽端:そう! だから、すごくセンスはあると思う。まあ(センスが)なけりゃ、ここ(F1)で走ってないですけど(笑)。
STG:基本として、F1にはナショナル・チャンピオンだけがなれる高い壁があるわけで。
羽端:ルイスはルイスで、ここ数戦、成熟にして万全というレースを続けてます。
STG:もう、余裕かましてますね。
羽端:今年はもう「あの時のぼくじゃない」って、これまたカッコいいコメントで。
STG:ですね。
羽端:でも、決勝での5位までが、みんなメルセデス・エンジンで。
STG:特に今回は、マクラーレンがよかった。来年からホンダを積む”マクラーレン・ホンダ”を、勝手にセナ-プロ時代にダブらせていますから、あまりふがいないのは困る(笑)。
羽端:そう。われらがホンダは、そんなエンジンの後を引き受けるわけで。
STG:問題はそこです。ホンダの現状の完成度は、決して高くない、というウワサもある。もちろん、1年遅れで参戦するデメリットは計り知れないほど大きいわけですし。
◆ホンダはどう闘う? そして可夢偉は?
羽端:そのホンダの新井さんが語ってましたよね。すべてはスケジュール通りである、と。
STG:う〜ん。
羽端:数ヵ月あれば何でもできるというのが”ホンダ・ウェイ”なんでしょうけど。
STG:そんなに簡単にいくのかなぁ。しかし、メーカーは、スーパーコンピュータも持っていて、演算スピードはとんでもなくハイスピードで、我々の理解を越えた効率でコトをこなすかもしれないので・・・・。
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羽端:またホンダの場合、市販車レベルですけど、ハイブリッドというか「電気」と組み合わせてクルマを走らせることについてのキャリアとノウハウは、かなりある。
STG:いや、わかりませんよ。でも、F1という闘いのレベルでは、スケジュール通りというのは、どうなんだろう、と言う心配はぬぐえないなぁ。
羽端:いま「テスト」ができないですよね、規制が厳しくて?
STG:今のところでは実戦に出ていない、というのは、そういうところも含めて、かなりのデメリットになると思います。
羽端:現時点で「F1チーム」じゃないところは、とりあえず(パワーユニットを)載せてみるという、そんなことができるような旧型もないわけだから。
STG:ですね。その動態テスト用のクルマを今作っている、というのは、時間的に心配なことろです。
羽端:合同テストという場でしか、走らせることができないとしたら、いくら”クイック・レスポンス”のホンダでも……。
STG:想像の範囲を出ないので、なんともですけど(笑)。
羽端:・・・・で、シーズンに突入してしまったら、もうテストもできなくて?
STG:ですね。
羽端:そのへんは、むしろマクラーレンがいろいろ、テストも含めた闘い方のノウハウは持っているんでしょうけど?
STG:そりゃそうでしょ。ホンダはレーシング・チームじゃないわけで。
羽端:なるほどね。あと、ちょっと新井発言で気になったのは、「勝てるドライバーがほしいんだ」と。そうすると、マクラーレン&ホンダがイメージしてる「勝てる」の中に、ドライバー可夢偉は入ってるのか?
STG:わかりませんけど、冷静に判断して、可夢偉を入れていると思いたいです。
羽端:ウム?
STG:なにしろ、日本語が完璧で、その言語でホンダのエンジニアと語れる、というのは、開発の面でも相当な強みになるはずなので。
羽端:・・・・ですよね。
STG:もっとも、このあたりの重要性がなかなか、現場経験がないとわからない、というのがネックかもしれないですね。
羽端:それにしても、ロシアでのケータハム&可夢偉は不可解だった。
STG:ホントに。BBCのレポーターの質問に、実に可夢偉らしくない歯切れの悪さで、”ピットに入れといわれたのでそうしたけれど、リタイアした理由はわからない”といってますから。
羽端:そ、そんな!
STG:なんともです。しかし、単に、その時は原因がわからなかった、というのもあるかもなので、なんともですが。
羽端:何にしても、可夢偉については、ほんと、”いいニュース”がほしいです。
STG:まったくです!!
【西湘-西八王子】
Photos by
Caterham F1 Team / LAT Photographic (円陣を組むエリクソン、グリッドに着く可夢偉)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team (ロズベルグ&プーチン大統領)
Pirelli & C. S.p.A. – Pirelli Tyre S.p.A (レーススタート)
McLaren / LAT Photographic (マグヌッセン&バトン、バトンのガレージ)
McLaren (MP4-4)