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琢磨のクラッシュを読み解く (2/2)

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オーバル・レーシングでの暗黙のルール
オーバル・レーシングは、最後の30周に先陣争いが集約している。そこに見せ場を持っていく、というよりも、そこで決まる勝負に備えておくことこそ肝心だ。インディカーの場合、ウェイトジャッカーという4輪のタイヤへの加重を調整する装置があり、燃料搭載量やタイヤの状況はもちろん、最後の30周に向けて、自分のポジションや周囲の状況を判断し、ウェイトジャッカーを使って”最適なクルマを作っていく”。残り30周までの間は、クルマを作る時間であって、バトルする時間ではない。

したがって、序盤と中盤に琢磨が何度かパッシングを試みた時、相手は、まだまだ本気モードではなく、だから簡単に譲ってくれた。しかし、武藤英紀と当たった186周目は、全員が”戦闘モード”に入っている。そうした中で、「リスクが20%あったら、引くべし」という不文律がオーバルにはあるという。新人琢磨は、その頃合いがわからなかった。

琢磨のマシンが前に出ている状況だったなら、英紀が攻められていいかもしれないが、周回遅れを右から抜きにかかった英紀は、彼女がラインを膨らませてきたことで右に寄らざるを得なかった。その状況は、英紀の斜め右後ろにいた琢磨の立場では、「20%以上のリスク」があった、ということになるのだ。

ここで仮にうまく英紀を琢磨が抜いたとしたらどうか。高速オーバルでは、スリップを使って抜き返される可能性が非常に高い。これがロードコースなら、”ここしかない”という場面だったかもしれないが、オーバルはもっとチャンスがあり、逆に、前にでてしまうと、逆転される可能性が高くなるのだ。

とはいえ、これがショートオーバルなら話が違う。追い越しの難易度が上がって、ロードコース同様に、”ここしかない”場面になるからだ。そうなった場合は、ある程度のリスクを背負っても前に出るべきだが、高速オーバルでは、無理は禁物。次の第5戦、伝統のインディ500は、もっとスピードの出る超高速であり、この不文律は必須事項になる。

これを破ると、自分だけでなく相手に怪我を負わせてしまう危険をよびこんでしまう。そうした動きをするドライバーは、”空気を分け合う”と表現されるオーバルレーシングの仲間入りをさせてもらえない。お互いのクルマの作る乱流の中でのバトルの権利を与えられなくなってしまっては、勝負はできない。

また、十分なスポンサーがあるとはいえないチームの場合、クラッシュを絶対に避けたい状況もある。共同オーナーのジミー・バッサーは、3月に行なわれた琢磨のインディカー挑戦発表の会見で、琢磨へのアドバイスを「チームオーナーのいうことをよく聞くこと」とジョークを飛ばしたが、実は、このことを予見した言葉だったとも思える。

in100501012L.jpgとはいえ、初のオーバルで、琢磨は、オーバル・レーシングの奥深さを学んだ。観方によっては琢磨はツキがあった。オーバルは、一瞬にしてマシンがバラバラになるほどの大きなクラッシュが珍しくないが、オーバルのクラッシュとしては、”軽傷”で済んでいる。”洗礼”としては、実に効率がよかったとも言える。

さらに逆の観方をすると、経験は改善が可能だ。初のオーバルでのレース中のペースも悪くなかった。と解釈すると、この頃合いを学ぶことを優先してレースを進めれば、すぐにでも上位に食い込める可能性がありそうだ。

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