「トヨタがF1撤退に至った理由」というある内部証言(2/4)
◆撤退の波紋
さて、トヨタのF1撤退だが、発表から1カ月が経過した今でも、気になることがいくつか残っている。むしろ、時間の経過とともに新たな疑問が出現し、それが大きくなっているともいえる。
トヨタは、経済的な側面からF1を撤退したことになっているが、11月4日の社長会見でも、そこが明確に語られることはなかった。「現在の経営環境や、中長期的な観点から苦渋の決断をせざるを得なかった」と章男社長は会見で語って(読み上げて)いるが、それが金額的にどの程度のものか、そして、F1撤退に費用がかかるかどうかについては、触れられないままだった。
しかし、跡を思い切り濁してF1の場を飛び去ったトヨタという鳥に対するF1
からのペナルティは、無視できない金額になると思われる。運営をスムーズに、かつ平等を保って展開するためのチーム間の協定であるコンコルド協定にトヨタ
はサインしていながら撤退の道を選んでいる。約束を反故にした罪は軽くないはずだ。
あるトヨタ関係者からの証言がある。題して『トヨタがF1撤退に至った理由』。そして、その理由は「まったく理解不能」とし、「お金か?」という書き出しで、撤退の理由がいかに理不尽かが語られている。
◆やめると325億円、3年間続けたら195億円!?
経済危機にあって撤退やむなし。この理屈は一見すると間違っていない。しかし、やめるのはただではないことにトヨタは気づいていないのだろうか。
12月3日、TMGの社員食堂。
「650人の退職費用は少なく見積もっても65ミリオンユーロ」、と”ある証言”は言っている。
そして、「その他、各種解除費用や廃却部品費をあわせれば、100万ミリオンユーロ程度の臨時出費が必要だったハズ」とも。100万ミリオンユーロとは、概
ね135億円だ。ここにコンコルド協定違反の制裁金が加わる。コンコルド協定違反のペナルティは、一説には150ミリオンユーロと言われている。つまり、
F1を撤退するためには、総額250ミリオンユーロ(約325億円)程度の臨時出費が必要なことが見えてくる。やめたからと言って、経済的に有利にはなら
ないのだ!!
証言は、以下のデータを伝えている。
「それどころか、今後のF1は、来年からコストダウンが促進され、経費が削減されるレギュレーションになって行く過程にあり、”年間150ミリオンユーロ程度で出来るハズ”だったのだが、現在TMGには、スポンサーと、テレ
ビ放映権などのFOM収入で年間100ミリオンユーロ程度の収入があると仮定すれば、参戦を続けた場合、足りないのは、50ミリオンユーロx3年間=150ミリオンユーロ(約195億円)となり、それを準備すればコンコルド協定終了の2012年まで参戦できたことになる。そして、4年後に円満に撤退するという道が選べたのだ」。
つまり、やめると325億円の出費だが、参戦を財政縮小で続ければ3年間の出費は195億円で済んだことになる。やめない方が経済的に有利だったのだ!
ある証言は、「しかも、このコストダウンのレギュレーションはトヨタが主になって牽引して作った規則だったはずだ。よって、トヨタの撤退はお金の問題とは到底考えられない」と続けている。