フェラーリ F10
フェラーリ F10
フェラーリF10で目に付くのは、2009年シーズンで実質的にナンバーワンの速さを披露したレッドブルRB5を連想させるハイノーズだ。ウィッシュボーン前側あたりにあるノーズのピーク両端が隆起している点も酷似している。フロアやリヤウィングにいかにクリーンな空気を流すかについては、09年シーズンを迎える段階でチームごとに最適解を導き出していたのだろうが、レッドブルが採用した形状を試してみたら結果が良かった。「ならば10年はウチもそれでいこう」となったのだろう。RB5風ノーズを軸に、09年のF60で採用した各部を最適化して組み合わせ、再構築したのがF10だ。09年シーズンは「後追い」となったマルチ・ディフューザーはあらかじめ折り込んだ設計になっている。
フロントタイヤ接地面が乱す気流の影響をいかに最小限に食い止めるかが、フロントウィング翼端板まわりが受け持つ重要な役割だが、F10のそれは09年シーズン後半にF60が採用していた形状をリファインしたものに見える。発表会ではディフューザーを厳重にカバーしていたことから、「フロントウィングもダミー?」と疑っておいた方がいいかもしれない。テストを通じて進化し、開幕戦には違った形状で現れる可能性は十分にある。
フロアに空気を導くガイド役を果たすバージボードは洗練された形状のものが取り付けられており、09年シーズンに蓄積したノウハウを感じさせる。フェラーリ・オリジナルのポッドウィングにマウントされたミラーと、ポッドウィングを効果的に機能させるための後退したサイドポッドは、F60からのキャリーオーバー。サイドポッドの絞り方もF60との共通性を感じさせるが、燃料タンクの増量に合わせてモノコックが長くなったぶん、絞り込みの処理がなだらかになった。
09年のF60発表時はやっつけ感があふれていたエキゾーストパイプ出口はすでに完成度高く処理されている。開口部の位置はかなり前方に位置するように見えるが、ボディワーク後端の絞り込みを実現するため、09年のトヨタTF109のようなリバース構造(エキパイを一旦前方に延ばし、180度転回させる形状)を採用しているのかもしれない。リヤウィングやリヤ・サスペンションまわりの造型は、F60をベースにリファインしたと判断して良さそうだ。