浜島裕英 タイヤ”deep”トーク イギリス･グランプリのためのメモ
コースが延長され、趣を変えたシルバーストン。タイヤにとってどんなレースになるのだろうかブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者に訊いた。
◆バレンシアで「タイヤの使い方」を見せてくれた可夢偉！
浜島 まず前回のバレンシア（ヨーロッパGP）ですが、タイヤ的には、ほとんど問題はなかったですね。FP1（フリー走行1）が非常に路面が汚かったので、プライムでも”ささくれた”というのが特筆すべきことで、あとは、決勝になったら路面がキレイになったので、どっちのタイヤも、ほとんど”タレなし”という状態でした。
そして、小林可夢偉選手が、ああいう状況で、どういう風に「タイヤを使うか」ということを見せてくれたというのは、われわれとしては、非常に嬉しかった。
—-可夢偉選手は、セーフティ･カー導入も含めて考えると、タイヤの磨耗が、わずかながら「ネガティブ」（タイムの落ちがない、逆に上がっている）になってるんですが?
浜島 そうですね。全員が「ネガティブ」になってるんですが、やはり、新品のオプションと較べると、ずっと（プライムで）走りつづけたタイヤはキツかったと思います。そういう意味では、ああいうときに「ステイアウト」した場合には（タイヤは）どうやって使うのかということが、とても「キレイに出た」レースだったと思います。
◆タイヤにきびしいサーキットに変貌！
浜島 ここ、シルバーストンは、プレスリリースにも出しましたが、ストレートの距離が伸びて、そして「高速Ｓ字」が追加されたことで、だいぶ横Gもきつくなったし、また、アベレージ･スピードも上がったということで、タイヤにとっては非常にきびしくなっております。
タイヤの温度も、今日、ピットで110℃くらいになってますから、大きな横Gがかかる高速S字区間ではおそらく、150℃程度まで行ってる可能性がある。したがって、ソフトを付けた場合に、予選では、セクター3に行くまでに、リヤタイヤのスタビリティが足りなくなるということが考えられます。今日も、クルマによっては、そういう状態になっていた。
今日は、路面がまだ汚いので、横Ｇはまだ十分にかかっていない。明日になって、路面がよくなると、ソフト側のタイヤはさらにキツくなるという可能性は、十分に考えられます。
ですから、上手にリヤタイヤを使っていかないと、予選はちょっと辛いのではないかなと思います。（決勝）レースも、実際は、プライムがメインに使われるのではないかと見ています。
燃費データは、一周2.9キログラム／ラップ。それから、フューエル･エフェクトは、0.38秒／10キログラムです。
デグラデーションは、いまはオプションしかわからないですが、オプションの平均がだいたい、1.3秒／ハーフレース･ディスタンス。プライムの方は、今日は適切なデータがありません。オプションとプライムの差も、適切なデータがありません。
◆オプションを使いこなせそうなチームは?
浜島 ドライバーのフィーリングは、セクター1〜2まではソフト側の方がいい、と。セクター3でも（ソフトの方が）いいというチームがあるので、そのチームの場合は、オプションで十分行けるというようにコメントしていました。
—-そのチームとは?
浜島 今日の結果（フリー走行2）が、偶数番に速かったチーム（フェラーリ）。一番速かったチーム（レッドブル）は、速かったけれど、最後はちょっと辛いって言ってます。
予選は、ウォームアップを十分に気をつけてやらないと･･･。やり過ぎるとダメ（性能を使い切る）だし、やらないと、1コーナーが恐いし（笑）。
今日の段階では、路面はまだまだ汚くて、もっとよくなるよって、ドライバーはみんな言ってますね。裏のストレートは、ホコリでいっぱいだし（笑）。
—-新レイアウトになって、フロント･タイヤは?
浜島 フロントは、あんまり（影響は）来てない。リヤは、スタビリティがないというのが一番大きいですね。
—-バレンシアのように、交換なしで走れる?
浜島 ここは、キツいんじゃないかと思いますよ。
—-タイヤがそういう状態だと、セクター1と2では、タイヤの性能を”とっておく”のがいい?
浜島 そうですね、その最後って、ここ、けっこうタイムを稼げるんですね、昔から。
（ミシュランとの）コンペティションをやってた頃も、セクター1、2であんまり頑張っちゃうと、（ライバルに）負けちゃうことがあった。だから、（タイヤ性能を）「とっておける」なら、とっておいた方がいいかもしれない（笑）。
—-今回の路面温度は?
浜島 想定より、5℃くらい気温が高いですね。フリー走行2のスタート時（午後2時）は、路面温度は40℃で、終わり（のとき）は39℃。安定してました。気温は、始まったときが30℃で、終了時は29℃。
—-その高い路面温度を前提に、タイヤの作戦としては?
浜島 ここであれば、ハイ･ワーキングレンジのタイヤが合っています。もし、（いまタイヤで）コンペティション（をしているの）だったら、ミディアムとハードを持ってきますよ。
—-最近登場している、排気圧をリヤウイングに流すというシステムの、タイヤへの影響は?
浜島 いまのところは、大丈夫ですね。でも、セーフティカー･ランが長かったら（ゆっくり走っていることで冷えないことになるので）、わからない･･･。
