アロンソの神ドライブ–長谷川F1プロジェクト総責任者会見
マクラーレン・ホンダは、フェルナンド・アロンソがスタートでダッシュを決め、タイヤ交換を行なった後も10番手をキープしていた。しかし、57周レースが終盤を迎えた51周目に、ずっと抑え続けていたエスティバン・オコン(フォースインディア)とニコ・フルケンベルグ(ルノー)に一気に抜かれて12位に順位を落とし、その次の周にピットでレースを終えた。
パワーユニットの非力さから、2台まとめて追いおとされたのかと思いきや、実は右リヤのサスペンションのトラブルだった。
「詳しいことはまだわかりませんが、右後ろの車高が下がっていましたから、何かが壊れたか外れたかだと思います」と長谷川祐介F1プロジェクト総責任者。
カナダGPのモントリオールの縁石でサスペンションが折れるトラブルが頻発したことはあった。オーストラリアGP会場のアルバートパーク公道コースも、路面が平滑とは言えない状況だが、そこに持ってきて、ダウンフォース増とタイヤ幅の増大で、マシンにかかるストレスが大きくなり、その結果としてストレスが集中した箇所が破損したことが考えられる。
ハースもサスペンションを壊している。とはいえ、全チームに同じトラブルが出たのでもなく、ストレスの増大は設計時点で計算できていなければならないはずで、そこはマクラーレンの反省点になる。
しかし、少なくとも、抜かれるまで、オコン+フォースインディアとフルケンベルグ+ルノーを巧みに抑え続けたフェルナンド・アロンソを、長谷川総責任者は、”神ドライブ”と讃えた。
「あえてオコンをDRSが使える1秒以内に入れて引っ張る形にして、後ろのフルケンベルグに抜かれないようなことを、燃費を気遣いながらやってのけた神ドライブでした」
フルケンベルグ+ルノーが前に出ると、抜かれる可能性が高くなる。そこをアロンソとエンジニアが読んで、だからアロンソの”神ドライブ”がモノを言った。
一方、ストフェル・ヴァンドーンは、誕生日の正式デビュー戦となるたレースを14番手ながら完走。長谷川F1プロジェクト総責任者は、「スタートから、実に安定して落ちついたレースをみせてくれました」と満点を与えた。
アロンソも、結果としてリタイアに終わったが、そこまでのポテンシャルは、テストで心配されたレベルよりベターな状況でレースを終えられた。
しかし、長谷川総責任者は、「パワーユニットとしては30点、クルマ全体としては50点の出来」と厳しい自己分析だった。
次の中国は、アルバートパークよりストレートも長く、パワーユニットにとって厳しさが増す。まだまだ改良型を投入できないはずのそこで、厳しい闘いが待っていることは明白だ。
予選を前に、「データとパワーだけですべてが決まるなら、予選をやる必要がないですね」と長谷川総責任者はコメントしたが、レースはさらに見えないパートが結果を左右する。
マクラーレン・ホンダの試練は暫く続くはずだが、神ドライブのアロンソと、抜群の安定性を誇るヴァンドーンの組み合わせで、序盤をしのぐ闘いに期待しておきたい。
[STINGER]山口正己
Photos by STINGER/McLaren Honda/LAT Photographic