【パート5/6】 F1史上最大の大変革/シーズン開幕が待ち遠しい!!
ウィリアムズ・F1・チームのレース哲学
(4/6からつづく)
3月14日(金)〜16日(日)におこなわれる、2014年F1チャンピオンシップ開幕戦のオーストラリアGPスタートまであと7日。STINGERでは、開幕戦に備えて、今年の見所やおさえておきたいポイントを6回にわたって紹介していく。
第5回の今回は、今年の台風の目ともいえるウィリアムズ・F1・チームのレース哲学について紹介する。
◆ウィリアムズの思想
ウィリアムズが好調である。メルセデス・エンジンを積んでいること、そしてフェラーリからフィリッペ・マッサが移籍したこと、さらには、マルティーニのスポンサーを獲得したこともプラス方向に作用している。そして、そうして準備を整えたウィリアムズを推したい理由は、ウィリアムズのレーシング・チームとしてのレース哲学である。
各チームが、新しい規則に対応してそれぞれ思い思いのテクノロジーを注入したマシンを送り込んでくるが、特に今年のような大幅な変更が行なわれる場合、設計段階で重要なのは、ポテンシャルの”レベル設定”である。
目指すレベルが高くなれば、まずはトラブルが出るリスクが高くなり、それ以前に、ハイレベルになればなるほど、それを調教して使いこなす難易度は高くなる。こういうときは、無理せず、ある程度で納めておくことが、闘いを有利にする。
ここで、思い出すのは、ウィリアムズが初めてタイトルを取った1980年のことである。ロータスが開発してロータス79を完成させ、圧倒的な性能を誇った”ベンチュリーシステム”に対する、ウィリアムズ独特の考え方があった。
ボディ下面の空気の流れを利用して強大なダウンフォースを発生したメカニズムで1978年を牛耳り、すべてのチームがそのシステムを模倣したそのベンチュリーシステムを全チームが採用したのだが、2年後にタイトルを奪ったウィリアムズFW07のデザイナー、パトリック・ヘッドが、ベンチュリーシステムの威力を前提に、タイトル獲得の秘訣として、こんな名言を残している。
“ロータス78がAだったとしたら、他のチームはZを目指した。しかし、我々が目指したのはMかNだった”。
今年のウィリアムズには、その設計思想が息づいているに違いなのである。
ちなみに、マルティニは、これまで多くの場面で主要レースをスポンサードしているが、それは、裏を返せばモーターレーシングを知り尽くしていることの査証である。下手なチームには、スポンサーはしない。
[STINGER]山口正己
Photos by WILLIAMS F1 TEAM(マシンノーズ/扉用素材、マシン、パトリック・ヘッド)