ザウバー、C30でさらに上を目指す
ペーター・ザウバーがBMWから独立し、再び自らF1チームを運営するようになって、1年が経過した。ザウバー・チームの代表は、さまざまな出来事に彩られたシーズンを次のようにふり返っている。
Q.チームを買い戻して、後悔したことはありませんか?
ペーター・ザウバー(以下、ザウバー) 一度もない。チームを存続させてゆくのは難しいことだが、これからも後悔はしないだろう。逆に引き受けなければ、今ごろ悔やんでいたに違いない。ここまで、問題をひとつずつ解決しながら進んできた。1年前と現在の状況を比較すれば、チームのスタッフ全員が誇らしい気持ちになるはずだ。
Q.当初はずいぶん苦労していましたが、そのときの心境はどうだったのでしょう?
ザウバー: もちろん厳しかった。マシンは遅く、信頼性も不十分だった。以前にはなかったことだ。しかも、F1ではよくあることだが、運にも見放されていた。それ自体が苦しいことだし、おかげでスポンサーになってくれそうな企業との交渉も上手くいかなかった。
Q.ところがバレンシアGP以降、状況は急速に改善しました。きっかけは何だったのでしょう?
ザウバー: 4月にジェイムス・キーがテクニカル・ディレクターになり、短期間で素晴らしい仕事をしてくれた。キーをはじめとする技術陣がC29の弱点を洗い出し、改善するためのはっきりした方針を打ち立てた。直ちにそれを実行に移し、効果が顕れたというわけだ。最初の8レースでは1ポイントしか挙げることができなかったのに、その後の8戦で36ポイントを稼ぎ、最後の3レースでさらに7ポイントを獲得した。ジェイムスはさらに、組織の改革にも着手した。好成績を収めたことで、チーム全体の雰囲気が大幅に改善された。
Q.シンガポールGP前に、ペドロ・デ・ラ・ロサからニック・ハイドフェルトにドライバーを交替させました。効果的な起用だったと思いますが?
ザウバー: 自分たちの力量を正確に計ることができない状況だった。ドライバーは二人ともチームに馴染みがなく、実力がよくわからなかったし、マシンの性能についても、判断がつかなかった。しっかりした基準が必要だったんだ。ニックのことは、何年もいっしょに仕事をしてよく判っていたから、さまざまな要素がどう改善されているかを計る上でおおいに役立ってくれた。
Q.小林可夢偉には満足していますか?
ザウバー: 可夢偉のおかげで、チームはずいぶん活気づいた。攻めの走りを見ていると、思わず笑顔になってしまう。スタンドの反応を見れば、ファンも喜んでいることが判るだろう。追越しのシーンは、いつ見ても素晴らしい。ただし、そのことばかりを強調するのは、彼に対して失礼だ。可夢偉は頭の良いドライバーでもあり、事前に組み立てた作戦をどう実行に移すべきなのかを心得ている。この1年で大きく成長したし、これからさらに進化するだろう。去年、彼と契約した時は、批判的な意見もあったが、とにかく可夢偉の中に、何か特別なものを感じていたんだ。彼をチームに迎えて、本当に良かったと思っている。
Q.来年は新人のセルジオ・ペレスとF1の経験が1年ほどしかない可夢偉と組ませるわけですが、大丈夫でしょうか?
ザウバー: ドライバーについては、何も心配していない。可夢偉は技術的な面でも進歩したし、新しく背負うことになる責任を果たしてくれるだろう。セルジオはたいへんな才能の持ち主だ。あとはどれだけ素早く順応するか、という点だけだ。きっと今年、可夢偉がペドロとニックからいろいろなことを学んだように、可夢偉といっしょに走りながら成長してくれることだろう。これまでで最高の成績を収めた2001年も、ドライバーは新人のキミ・ライコネンと1年しか経験のないニックだった。
Q.来年は小林可夢偉がエースということになるのでしょうか?
ザウバー: そういう区別はせず、二人のドライバーをあらゆる面で同じようにサポートしていくつもりだ。しかしもちろん、可夢偉が経験を活かして頑張ってくれるものと期待している。
Q.新しいマシンの開発は順調でしょうか?
ザウバー: ザウバーC30フェラーリの開発は予定どおりに進んでいる。高い目標を設定し、これまでのところ有望な状況だ。マシン作りに関するジェイムス・キーの能力は、すでに証明済みだろう。ダブル・ディフューザーの禁止や可動式リヤ・ウイングとKERS※の採用、そしてピレリ・タイヤへの変更など、今年は大きな変化があり、どうなるかとても楽しみだ。
Q.チームが売却されるという話もありましたが、どんな状況ですか?
ザウバー: 私がチームを100パーセント所有し、部分的な売却も考えていない。2011年の1月から始まるテレメックスとの契約にも、株式を譲渡するという項目は加わっておらず、純粋なスポンサーとしてチームを支援してくれることになっている。
Q.いつまでチームの代表という仕事を続けるつもりですか?
ザウバー: 去年、70になってまでピットに立つ気はないと言っていたが、今もその考えに変りはない。もう67才だから、あまり時間は残されておらず、重要なのはチームのしっかりした基盤を整えることだ。そのためには、資金面の整備も大切だろう。そうした点が整えば、私も一歩退いてゆっくり休めるはずだ。
ブレーキング時のエネルギーをチャージして、推進力にするシステム。搭載することで、スタートやストレートなどの強い味方になる。