ホンダF1長谷川総責任者一問一答–その8
需要なのは、チームとしての車体+パワーユニット。
F1復帰2年目を終えたホンダ。シーズンオフを休むことなく次への開発作業に明け暮れるホンダF1レーシングの長谷川祐介F1プロジェクト総責任者の胸の内。
(その7からつづく)
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その8 ◆ 2017年の目標設定は?
—-そうして進化したパワーユニットが完成する、と。マクラーレンも進化を期待するとして、2016年の目標は『Q3入り』でしたが、次の目標設定はできていますか?
長谷川:べき論でいうと表彰台を狙って、ということになりますが、それを声高に言いたいところですが、相手があることですから。それに、こういうところにいなくては、というのと、それが実現可能かどうかは別モノなので(笑)。
—-2016年の『Q3』というのは、まぁ、多くのファンにとってはもの足らなかったかもしれませんが、凄くいい設定だったと思います。トップ3で6台いて、次にウィリアムズとフォースインディア、トロロッソがいると、10位に入れたら上出来、ということでしたから。しかし、大きく規則が変わる今年、トップ3がどこにいるか、というのが問題になりますね。
長谷川:そうですね。なので、Q3は、いなければいけないレベルだし達成可能なレベルだと思います。それは、日本がワールドカップに出場します、というのと同じで、頑張ればできる。しかし、ワールドカップに優勝します、という目標を掲げるのは、今の段階で以下かなものか、というようなことですね。なにせ、相手がいる話ですから。
—-特に今年のように大きく規則が変わるタイミングでは、相手の力を読むことが非常に重要になります。
長谷川:なので、夢のようなことをいうのではなく、ライバルと同じレベルになったとしても、読みにくくなっているので、どういう目標を掲げるべきかな、と。ありたい姿を語るのは簡単なんです、チャンピオンですから(笑)。それを言えというならいくらでもいうんですけど、そういうことではないと思っています。
—-難しいですね。
長谷川:大切なのは、なにをいうかではなくて、どういう結果を残すか だと思っていますから、申し訳ないですけど、この場より、結果を出すことの方がもっと大事なことだと(笑)。
—-表彰台、どう表現したらいいでしょうね。7位に行ける、というのも簡単ではないけれど、慣れてくるとだんだんもの足らなくなってきますね、観ている方も。
長谷川:あとは、酷い雨のブラジルGPもそうでしたけど、いい争いをしていても、テレビに映らないんですよね。フェルナンドがスピンしてから、怒濤の追い上げで10位間上がった。こっちは、ちゃんと観てますから、スゴイ!!と思っていましたけど、ブラジル・ホンダの人からは、気がついたら10位でしたね、と(笑)。
—-2017年に向けて、マクラーレンは、ロン・デニスが辞めて、ヨースト・カピトが辞めて、ザック・ブロウンが新たに加わって、といろいろ動きがありますが。
長谷川:端的にいうと、ノーコメントですが、マクラーレンの体制なので、誰がいいとか悪いとかいうつもりはありませんが、安定してほしいというのはありますね。うまくやってほしいですね。
—-デニスが核になっていましたが、ザック・ブロウンがその代わりに?
長谷川:いや、それは明確に違うと思います。ブロウンはCEOではないですから。彼はマーケティング担当です。レーシングの運営はジョナサン・ニールの受け持ちです。その意味では、ジョナサンとはこの1年一緒にやってきましたから、オペレーションに関しては大きな不安はないです。ただ、ロンさんは、素晴しい人でしたから、マクラーレンの運営ウンヌンということではなくて、ロンさんがいないというのは寂しいですね。
—-ロン・デニスは、冷徹な人といわれていますが、実は、かなり浪花節の人といわれていますね。
長谷川:人間的な人ですね。
◆STINGERの観方
2017年に向けて、”3年目の正直”が試されるホンダだが、そのタイミングでマクラーレンの体制が大きく変わる。チームをここまで育て上げたロン・デニスが勢力争いの結果ポストを外れた。新体制に不安はないか、という質問に、長谷川総責任者は、「オペレーションに関しては大きな不安はない」と言い切った。これまで何度か、車体にも問題があるのではないかという投げかけに、”それをリカバーできるパワーユニットを”という表現に徹していることから、闘いは、車体とパワーユニットの総体としてのポテンシャルが大切であり、同士である車体に文句をつける前に、自分たちの領域を完璧にすることの重要性をコメントする姿勢は、まったく変わっていない。
[STINGER]山口正己
photo by HONDA
(最終回につづく)