「F111」解説
実車のロールアウトは3月3日から始まるバーレーンテストまで待たなければならないが、HRTはひと足早く新型マシンF111のレンダリング(CG画像)を発表した。随所に斬新なデザインがちりばめられているが、目を引くのはそのカラーリング。2010年のF110はグレーを基調とした地味なカラーリングだったが、F110はホワイトを基調に鮮やかなレッドを組み合わせる。
一気にモダンなルックスに変身したが、それもそのはずで、カラーリングを担当したのは自動車業界とハリウッドで活躍するカーデザイナーのダニエル・サイモン。著書『COSMIC MOTORS』の中で彼は、「はるか彼方の銀河で生産された乗り物」をコンセプトに、自動車や宇宙船を描き上げている。自動車メーカーから依頼を受け、未来的なコンセプトのクルマをデザインし、描くのも彼の仕事。ハリウッドも活動のフィールドで、最近では、映画『トロン:レガシー』に登場するライトサイクルのデザインを手がけた。
モダンなのはカラーリングだけではない。F111は速く走ってもおかしくなさそうなディテールを身にまとっている。例えばフロントセクション。V字形のモノコックから強い角度で傾斜するノーズはF110のイメージを踏襲するが、先端で吊り下げるフロントウィングは、トレンドを追ったモダンな形状に変わっている。昨年のメルセデス・ベンツMGP W01を彷彿とさせるが、目を引くカラーリングにだまされないよう目を凝らすと、山型に折れたノーズといい、サイドポッドのアンダーカットとポッドパネルやバージボードの関係といい、リヤウィング翼端板の形状といい、W01のソリューションと似ている。2分割のインダクションポッドまではコピーしていないが。
2011年的視点で観察すると、ボディ後端の絞り込みはやや甘く、このあたりに参戦2年目ならではの保守的なアプローチがのぞく。カラーリングは最先端で大いに結構だが、心配なのはシーズンに向けた準備。「シーズン中にアップデートを繰り返す」(コリン・コレス)との発言は心強いが、4度あるテストのうち3つキャンセルしての初走行では、準備不足は否めない。
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