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浜島裕英の タイヤ”deep”トーク 

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浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者に聞く
◆イスタンブール「ターン8」、タイヤにかかる異様な負担!

今回は、ソフトとハードを持ってきました。理由は、ここは非常に(タイヤには)きびしい「ターン8」があるので、ということですね。

この「ターン8」は、だいたい平均時速が250〜260㎞/hです。それで、右のフロントタイヤの荷重が――ストレートだと、この速度で、右フロントタイヤの荷重というのは、いまだいたい400㎏ぐらいですが、しかし「ターン8」へ行くと760㎏くらいかかりますので、えー、およそ2倍ですか。

ここはそういうコーナーでして、かつ、約400メートルの間にわたって、「4G」以上が右にかかる。ターン8の”きびしい”区間というのは600メートルくらいあるんですが、そのなかでの3分の2くらいは、そんな「G」がずっとかかってる。ですから、「右のタイヤ」がどのくらい”きびしい”かというのは、この数字からおわかりいただけるんではないかと思います。

それで、(横からの)「G」がかかりますので、フロントタイヤのキャンバーが、だいたいマイナス1度くらいまで戻って行っちゃうんですね。だから、タイヤの外側はさらにキツいということがあります。

[Q]—-キャンバーは、いまのクルマですと、静的な状態で、マイナス3度くらいですか?
そうですね、マイナス3くらい付けていて、ストレート・エンドで、だいたいマイナス4くらい付くんですね。それが「ターン8」では、逆に戻って行っちゃうということなんで、タイヤにとっては非常に辛いサーキットが、ここであるということになります。

それで(クルマの)ダウンフォースも、去年対比で、さっきのデータでは、もう同じくらいに戻ってるということが判明して、タイヤにとってはほんと、大変だなと、改めて思ってるところです。……なので、今日これから、しっかりとタイヤをチェックしないと、日曜日(決勝)に危ないです。

◆金曜日は、タイヤにとって”微妙な”温度だった

温度ですが、ソフトとハードの「ワークする」境目が、タイヤの温度で85度くらいなんですけど、今日はちょうど、83度から85〜86度というところに(タイヤの温度が)なってるんですね。

だから、ドライバーにとっては、どっちのタイヤもグリップがよくなくて、そして、どっちで走ってもグリップも似たようなものだという感じになってると思います。

ソフトの方は、最初の方でグリップがよくて、そのあとで”ささくれて”グリップが悪くなるというのが、おおかたのコメントですが。でも、両方とも大きな差はないというようにドライバーはいっていますね。

週末に向けて、温度が上がるようですから、そうなると、ハード側のタイヤの方が、このサーキット/このレースにはフィットするのではないかとも思います。

これまででは、低速でアンダー、高速でちょっとアンダー……というのが、いまのメインのコメントです。それで、アンダーが出るんだけども、走っていると、だんだんリヤタイヤに”しわ寄せ”が来て、とくにソフトで長い間走ったドライバーは、後ろのグリップが落ちて、タイムも落ちていく。

――というのが、いまの状況で、これ(しわ寄せ→タイムの落ち)をどのくらい抑えることができるかで、レースでの有利/不利が出てくるのかなと思ってます。

ちなみに「デグラデーション」(時間の経過とともにグリップが低下してタイムが落ちること)ですが、硬い方がマイナス0.5秒くらい。そしてソフトの方は2.6秒くらい。二つのタイヤのタイム差は、だいたい、コンマ5秒(0.5秒)くらい。これが、いまの現状ですね。

090606_bs-2.jpg◆今年は、路面がタイヤを”削って”くれない?
[Q]—-二種のタイヤのグリップが似たようなものというのは、その原因は路面のコンディションですか?
そうですね、路面温度がちょうど、さっきも申し上げましたように「境目」なんで……。今日のプラクティス2の段階で、路面温度が一瞬、40度を超えたのかな。このへんで(二つのタイヤが)ちょうど”トントン”くらいなので、まあ、そのように推測してるんですけど。

[Q]—-タイヤそのもののグリップは、去年より?

ええ、上がってるわけなんですが、でも、みんな「グリップない!」っていいますね(笑)。

[Q]—-ターン8の荷重のかかり方は、去年とくらべて?

ターン8の荷重は、去年と、ほぼ同じですが……ちょっと、まだ(今年の方が)少ないかな?

[Q]—-(タイムが上がるはずの)セッションの後半に、タイヤをソフトに履き替えても、タイムがでませんでしたね?
そう! 最初はいいんだけど、すぐにフロントタイヤが痛んじゃうんですね。ルーベンス(バリチェロ)なんかは、一周目の途中で痛んじゃうっていってましたよ。

明日になって、路面がキレイになれば”ささくれ”の部分はよくなるんで、その分、「1周」のタイムは出るようになるんでしょうけど。でも、タイヤの表面を見ていても、あまり”溶けてる”感じがないので、そうなると、あんまり”ラバー・ダウン”(ゴムが路面に貼りつく)はしないかなとも思いますね。

そうなると、さっきいったように(タイヤを)上手に1周使うと、0.5秒くらいオプションの方が速いんですけど、そうでないと、ヘタすると、ハード側の方が予選にも適しているという可能性が高い。

[Q]—-路面温度が40度くらいの場合は、ですね?

そうです、路面温度が下がったら、ソフトも使い道があるかもしれませんが、路面温度が高いうちは、ハードの方が使いやすいということはあると思います。

[Q]—-ただ、ハードは暖まりが悪いとも?
そうですね、新品の場合は2周から3周かかるといってますね。でも、中古だと、1〜2周で、だいたい大丈夫です。

[Q]—-じゃあ明日は、午前中に”皮むき”するチームが出てくる?

出てくる、かもしれませんね、はい。……なんか、今回の路面は「細かいヤスリ」みたいなんですよね。とくにソフトの方は、それで削られたようになっていて、なかなかうまく、溶けてこない。去年の方が
溶けていて、ベトベトした感じになっていました。

◆ブラウン・グランプリ、今回は安泰ではない?!
[Q]—-去年あったような”スタンディング・ウェーブ”(波打ち現象)は今年は?

あ、(タイヤの)内圧下げられたら、出ますよ、もちろん! ですからいま、(BSのスタッフは)みんなで一生懸命ウォッチしてます。

[Q]—-さっき、「危ない」っていわれたのは、そういうことですね?

そういうことです。
あと、タイヤ全般でいうと、ここでは「右後ろ」も辛いけど、やっぱりリスクの高いのは「右フロント」ですね。

[Q]—-今回のレース、展望は

見てると、今回はブラウン・グランプリも、決して安泰ではないかもしれない。けっこうバランスに苦しんでますね。柔らかいタイヤでのオーバーステアも出てますし。ブラウン・グランプリのタイヤの表面は、あんまり痛んでないんだけど、でも、ドライバーは(性能低下で)痛んでるって感じる。

                【STINGER / text by Iemura Hiroaki】

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