フェラーリ 「F2012」 解説
機能由来ではなくレギュレーション由来だから醜く見えてしまうのだろう。モノコック前端の高さはリファレンス・プレーンから最大625mmまで認められている一方で、ノーズの高さは550mmまでしか認められていない。前から後ろまで550mmで統一して設計すれば流麗なラインで構成できるだろうが、それではノーズ〜モノコック下の空間容積が確保できず、空力的に不利になってしまう。下の空間を確保しようと思えばどうしても75mmの段差が発生してしまい、結果的に不格好になってしまうのだ。
アグリー(ugly)と言いたい気持ちをこらえてアグレッシブ(aggressive)と表現しておきたいこのノーズ、ただ1点を取り上げて、F2012は「ダメ」の烙印を捺すのはまだ早い。極めて保守的な設計だった2011年のF150°イタリアに比べれば、F2012は格段にラジカルだ。
成功を収めたレッドブルにならい、トップ〜中団チームが一斉にプルロッド式リヤサスペンションに流れるなかで、F150° Italiaだけは流行を追わず、プッシュロッド式を踏襲した。そんな保守的な考えを改め、F2012ではプルロッド式に転換。驚くべきはリヤだけでなくフロント・サスペンションもプルロッド式に切り替えたことだ。空力的に有利だというのがレイアウト変更の最大の理由らしいが、果たしてフロントほどの効果を発揮するのか。成り行きに注目である。
テールパイプをカバーするフェアリングが張り出しているせいで目立たないが、リヤの絞り込みは一段と進行した。CFRP製のギヤボックス・ケーシングはスリムに設計しなおしたという。そのギヤボックスにラジエターの一部を配置する設計としたのは、ボディサイド部のボリュームを小さくするため。ラジエターにフレッシュなエアを導く目的で、インダクションポッド後方にダクトを追加した。サイドインパクト・ストラクチャーの構造を見直したのも、ボディをスリムにするのが目的である。
【STINGER / Text by Kota Sera(世良耕太)】
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