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ホンダF1復帰特別会見全録4/4



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1983年にデビューした第二期、ウィリアムズやマクラーレンに搭載されたホンダ・ターボが最強伝説を作った。
写真は、1987年にワールドチャンピオンを獲得したウィリアムズFW11B-HONDA。  photo by [STINGER]

『研究所としては、いつだってやりたい』

◆肝心なのは、”勝つために何をするか”
—-今回の参戦は、勝利を強く意識されていると思いますが、ウィットマーシュさんは、初年度から勝てるような具体的な話は出ませんでしたが、実際に技術的な方向として、どのように感じていますか?
新井:もちろん、参戦するということは、初年度から成績をちゃんと出せるように1年間これから、1年半くらいですが、全力を上げて開発をしていきます。レースに出るときに勝てないつもりで参戦することはないですね、ある意味。そのつもりでいますし、その覚悟で開発をスタートしてるわけですから、みなさんの期待に1日も早く応えられるように、全力を尽くしていきたいと思います。

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生産車に直結する技術をF1で磨き上げる。

—第二期に中心でやっていたエンジニアが、第三期の復帰に備えて、リハビリと称してF1GPの現場に来ていました。7月のイギリスGPの頃に様子を訪ねたら、”参っている”と。しばらくF1の現場から離れていたことによって、温度差が生産車になってしまったという話でした。
彼の説明では、”コンマ1秒、確実に速くなる素材を発見したとして、その素材が非常に硬くて、切削機の刃が10本折れてしまうとすると、生産車では、コストの関係から即刻不合格。しかし、F1の場合は、刃が100本折れても即採用となる。F1の現場から離れている間にその温度ではなくなってしまっていた”、という話でした。今回も、現場から離れていますが、その辺りの温度差やF1のクォリティ感を、社内では、どう受け止めているでしょうか?
新井:第三期から、次のデビューが2015年だとすると7年くらいのブランクになってしまうわけですね。技術は日進月歩だということは充分理解しているので、それをどれだけキャッチアップして最前線にいられるかが、我々研究所の役目だと思っています。その”肌感”みたいなことについては、F1の二期、三期、それからいま、開発のスタイルも随分変わっています。

ですから、過去のやり方が通じるか、といえば、通じるものもあれば、大切なものもありますが、全体に相当スタイルが変わっていて、モノを決定していくプロセスは相当高度なものになっているので、新しいやり方をやっていくということで、そこは、ケースbyケースだと思います。

ただ、一番大切なのは、”勝つために何をするか”ということを忘れないことだと思いますし、いまやっている仕事がどんな効果を産もうとしているのかを、エンジニア一人ずつがちゃんと理解をして、仕事をするということが、最後はいい成果につながるのではないかと思っています。

◆上から落ちてきてやるようでは、勝てない
—-2011年ころだったと思いますが、高効率エンジンの基礎研究を始められて、それがGREになっていると思いますが、それがF1への勉強の一環だと理解してよろしいでしょうか? それとも切りはなして考えた方がいいでしょうか?
新井:その開発をやっている頃は、F1の新しいレギュレーションがはっきりしていたわけでもないと思います。ただ、いまから見れば、やっている要素は、役に立っているんじゃないかな、と。レーシング・エンジンなので、どれだけ効率を最大限追求していいものを作るか、という要素は共通していると思います。だだ、ひとつひとつの要素のすべてがF1と共通かというとそうではなくて、考え方だけかな、と。そういうことを蓄積していることが、これからの飛躍につながると考えています。

※GRE:FIAが提唱していたスタンダードなレーシングエンジン。1.6リッター直噴ターボなど、F1と共通点が多いが、F1のV6に対して直列4気筒。

—-今回の参戦の経緯ですが、研究所内からの参戦したい、という気持ちが会社を動かしたのか、それとも、社長が、トップダウン的に、参戦しようよ、と言ったのでしょうか。
新井:ダウンでくることはないですね(笑)。我々研究所としては、いつだってやりたいわけで、F1をやりたいから、というスタッフがたくさんいますから、そういう気持ちを最後は理解していただいて押し切ったということだと思います。上から落ちてきてやっているようでは、たぶん勝てないですよね、レースは。ナニクソと思って、絶対に勝ってやるというのは、現場で、技術で闘っている研究所の中から出てこないと、F1の世界で勝利を目指していますなんて言えないと思います。ということで、こうしてくれ、と言ったわけではないですが、空気を感じていただいたのだと思います。

—-コントロール制御技術が成績をきめることになるかもしれませんが、レギュレーション的には、自由度が高いと思います。新井さんから見て、ここは突っ込める、他と違うものができる、と思ったところはどこでしょうか?
新井:もうちょっとお待ちいただけるとありがたいです(笑)。おっしゃるように、制御技術がキーであることは間違いと思います。いままでのKERSと違って、ざっと、モーターでアシストする部分は、私どものフィットのEVよりも大きなモーターになるわけで、想像していただくと、そのくらいの加速力はオマケで付いてくる、しかも時間が長い。

それをどこで使うんだ、
その時のエネルギーはどうするんだ、というところが大事だと思います。ということは、レース戦略も含めて、大きな話だと思います。まぁこれ以上いってしまうと、ネタばらしになってしまうので、話をさせていただくのは、もう少しあとになってにさせていただきたい、と(笑)。1年間、勉強させてください(笑)。

—-2016年から供給チームを増やすかもしれないとのことですが、メルセデスなどは、3チーム供給しないと採算が取れないというようなことを言っています。長く続けるためには、そうした施策が必要になってくると思いますが、そのためのロードマップの様なものはあるでしょうか?
佐藤:ロードマップというと難しいですが、2015年は1チーム、2016年からは、チームからオファーがあれば、複数チームを考えています。コストについては、例えば有償で供給する、などについては、これから考えていきたいと思います。

—-2018年から開発が凍結させるという話がありますが。
新井:それは決まっているわけではないと思いますし、F1は最高峰のレースなので、ある意味、技術競争の一番の舞台であるわけですね。そこで開発を凍結するということ、その範囲にもよりますし、いまでも凍結している部分もあるわけですが、それがレースの魅力を失うかどうかというところが先ではないかと思います。そこに開発要素がないのであれば、市販車にフィードバックするものがなくなってまたかけ離れてしまう、ということで、今のレギュレーションを見ているかぎり、そんなふうにはなると思えないですが、こればっかりは、こちらできめるわけでもないですが、私どもとしては、技術競争の中で、市販車にフィードバックできることが重要だと考えています。

—-レギュレーションが変わったので、ダウンサイジングしたので、復帰する、という風に聞こえます。でも、元々レーシング・エンジンは、与えられた燃料をいかに効率よく燃やすか、という意味では、レギュレーションが変わろうが変わるまいが、エコエンジンとまったく同じ方向を向いていると。F1は、それを証明する非常にいい舞台だと思います。F1の場合、パワーに特化した使い方をしているので燃費が悪いように勘違いされていると思いますので、ダウンサイジングなどのレギュレーション変更があって、市販車にフィードバックできるから復帰する、というのと同時に、世界一の技術の闘いの場で証明していくための挑戦である、と、これは質問ではなく、お願いなのですが、言ってほしいと思いますが、いかがでしょうか?
新井:まさしくおっしゃる通りだと思います。また、いままでより、一歩踏み込んだ(レギュレーションになった)ので、エネルギーという観点で、クルマの全体の効率を上げるのである、そこが、量産車の技術と方向性が、一致しているということで、より高い技術目標であるし、自動車会社としては、理解しています。

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—-これもお願いですが、本当は新井さんがおっしゃったように、来年から復帰していただけると、1954年のマン島宣言の檄文から60年だし、第一期のデビューから50年ですので、ちょうどいい区切りになります(笑)。檄文の中には、”日本産業の啓蒙にある”と書かれています。日本の国民が勇気づけられたと思うのですが、今回のチャレンジも、勝たないと意味がないかもしれませんが、そういうことをいろいろな機会で新井さんに、言っていただきたいと思います。
新井:この場で”はい”、と言えばよろしいでしょうか(笑)。頑張ります!!

まとめ:[STINGER]山口正己
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