F1GPに異変?! メルセデスのいない表彰台!! / ホットライン 2015 round13
シンガポールは、心配された煙害もなく、無事に週末を消化した。しかし、最強メルセデス軍団が、煙に巻かれたような、予測できない結末になった。フェラーリとレッドブルがメルセデスの前に立ちはだかって、レースを完全にリード。表彰台はフェラーリとレッドブルに占められる”異変”が起きた。
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、いつも以上に奮気味に熱戦を振り返り、今後の展開をズバリ診断する。
◆話題テンコ盛りのグランプリ!
羽端恭一(以下、羽端):ウワー、いろいろあって、どこから話したらいいか(笑)。
STINGER(以下、STG):本当に(笑)。
羽端:まず、勝ったのはセブ(フェッテル)で。
STG:週末は完全に彼のペースでした。
羽端:ともかく、金曜日から速かったですよね。
STG:何時ものハミルトンが乗り移ったみたいでしたね!!
羽端:そうそう! ・・・・で、セブもだけど、キミ(ライコネン)も速かった。つまり、フェラーリのためのウイークエンド!
STG:ですね。
羽端:何でですかね、この速さは?(笑)
STG:なんでしょう? レッドブルもですけど、メルセデスが遅くなったんじゃなくて、フェラーリとレッドブルが速かった。
羽端:うん、そう思う。
STG:理由は、定かじゃないですけど。もっとも、我々が定かにできるなら、メルセデスはとっくに対応できたはずだし。
羽端:・・・・ですよね(笑)。セブは決勝でも、見事にレースをコントロールしてました。途中、2位との間合いを計っていたり。
STG:ただし、メルセデスは、タイヤの空気圧で苦労したかもしれない。
羽端:あー、それですね。
STG:前回のイタリアで、レース終盤に、ペナルティ騒ぎがあったじゃないですか。
羽端:はいはい、グリッドで空気圧が低かったってやつ。
STG:もしかすると、メルセデスは、空気圧低めじゃないと、上手く機能しないクルマかも。
羽端:ウーン!
STG:いや、そんな単純なことじゃないかもしれないけれど、ひとつ言えるのは、空気圧。それから、マリーナ・ベイ・ストリート・サーキットのレイアウトもあるかも。
羽端:コーナーらしいコーナーがなくて、という?
STG:それよりも、フラットで登り区間がなくて、全体のスピードが比較的低いので、パワーユニットの能力差が出にくい。
羽端:なるほど。だから、メルセデスが頭ひとつ抜きんでているとしても、シンガポールでは、そのパワーユニットの優位性を活かせなかった。
STG:ですね。
羽端:結局、フェラーリ/セブが完璧なレース。そして、三番手にいたキミをそれとなくサポートするようなレースまでして、二人で表彰台に上がった。
STG:レッドブルもよく走ってました。むしろ、ルノーのパワーがダメと言われていたことを考えると、フェラーリの躍進もだけれど、レッドブルのスピードも称賛されてしかるべきかも。
羽端:ええ。フェラーリの速さはある程度わかっていたんで、もっと驚いたのがレッドブルでした。
STG:ですね。
羽端:こんな、空力があんまり(速さに)作用しないようなコースで、いきなり、フェラーリの対抗馬に躍り出た。フランクフルト・モーターショーで、ルノーのカルロス・ゴーンが「もう、サプライヤーはやらん」と言ったんですよね。ただ、F1をやらないとは言ってなくて。何でやらないことにするかというと、割りが合わないと。
STG:ゴーンさんには、リストラだけやってもらいましょう。モーター・レーシングに対する愛をまったく感じないので(笑)。ところで、割りって?
羽端:つまり、見返りが少ない。レッドブルは勝っているときに、一度もエンジンがいいからとは言わなかった。然るに、勝てなくなると、みんなエンジン、つまりルノーのせいにした(笑)。
STG:確かに。でも、実際にメルセデスに比べて衰えたことも確かだし、そもそもあちらの方々は、往々にして(笑)。
羽端:そういうもんですかね、レーシング・チームって。
STG:そんなもんでしょうね(笑)。
羽端:80年代のマクラーレン・ホンダみたいに、異様にうまく行ってた(ように見えた)のが、むしろ例外?
STG:いや、うまく行っていたのはターボ時代ですね。ホンダ第二期の終盤、マクラーレンとホンダのコンビネーションは、1992年までですけど、その最後の年には、いろいろ、”陰口”があったようです。
羽端:おお?
STG:マクラーレンは、V12が重くてどうしようもなかった、と言っているし、ホンダは、シャシーの開発が止まっちゃっていた、と(笑)。
羽端:なるほどね。
STG:1992年当時、ターボ禁止になったエンジンが自然吸気になりましたね。
羽端:うんうん。
STG:軽さとパワーのバランスから、V10がベストであるという結論が、ホンダの中にもあったんだけれど、宗一郎さんが多気筒が好きだったので、まぁ、老い先長くない宗一郎さんのために、V12で、というムードがホンダの中にあって、だから重くて長いV12を採用して、ルノーV10にやられちゃった、という流れでしたから。マクラーレンとしては、そんなことより優れたエンジンがほしかったわけで。
羽端:ははあ。それで今年のルノーとレッドブルに話を戻すと、前からレッドブルはルノー・エンジンが遅いと言い続けていた。そしてついにルノー側が、そんなことを言ってるやつには、もうサプライしないと。
STG:一昨年までの破竹の勢いが”普通”になっちゃったので、レッドブルは、そうも言いたくなる?
羽端:そんなやり合いがあった直後のグランプリで、ルノー&レッドブルが速いから、シロートとしては、もうワケわかんない(笑)。
STG:本当に。しかし、数年前であればフェッテルが、いまであればハミルトンがいつも言っているように、楽なレースなんてない、と。
羽端:フムフム。
STG:勝っていると、いつひっくり返されるかわからない、ということで、戦々恐々なわけで。
羽端:今回、予選にしても決勝にしても、フェラーリとレッドブルが「二強」でしたよね。
STG:今回は、フェラーリとレッドブルがいい週末を送れた。それは多分にコース・レイアウトによるということを、セブもレッドブル陣営も分かっていたと思います。
◆「一強」だったはずのメルセデスが・・・・!
羽端:それにしても驚きは、メルセデスが表彰台にいなかったこと。予選でも「新二強」に負けてたし。
STG:確かに。見慣れた光景ではなかったですからね。
羽端:これまた、どうしちゃったんだろう、と?(笑)
STG:決勝では、立て直して、結局はメルセデスの1-2じゃないか、と思ってましたから(笑)。
羽端:そうそう。これもやっぱり、タイヤ内圧の関連で?
STG:いや、わからないです。確かにそれもあるし、パワーユニットの差がでにくいこともあるでしょうし。
羽端:フーム。
STG:なので、今回が特別かも。いや、鈴鹿でも同じ傾向があって、接戦になってほしい気はしますけど。でも、鈴鹿は、モンツァやスパ-フランコルシャンのように、パワーユニットの優劣が分秒に大きく影響するコースですから。
羽端:そうですよね。すると、今後のメルセデスは?
STG:タイヤの空気圧の影響がどれほどあるのかは、わかりませんけど、基本的には鈴鹿ではメルセデスが元の位置に戻りそうな気がします。
羽端:なるほど。まあ、様子を見ましょう!(笑)
STG:ですね。決めちゃうのは面白くないし(笑)。
羽端:あ、様子を見ているうちに、セブがどんどんポイントを重ねて、チャンピオンにとか?(笑)
STG:現在、トップのハミルトンが251ポイントで、セブが203。つまり、優勝が25ポイントなので、2回で逆転する点差ですから。
羽端:そうか!
STG:まぁ、そうそう簡単にはいかないと思いますけど。
◆期待外れだったマクラーレン・ホンダ
羽端:さて、もう一つの話題は、ここ(シンガポール)ならモンツァのようなことはないと思われた、さらには期待を持たせたマクラーレン・ホンダ。
STG:パワーユニットにはストレスが要求されないコースなので、フェルナンド・アロンソも期待していたし。でも・・・・。
羽端:リタイアでしたね、二人とも。
STG:アロンソは金曜日のフリー走行2で8番手、土曜日の予選前のフリー走行3で7番手を記録して、さすがアロンソ、もしかしてQ3進出か、と思ったんですけどね。
羽端:リタイアの理由がミッションで”よかった”ですね。車体でもパワーユニットでもない、という・・・・。
STG:そういう見方になりますかね。何処かが壊れたら、”ウチじゃない”と安心するのは、ちょっと違う気がしますけど。いずれにしても、マクラーレン・ホンダに問題があったわけで、それがどこかという犯人探しは、意味がない低次元の話のような(笑)。
羽端:マクラーレンも、パワーユニットの信頼性は高かったと、しっかりコメントを出したりしていて。
STG:“周囲”の騒音がウルサイから(笑)。
羽端:どっちもオトナだなあと思いました(笑)。ただ私は、そんなに期待はしてなかったけど、でも、ちょっとガッカリしました。とくに予選ですね。
STG:ですね。
羽端:モンツァとは違って、こういうコースはパワーユニットの特性に合っているというなら、予選で、もっと速いところを見せてほしかった。もちろん、アタックしようとしたらイエローフラッグが出たりで、運にも恵まれていなかったとは思いますけど。
STG:それも含めて、結果ですから、なんとも。
羽端:同じQ2で敗退するにしても、もっと上位でね。Q3組に張りついて、惜しくも最後の10台には残れずくらいのことを・・・・。
STG:しかし、そうそうすべてが上手くいくなら、とっくに上手くいってるわけで。やはり、まだまだ勉強中、ってことでしょうね。新生マクラーレン・ホンダは。
羽端:そして、シンガポールと鈴鹿では、どっちが今年のマクラーレン・ホンダに「相性」がいいかといったら、シンガポールでしょ。鈴鹿はむしろ、スパとコースの特性が近いと思うし。だから・・・・。
STG:正直、鈴鹿では、いいところを見せられないと思います。ただし、フロントローがいいところかというと、現状では、たとえば予選12番手くらいでも、それが鈴鹿だったら上出来と思います。そこまでしかできない、という意味ではなくて、相手はF1ですから、そこまでいければたいしたもんだ、ということで。
羽端:ええ。鈴鹿は、マクラーレン・ホンダに関してはノンビリ(笑)見ます。来年に向けてのデータをしっかり採ってくれということで。
STG:ですね。マクラーレン・ホンダの頑張りもですけど、他にも見所はたくさんありますから。
羽端:期待としてはレッドブルですね。鈴鹿での、跳ね馬組との白熱の首位争いを見たいです。まあ最後に勝つのは、運転手でフェラーリかなと思いますけど。
STG:やはり、分かりやすさでフェラーリが予選で前に来てほしいですね。フロントローが、ハミルトンとフェッテルのシルバーと赤、なんてのが最高かな。
【西湘-西八王子】
Photos by
Ferrari S.p.A / FERRARI MEDIA(トップ画像、フェッテルとライコネン)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team / DAIMLER(ハミルトンのマシン、メルセデスの表彰台)
Infiniti Red Bull Racing / Getty Images/Red Bull Content Pool(レッドブルのノーズ、鈴鹿)
McLaren Honda/LAT Photographic(アロンソのマシン、アロンソ)