FIA、ビアンキの事故の調査結果を発表
調査の結果、マシンをコントロールできない状況を避けられるほど十分減速していなかったことが判明。
FIA(国際自動車連盟)は3日(水)、カタール-ドーハで国際モータースポーツ評議会の会議をおこない、10月3日(日)の日本GPで起きたジュール・ビアンキ(マルーシア・F1・チーム)の事故を調査した、FIA事故調査委員会の調査結果を発表した。
事故調査委員会の役目は、鈴鹿のターン7で起きた事故をより深く理解するために事故の内容をすべて確認し、サーキットの安全性を高めるための新しい処置を提案することで、FIAは事故調査委員会による396ページのレポートの一部を公開した。
事故調査委員会のメンバーは次のとおり。
◆議長
ピーター・ライト(FIA安全委員会会長)
◆メンバー
ロス・ブロウン(メルセデスAMG・ペトロナス・フォーミュラ・ワン・チーム元代表)
ステファノ・ドメニカリ(スクーデリア・フェラーリ元代表)
ゲルト・エンサー(FIAチーフ・スチュワード代表)
エマーソン・フィッティパルディ(FIAドライバー委員会会長 / F1スチュワード)
エドゥアルド・デ・フレイタス(WECレース・ディレクター)
ロジャー・ピアート(FIAサーキット委員会会長、ASNカナダ代表、F1スチュワード)
アントニオ・リゴッジィ(弁護士、チームにより選出されたFIA国際控訴裁判所判事)
ジェラード・サイヤン(FIA学術協会会長、FIA医療委員会代表)
アレクサンダー・ブルツ(GPDA※代表、ドライバー代表)
※ドライバー間の結びつきを強くし、ドライバーの安全を守る有志のF1ドライバーの団体。
■事故の経緯
ビアンキがクラッシュする1周前の40周目、ザウバー・F1・チームのエイドリアン・スーティルは、ターン7でビアンキがマシンのコントロ-ルを失ったのと同じポイントでコントロ-ルを失ってクラッシュし、そのマシンを改修するためにクレーン車が出動した。
41周目には、スーティルのクラッシュを受けて、そのポイントがあるターン7〜8では、いつでも停止できるぐらいに減速しなければいけないことを意味するダブルイエローが振られていたが、そこで十分減速できていなかったビアンキのマシンは時速126kmで6,500kgのクレーン車へ衝突してしまった。ビアンキは現在も母国のフランスで治療を続けている。
■事故調査委員会が出した結論
調査の結果、ビアンキはマシンをコントロールできない状況を避けられるほど十分減速していなかったことがわかり、事故調査委員会はレポートで、ダブルイエローの指示を守っていれば、ドライバーもオフィシャルも危険な状況を避けられたはずだと説明した。
事故後に提案されたコクピットを覆うカバーを採用したり、クレーンに”スカート”を履かせるといったアイデアに関しては、700kgあるマシンが時速126kmで6,500kgのクレーン車に突っ込んでしまえば、どちらのアプローチも実用的ではないと言う考えを明らかにした。
また、そもそもF1のマシンの衝撃吸収構造がこのようなアクシデントでその衝撃を吸収するのに十分な作りになっておらず、このような状況でマシンが壊れないようにするという考えそのものが根本的に間違いで、それよりも、マシンがクレーン車にぶつかったり、マーシャルがその周辺で作業をする状況自体を変えることが得策だと述べている。
■事故調査委員会による今後の対策と提案
事故調査委員会は今回のアクシデントを受け、ダブルイエローの徹底、ナイトレースを除いたレースでは、日没の4時間以上前にレースを開始し、開催地で雨が多いタイミングを避けて開催することなどを提案した。
2015年からはこのアクシデントを受けて考案された、バーチャル・セーフティ・カー(VSC)が導入される。このシステムを導入すれば、セーフティ・カーが出動するほどではないものの、危険な状況であると判断された場合、サーキットの特定の区間でマシンの速度を制限することができる。
Photo by Marussia F1 Team