BMWザウバーの”やる気”
4週間ぶりのグランプリ。会場のあちこちで、”久しぶり!”のあいさつが交わされる。バカンスに行ったものもいれば、頭の中で新しいパーツや作戦を密かに練っていた者もいるはずだが、特別な心境で過ごしたグループがある。
BMWザウバーは、ハンガリーGP直後の7月29日に、親会社であるBMWが、今シーズン一杯での撤退を発表した。休暇はその直後に始まった。スタッフは、休みどころではなかったはずだ。
「今年一杯、チャレンジングに闘い続ける」とチーム代表のマリオ・タイセンは語っている。素通りすると、当然のことに思えるが、それは”会社員”の理屈であって、チームのスタッフやドライバーにとってみれば、今年一杯で終わるチームに、どうモチベーションを持てというのか、ということになる。
どことなく沈みがち。
ことに、今年のBMWザウバーは、成績不振で10チーム中8位と低迷している。タイトルがかかっているか、せめて4番手争いをしているならまだしも、闘う意思を持ち続けるのはただでさえ簡単ではない。
BMWの会社自体は、F1をやめても生産車を作っているから、社員は部署を変われば済む。しかし、エンジニアやメカニック、そしてドライバーを含むレースを専門とするチーム・スタッフにとって、今一番気になるのは、チームの成績よりも自分の来年、というのが人情だ。
“これから先の7戦で、BMWザウバーが好成績を残したとすると、それはBMWがよほどのボーナスを弾んだか、奇跡が起きたときだけだ”というささやきがパドックから聞こえた。
やや哀しい視点だが、多分”会社員”には気づけないその気持ちを思いつつ、BMWザウバーがどんなレースを展開するのかを見るのも、厳しい闘いを感じるひとつの方法かもしれない。
[STINGER] /Masami Yamaguchi