「今日の見所」・・・中国GPでチーム内のポジションが決まる!?
相変わらずレッドブルが駿足を見せ、メルセデスがやや力をつけた。スピードだけでいけば、レッドブルが頭ひとつリードし、マクラーレンとフェラーリが”ガチンコ”、やや後ろにメルセデスがつけている勢力図が中国GPの予選の段階で改めて明確になった。
それより、気になるのはそれぞれのチームのドライバーの”関係”だ。マシンポテンシャルの違いから、チームが違えば能力差を比較するのは難しい。たとえば、F.アロンソとL.ハミルトンのどちらが優れているのか、という比較は、要素が違うので正確な判断は簡単ではない。しかし、同じチームなら、その判断をつけられる。少なくとも、”つけられると思える”。
4戦目の中国GPでは、それぞれのチームの二人のドライバーの力量が少しずつ表面化し始めた。子細なデータの追求は個々に楽しんでいただくとして、フリー走行1回目から予選にイタルまでのタイムの出し方の流れから、以下のような”予測”ができた。
◆フェラーリ・・・アロンソ>F.マッサ
◆レッドブル・・・S.フェッテル>M.ウェバー
◆マクラーレン・・・L.ハミルトン=J.バトン
◆メルセデス・・・N.ロズベルグ>M.シューマッハ
<フェラーリの二人>
オーストラリアGPのレース後、F.アロンソのタイヤを見てブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者は、F.アロンソの運転のスムーズさを再認識したという。スタート直後にスピンして順位を大きく落とし、そこから追い上げたことでタイヤを酷使したはずにも関わらず、「非常にきれいな表面だった」からだ。
一方、マッサは、中国GPを迎えた時点で、結果としてポイント・リーダーにいるが、上手さではF.アロンソが上に見える。ハンガリーGPの後遺症はまったくない、とF.マッサは言っている。もう少し様子を見たいところだ。
<レッドブルの二人>
レッドブルの二人は、、M.ウェバーも食い下がっているが、スピードでいえば文句なくS.フェッテル。
<メルセデスの二人>
メルセデスも、若いN.ロズベルグにM.シューマッハが追いつけない状況が続いている。M.シューマッハにはもう少し時間が必要なムードだ。
<マクラーレンの二人>
そして問題は、マクラーレンである。当初、圧倒的にL.ハミルトンが上と見られていた。チームとの長い関係はもちろん、ドライバーとしての技量も、L.ハミルトンに軍配が上ると見られていた。多分事実もその通りだ。”J.バトンの選択は失敗”という意見もあった。それに対してJ.バトン本人は、「それを分かった上でのチャレンジ」と言っていた。つまり、技量じたい、認めていた、ということだ。
しかし、フタを開けたら、思い切ったタイヤ早期交換の一か八かの作戦が当たった結果とはいえ、J.バトンはオーストラリアで勝ってしまった。L.ハミルトンの気分はいかばかりか。案外L.ハミルトンは追い込まれたときに弱さを見せる。これはM.シューマッハの全盛期でも同じだった。
ともあれ、各チームそれぞれに、ドライバーに対する”気分”が、4戦を終了して”ある方向”に向かい始めた。水は低い方に流れるが、人は調子のいい方に傾くのである。
さて、トップ4の”メインドライバー”がどちらになるのか。チームはあくまで「平等」とコメントするはずだが、チーム内の人心は、自然の摂理にしたがって形成される。その最後の流れを変えるカギを、中国GPが握っている。
そして、人心を集められなかったドライバーは、ヨーロッラウンドを迎えるに当たって、すでに2011年の自分のポジションを考えねばならなくなる。「レースを楽しめるのは中国まで」と言う声が聞こえる。チームの中でのポジションを決める、中国GPは、その意味で重要な1戦なのだ。
[STINGER] / 山口正己