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「FW33」 解説とスペック

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FW33

株式を公開して投資家から広く資金を調達する決断をしたのは、資金難ゆえだろう。2月1日のバルセロナ・テストに現れたのは新型マシンのFW33ではあったが、カラースキームは暫定仕様。ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)のスポンサー・ロゴは目新しいが、RBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)が抜けた穴を埋めるほどではなさそうだ。現時点では無地のエリアが目立つが、開幕戦のグリッドに並んだFW33は、新たなスポンサー・カラーをまとっているだろうか。

資金調達に困っているからマシン設計もそれなり、ではないところが名門チームの意地だろうか。ルーベンス・バリチェロはウィリアムズ・コスワースFW33をして「アグレッシブ」と表現したが、それが空威張りでも何でもなく、実態を正確に表現していることは、リヤ・セクションを見ればわかる。「ギヤボックスがない」のだ。

いや、「ない」ように見えるほど、リヤエンドの空間ボリュームは大きく空いている。ディフューザーの上面やビームウィングに向けて、いかにも大量の空気が流れ込みそうな形態だ。これまで、リヤエンドの空間容積を増大させる最もクレバーな手法は、レッドブルが先鞭を付けたプルロッド式サスペンションだと信じ込まれていた。マルチ・ディフューザーやFダクトなど、パワフルな空力デバイスを失った2011年は、リヤエンドの空間容積を大きくして気流の流れを改善するなど、地道な設計が空力効率の向上につながる。だから、昨シーズンよりもいっそう、プルロッド式サスペンションに流れるチームが出てくるだろうというのが、大方の予想だった。

実際にそうなったのだが、ウィリアムズのソリューションは予想をはるかに超えていた。プルロッド式にしただけでは足りず、サスペンションをマウントするギヤボックス・ケーシングを小型化し、空間容積を大きくとったのだ。その結果、アッパーウィッシュボーンの後ろ側アームとトーコントロールロッドはギヤボックスに固定することができず、リヤウィングを支えるピラーにマウントする。

部分的にアグレッシブだからといって、速いとは限らない。だが、予想を超えたソリューションを前触れもなく持ち込む姿勢が、いかにもF1の老舗チーム。チャレンジャーであることは間違いない。

【STINGER / Text by Kota Sera(世良耕太)】

■シャシー
型式: FW33
シャシー構造: カーボンファイバー&ハニカム・コンポジット構造
フロント・サスペンション: プッシュロッド式ダブル・ウィッシュボーン(カーボンファイバー)&トーリンク/スプリング&アンチ・ロールバー
リヤ・サスペンション: プッシュロッド式ダブル・ウィッシュボーン/スプリング&アンチ・ロールバー
トランスミッション: ウィリアムズ製シームレス・シーケンシャル・セミオートマチック・シフト+リバース
クラッチ: マルチプレート(カーボン)
ダンパー: ウィリアムズ製
ホイール: RAYS製マグネシウム・ホイール
タイヤ: ピレリ P Zero
ブレーキ・システム: キャリパー/ブレーキディスク&パッド(カーボン)
ステアリング: ウィリアムズ製
燃料システム: ケブラー強化ゴム製タンク
電子システム: FIA標準
冷却システム: アルミオイル&冷却水&ギヤボックス・ラジエーター
コックピット: 6点式シートベルト(75mmショルダー・ストラップ&HANSシステム)/ 各ドライバー専用カーボンファイバー・シート(アルカンターラ加工)

■エンジン

型式: コスワースCA2010
タイプ: 90°V型8気筒
構造: アルミニウム製シリンダー・ブロック内蔵

■サイズ
全幅: 1800mm
重量: 640kg(ドライバー、カメラ、バラスト含む)

大きい写真はこちら(WEB専用ページです)。
http://www.f1-stinger.com/f1-data/2011/team/williams/photo_gallery/

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