ホットライン 2016 round19 / メキシコGP・その2–ロズベルグはなぜ速くなったのか
(その1からつづく)
2300mの高地のグランプリは、薄い空気と裏腹に、中身の濃いレースだった。特に終盤の先陣争いは、満員のスタンドを熱狂される展開。3位表彰台が2回入れ代わる事態にも発展した。
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、滑りやすい路面で展開したメキシコGPを振り返る。
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◆超一流を見ることで、ドライバーは「育つ」
羽端恭一(以下、羽端):今回もアメリカGPと同じように、ルイス・ハミルトンがポール to フィニッシュの万全なレースをしました。
STINGER編集長(以下、STG):今回は完璧でした。ただ、スタートでちょっと”おっと〜”な場面がありましたけど。
羽端:あ、最初のコーナーで、ブレーキをロックさせてました。
STG:オーバーランしてコースオフ。以前だったらグラベルに嵌まって一巻のオワリの場面でした。
羽端:ふと、ひとつ重大なことに気づいたんですけど。今年のチャンピオン候補として、いまニコ・ロズベルクが一番近いところにいますが、ニコって、ルイスがちゃんと走ってるレースで、ルイスに勝ったことってあるんでしょうか?
STG:ルイスがトラブルも何もなくレースした場合に、ってことですか?
羽端:そうです。前回と今回では、ルイスはニコより速いことを示しました。それと同じように、要するに「コース上」で、ニコはルイスより速いんだっていうのをみんなに見せたことって、あったのか?
STG:どうでしょうね。でも、ハミルトンがイメージとして、速さで負けたことはい気がしますけど、負けは負けですからね。
羽端:なんかイメージとして、いわば幸運な勝利がニコには多いという感じがあって。もちろん、運も実力のうちなので。
STG:ですね。
羽端:その、何というか「強さ」の記憶ということでいうと、ルイスの方がそれがあるなあ、と。
STG:確かに。星野一義さんに、ロズベルグは、以前はあんなに速いイメージがなかったけれど?と伺ったら、間髪いれずに「育つんだよ」とおっしゃってました。ハミルトンという速い対象と同じチームで走っていると、伸びる、と。ハミルトンが超のつく一流であれあるほど、ロズベルグは伸びる。
羽端:ははあ! 背中を見ながらでも学んでいく、と。
STG:というより、『朱に交われば赤くなる』、ってことかと。
羽端:なるほど。それはわかる気がします。そういう意味でも、強いチームでレースをするというのは、ドライバーにとって──あ、チームの全員にとってか、つまりはイイコトなんでしょうね。
STG:そういうことですね。
羽端:何にしても、もう後は二戦だけになってしまいました。
STG:ですね。
羽端:でも、たぶん、最終戦まで(チャンピオンは)わからない。でも、これは、いい流れ、観客としては。当人たちは大変でしょうが(笑)。
STG:やってる人が大変なほど、観ている方は楽しい、と相場は決まってます。なので、やってる方々には、御愁傷様ですけど(笑)。
◆終盤の表彰台を賭けてのギリギリ・バトル!
羽端:あと、今回の終盤はいろんなことがあって、おもしろかったですね。
STG:途中でウトウトっとなりましたけど、我慢して起きていた甲斐がありました(笑)。
端:表彰台をめぐってというか、マックス(フェルスタッペン)とセブ(フェッテル)、そしてリカルドの攻防が壮絶でした。
STG:改めてフォーミュラ・カーがなぜタイヤが飛び出しているのかを思い出させる展開でした。
羽端:というと?
STG:タイヤ同士が当たったら大変なことになるじゃないですか。だからカバーした方がいいという意見がある。でも、そうしないところがフォーミュラカーの神髄と思います。
羽端:フム。
STG:ぶつからないように、ギリギリのせめぎ合いをする。それがモーターレーシングの本質であるわけです。フェルスタッペンは、それを過去の先輩たちよりもっとギリギリでやる。だから批判も出るわけです。無理に入っても、相手はよけるべきだ、みたいな。
羽端:ハハハ(笑)。たしかに、彼はちょっと「キケンなヤツだ」と思う時がある。
STG:でも今回のハイライトは、フェルスタッペンがショートカットをしたということで5秒加算のペナルティを受けて表彰台を失ったけれど、その後、繰り上がりで3位になったフェッテルにもペナルティが下った。そちらは、リカルド+レッドブルとの攻防の動きが、”危険、または不安定な走行”になった。
羽端:あの「対リカルド」の場面ですね。
STG:フェッテルに迫ったリカルドがインを差したとき、右側にい
たフェッテルの左リアと、左側にいたリカルドの右フロントがチョンチョンと当たった。ちょっとヒヤッとしましたが、リカルドがよくみてコントロールして事なきをえたけれど、かなりきわどい場面で、下手すると、フェッテル+フェラーリは弾かれてて転倒クラッシュということもあり得た。
たフェッテルの左リアと、左側にいたリカルドの右フロントがチョンチョンと当たった。ちょっとヒヤッとしましたが、リカルドがよくみてコントロールして事なきをえたけれど、かなりきわどい場面で、下手すると、フェッテル+フェラーリは弾かれてて転倒クラッシュということもあり得た。
羽端:ええ。思わず声が出そうになりました!
STG:そういうギリギリの場面があるからフォーミュラカーのレースは面白い。いや、危ないから面白いんじゃなくて、危なっかしいというか、そういうリスクをギリギリで回避するからF1ドライバーはかっこいいというか。
羽端:今回は改めて、それがよく見えたレースで?
STG:その通りでした。
羽端:しかし、コースをはみ出して戻ったフェルスタッペン+レッドブルにペナルティが出たとなると、スタート直後の1コーナーで大きくコースを外れたハミルトン+メルセデスはどうなの? とも思うんですけど。あれは、ルイスは誰にも迷惑をかけず、また、何も「トクしなかった」からということなのかな?
STG:そこはなんとも。タイトル争いは、先のばししたいところでしょうから。
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MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team
Red Bull Racing / Getty Images/Red Bull Content Pool