【パート4/6】 F1史上最大の大変革/シーズン開幕が待ち遠しい!!
新技術を積極的に取り入れるべきか、手堅く行くべきか
3月14日(金)〜16日(日)におこなわれる、2014年F1チャンピオンシップ開幕戦のオーストラリアGPスタートまであと6日。STINGERでは、開幕戦に備えて、今年の見所やおさえておきたいポイントを6回にわたって紹介していく。
第4回の今回は、大幅なレギュレーションがあった年に新技術を積極的に取り入れるべきか、手堅く行くべきか、その選択でシーズンの闘い方にどう違いが出てくるかについて紹介する。
◆ブラバムとブロウンの作戦
話が古くなるが、エンジンが3000ccに決まった1966年に、若干非力だが完成の域にあった2500ccのレプコ・エンジンで闘ってタイトルを取ったブラバムや、最近の例でいけば2009年のブロウンGPが見事にその戦略、”低めの目標で着実に走る”作戦を大当たりさせている。
面白いのは、それぞれの勝利が、ブラバムが9戦中の6戦まで、バトンは17戦中の7戦までしか勝っていないことだ。つまり、シーズン序盤に、”鬼の居ぬ間の洗濯”をすることが、彼らの作戦でそれを見事に完遂させたのだ。
ロス・ブロウンは、KERS(運動エネルギー回生装置)が選択できた2009年に、KERSに一切振り向かずにコンベンショナルなマシンを送り込み、ドライバーズとコンストラクターズのタイトルを奪った。そして、そのブロウンが率いていたのが、メルセデスである。率いていた、と過去形にしたのは、ロス・ブロウンは、現在チームから離れたからだが、マシンのベース設計は、彼の陣頭指揮で行なわれ、今年用のF1 W05が同じ思想でデザインが進められたことは想像に難くない。
ホンダから生まれ変わったブロウンGPがワールドチャンピオンを奪った裏に、そうしたエンジニアリングの考え方があった。ライバルが、搭載は自由だったKERSを使ったハイレベルのエンジニアリングの調教に苦労している間に、コンベンショナルなマシンでポイントを稼いでおく。ブロウンの、その作戦が大当たりして、読み通り、ワールドチャンピオンを奪ったのだ。
ちなみに、ホンダF1チームの血を引くブロウンがタイトルを奪ったのをみて、”もう1年ホンダがやっていたら”という声もあったが、それでもタイトルを取れたかどうかは定かではない。なぜなら、ホンダ主導だったら、チャレンジ精神からしても開発途上にあったKERSを使うことになり、フェラーリやマクラーレンのように苦戦を強いられた可能性が高いからだ。
[STINGER]山口正己
Photos by
Jiri Krenek(ロス・ブロウン / 扉用素材)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team(マシン)
Jiri Krenek(ロス・ブロウン / 扉用素材)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team(マシン)