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【特別企画】 拝啓トヨタ自動車様 3)確実に実力を向上(2/2)

*このページは、『トヨタF1撤退会見全録』のリンクページです。会見のコメントを解説しています。

(1/2からつづく)

前略
デビュー前年(2001年)、鈴鹿で行なわれた日本GPの会場で、御社モータースポーツ責任者であった斎藤副社長(当時)に、その年限りで引退を表明していたF1ドライバーのジャン・アレジとの契約をお薦めしました。すでにデビューに向けてトヨタF1チームはミカ・サロと契約済でしたが、もう一人が未定でした。

アレジは、人徳もあり、それによる幅広い人脈を持ち、かつドライバーとしての開発能力もあり、ついでに言えば後藤久美子さんのご主人という日本贔屓でもあることが推薦理由でした。本人に確かめると、できれば引退したくないが、条件の合うチームがない、とのことでした。

J.アレジは、F1にデビューするトヨタにとって、道先案内人であり、親善大使の役目ができる格好のドライバーだったのです。ちなみに、その日本GPで引退を決めていたアレジを、”仲間”が祝福するパーティが、会場の鈴鹿サーキットに近いイタリアン・レストランで開かれていました。たまたま、アレジが1998年と1999年に所属していたザウバーにいた元ホンダの後藤治さんと夕食をご一緒した後に、そのパーティの会場の前を通り掛かりました。後藤さんが”ちょっと覗いていこうか”というのでガードマンが警備している貸し切り会場を覗くと、室内にいたのは15人ほど。中身の濃さに腰が抜けるかと思いました。ミハエル・シューマッハ、ジャン・トッド、ペーター・ザウバー、フラビオ・ブリアトーレ、エディ・ジョーダンなどなど。アレジの人徳を証明するメンバーでした。

F1GP201戦目のアレジを祝うチョコレート。送り主は非常にコンクな面々だった。
091106_AREJI.jpg

以下は、WEBに掲載した2001年10月14日の私の日記の一部です。
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何はともあれ残念だったのは、アレジの序盤のリタイア。しかし、ライコネンのスピンのもらい事故だったのに、マシンを降りてライコネンに近づいたアレジは、ライコネンの肩にそっと手を置いた。思わず、場内放送で、”アレジはああいう奴なんですよ!”と叫んぢゃったが、「オレは去っていく、オマエはこれからだから」というやさしい言葉が聞こえるようだった。
ところで、アレジはコレでF1レースを走らない、と言ったが、もうひとつお願いしたいことがある。昨日も、レーシングパブに書き込みした”トヨタF1のドライバー”。単に、アグレッシブな魅せる走りでありながら完走率が高い、というドライビング能力だけで薦めるんぢゃない。トヨタがこれから仲間入りするF1ソサエティとの親善大使として、アレジのような人望の篤い存在が必要だからだ、絶〜対に。日本はそろそろ”金持ってる黄色い猿”と言われることから卒業する時だ。どうしたらF1ソサエティにうまく溶け込め、単なる金持ちとしてだけでなく、本当の仲間として彼らとうまく付き合っていけるか、それが問題。アレジほどうまく仲を取り持ち、時にはアドバイスできるドライバーはいない。悪いが、ミカ・サロとアラン・マクニッシュの二人足しても大使としては役不足。実は、木曜日、私が紛れ込んだ例のとってもコンクなアレジ送別会の後、フェラーリのジャン・トッド、ベネトンのフラビオ・ブリアトーレ、そしてザウバーとジョーダンの前で、シューマッハは、感慨深気に「こういう集まりがもっと必要かもね」と言ったそうだ。決勝前のパドックで、トヨタのモータースポーツ最高責任者の斎藤副社長を遠くに発見! 私は思わず走り寄って、挨拶もそこそこに”アレジと契約してください”、と演説してしまった。アレジが担う役割の重要性を、斎藤副社長以下トヨタの方々が気づいてくれるなら、これ以上の幸せはない。
・・・

◆TMGはなんの略?
この1週間ほど後に、こんな返事が返って来ました。「アレジは大借金があるそうですね」。結局、大借金がある、と思われたJ.アレジは、その信憑性も確認されないままにアラン・マクニッシュがトヨタのナンバー2として決まりました。これを友人は皮肉を込めてこう言いました。「TMGって、”とりあえず・マクニッシュで・ゴメンナサイ“の略かもね」。そつなくこなしてご機嫌伺い。ホンモノを知る人がいては邪魔になる。アレジはこうしてF1を引退することになりました。

アレジが大借金があったかどうか私は知りません。しかし、仮にあったとして、それとレースはまるで関係ない。それよりその話を伺ったときに感じたのは、”アレジに来られてはマズいと思う人がいたに違いない”、ということでした。A.マクニッシュは、当時すでに33歳でしたが、F1の経験はマクラーレンのテストドライバーの経験しか持たないドライバーでした。つまり、F1界に人脈も情報網もない。アレジはそれが豊富にある。そして、金よりも勝ちたいと思うことが大切であることを知っている。とすると、F1界に通じているアレジが来られては”商売”が面倒になる。誰かがそう思ったのです。その誰かは、もちろん、お金が一番と考えて御社F1チームに群がってきた方々です。

マズいことに、御社は当時世界一の自動車生産台数を誇る会社になろうとしているところで、契約金にゼロがひとつ余計についても払えるだけの資金力があった。だから払ってしまってもちっとも困らなかった。しかし、それが原因で勝ちたい人が集まっていないばかりか、もうひとつの弊害も生んでいました。正しい情報が集まらない、という状況です。

黙っていれば金になる連中にとって、余計な情報は不要です。金づる(ここではトヨタ自動車です)には、都合のいい情報だけを与え続ける。知らない金づるは、それが世の中の水準だと信じて、子細な検討をせずに金を出す。こんな按配ではなかったかと拝察いたします。

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