『F1vsFE』、激化?!
「フォーミュラEは特別」と熱弁のトッドFIA会長。
フォーミュラEの3シーズン目が開幕した。それを報ずる若干クセのあるニュースがFormula E JAPAN 広報事務局から届いた。
9日に香港で開幕したFIAフォーミュラE選手権の新シーズンは、電動フォーミュラカーレースの最高峰として、モータースポーツ界に12年ぶりに復帰したパナソニック・ジャガーレーシングチームが新規加入し、またアウディ、BMW、メルセデスといったドイツ大手メーカーが、近い将来のワークス参戦、もしくは既存チームとのパートナーシップを開幕直前に発表するなど、その注目度はさらに増している。
我田引水傾向の情報ではあるものの、間違った情報でもないが、気になるのは、その後の表現。
F1日本グランプリの決勝が鈴鹿サーキットで行われていたその時間、選手権を主管するFIA(国際自動連盟)のジャン・トッド会長は、運営するフォーミュラEのアレハンドロ・アガグ代表と共に、香港島セントラル地区に特設されたコース内記者会見場で、報道陣数十人の取材に応じた、と伝えた。
F1とFEは、バーニー・エクレストン時代から、エンクストンvsジャン・トッドの対抗関係で進んでおり、あえて”鈴鹿で日本GPが行なわれたその時”にF1A会長がF1ではなくFEの会場にいたことで、時代がFEに流れていることを協調する表現になっていた。
古くは、エクレストンとジャン・マリー・バレストルの”乱闘”の歴史があった。英国vsフランスの覇権争いともいえる抗争を思い出す。電気の時代になるかどうかの前に、こうしたニュースに触れるときは、そうした裏舞台の駆け引きが存在することを頭の隅に入れて置いた方がいいかもしれない。
トッド会長は、その会場で、以下のようにコメントしたという。
「FIAとしては、フォーミュラEの大会を通じて将来像が見えるような状況であってほしい。2年後ではなく、20年後のレーシングカーの姿が浮かぶようにしていきたい。いわばモーターレースの研究所だ」。
さらにトッド会長は、「自動車業界にとって全く新しいテクノロジー。他のどのカテゴリーとも比較できない特別な大会」とフォーミュラEの存在意義を説明したうえで、「都市にはうってつけだと思う。なぜなら街中では長距離移動の必要はないから、家や仕事場、買い物での外出先など色々な場所で充電が可能。だからこそ、このエレクトリックテクノロジーを都市で奨励したい」と、都市型モビリティの今後の方向性を示した。
一方、鈴鹿の日本GPのパドックに、フォーミュラEが横浜での開催に向かって前進したという噂が、F1の中枢の関係者の間で広まっていた。確かに、香港の開幕戦の前に、FEH(フォーミュラEホールディングス)のアンドレ・アガク代表が横浜市長と面談して、横浜開催で盛り上がったという信頼できる筋からの情報もある。
すでにバーニー・エクレストンは実権をリバティーズに譲っているが、そことは別の流れにしろ、FE開催決定は二人が盛り上がっただけでことが進むほど簡単でもなさそうだ。ともあれ、F1とFEの戦いは、ますます激化しそうではある。
[STINGER]山口正己
photo by Formula E JAPAN
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