小林可夢偉会見【アブダビGP(日)】 「ブレーキトラブルで止むなし」
レース後、チームの記念撮影に納まる可夢偉。ポテンシャルはエースのはずだが、ウィル・スティーブンスの方が上に書かれたボードに注目。
一時は、チーム離散の危機にあったケータハムがなんとか参戦にこぎ着け、可夢偉は、最終戦に参加した。チームの状況からして、上出来のトラブルフリーの週末で迎えたレースはしかし、厳しい現実が待っていた。絶妙のスタートを決めて、スーティル+ザウバーを交わしたのも束の間、リヤブレーキの加熱に端を発するトラブルで、最後のレースで完走を果たせなかった。
グリッドで、不思議な感覚になったこと、そして今後について語った。
◆ブレーキを踏むとハンドルが勝手な方向を向いた
・・・・レースは、思い残すことなくできましたか。
小林可夢偉(以下、可夢偉):バッチリです(笑)。
・・・・最後は?
可夢偉:左のブレーキにタイヤかすが入って、熱をもって。ブレーキを踏んだら、ステアリングが勝手に変な方を向いてしまって。挙げ句の果てにバイブレーションも出てきて、これでは危険すぎるから、と。
・・・・それ以前も、タイヤをいたわって、長めに走るようにしていたようですが。戦略的には?
可夢偉:戦略的には問題はなかったですが、単純に早い段階から、ブレーキトラブルがあったので。3周目くらいからですね。後ろが熱い(温度が上昇するので)、ブレーキバランスを前に持っていって。それでフロントがロックしだして、たいへんでした。
・・・・ブレーキバランスだけでは調整しきれなかった。
可夢偉:そう。ひどいというか、明らかにロックするのでタイヤが持たないので、今度は(バランスを)後ろに持っていくと今度は温度が上るし。で、勝手に右にいくし。
・・・・最後にタイヤかすが入ってからですか?
可夢偉:いや、ずっと。最初から温度が上がっていて、なんだか知らんけど。
・・・・最初のスティントのスーパーソフトは、比較的長い周回を走りましたが。
可夢偉:ブレーキのその問題が大きくて、自分なりには試行錯誤しながら乗ってました。もうちょっと、ブレーキがちゃんとしてたら、全体的にタイヤが持ったと思うんですけど、どうしようもなかった。
・・・・ザウバーに追いつけた。
可夢偉:そんなに離れなかったと思います。状況なりには精一杯やったと思います。チームも、バタバタの状態の中ではここまでトラブルがなかったのは、チームのみんなが頑張ったからと思います。
・・・・リタイアは、無線で言われて?
可夢偉:そうではなくて、ブレーキをふむとステアリングがひどく持っていかれるので、さすがにこれはヤバイと思って。
・・・・バイブレーションは、タイヤからではなく?
可夢偉:ブレーキです。ブレーキを踏むと、ぐーっと持っていかれて、コーナーに入ると、バッバラバラっと。これはヤバイと。
※マネージャー:可夢偉がチームに伝えて、チームが、ボックス(ピット)に呼んで、可夢偉は、チェックするのをコクピットで待っていたんですが、チェックしたら、結局、これは無理、という判断でした。
・・・・それ以前のタイヤ交換は問題なしで。
可夢偉:ぜんぜん。
・・・・スーティル+ザウバーを抜いたのは?
可夢偉:1周目です。2つめのバックストレートを出たシケインのブレーキングというか、ぐにゃぐにゃしているところで。そんなに楽しいことでもなかった(笑)。
・・・・最初にスーパーソフトを履いたのは?
可夢偉:ちょっとでも、闘っているところを見せたいな、と、それだけでした。スタートもよかったし、それだけしか狙っていなかった。中身はグチャグチャだけど、外だけよく見せようと、そんな感じです(笑)。
・・・・スーパーソフトで15周走れたというのは。
可夢偉:ブレーキがあの状態だったので、よかったと思います。ブレーキがちゃんとしていれば、もっと行けたと思う。
◆状況的にみて上出来だけど、4年分疲れた(笑)
・・・・かなりチャレンジングな戦略だと思いますが。
可夢偉:でも、ここの場合は、落とすものがなにもないから。ただもう、初めからあのブレーキの状態だから、かなり自分のパフォーマンスを損してレースをしてて、もし、そこまでいけているのだったら、僕としては上出来と思います。
・・・・シーズンを終わって、どういう感じですか?
可夢偉:とりあえず、ビールを呑みたいな、と。
・・・・ハンガリーのときに、1年分疲れたと言っていましたが。
可夢偉:4年分ですね(
笑)。
笑)。
・・・・とりあえずの感想はくたびれた。
可夢偉:くたびれたというか、まぁ、なんやろうね、いろいろあったけど、最終戦に出られてよかったし、気持ちとしては、一応F1も一年締めくくって、今年出るレースもなくなって、さてこれから来年に向けてどうしようか、というところで、できる限り、自分の納得がいく方向に行くしかないと思うし、僕たちはこれから、来年の就職活動に入るという、いや、ずっと入っているんですけど(笑)。
・・・・休みなし。戻ったらすぐに。
可夢偉:ないでしょう。
◆二十歳に戻れるなら戻りたい
・・・・グリッドではどんな心境でしたか?
可夢偉:いやぁ、なんかなかなか、もしかしたら、F1の場でマスクを被るのが最後かな、とか思って、人間て面白いな、と。初めて、もし自分が二十歳に戻れるなら戻りたいな、と。
・・・・戻れたら?
可夢偉:二十歳に戻れたら、もうちょっとチャンスがあるかな、と(笑)。
・・・・もうちょっと、このキャリアを違うやり方で?
可夢偉:そうそう。できたかなぁ、と。
・・・・グリッドでそんな気持ちになったのは初めて。
可夢偉:まぁ、初めてですね。もしかしたら、ホンマにこれ最後になるかもしれない、っていうことをは、なかなか。
・・・・一昨年はそんなふうには思わなかった?
可夢偉:一昨年は思わなかったです。
・・・・まだ、チャンスがある、と。
可夢偉:ええ。
・・・・来年、いろんな可能性をトライすると思いますが、ケータハムが、新たなオーナーになって、乗ってくれといわれたとしたら。
可夢偉:もちろん、喜んで。まぁ、ただ、ちょっと今のF1の状況を見ると、なかなか甘くないですね。いろいろできるだけやってみて、自分がもし、納得いかなかったら、最悪、レースをしなくてもいいかな、というくらいの感覚で。納得しなかったらね。
・・・・一昨日、F1にこだわる理由は、F1でやり残していることがある、ということですか?
可夢偉:まぁ、ですね。一回でもトップチームで走ってみたかった。優勝争いとかではなくて、トップチームで走ってみて、ホンマにどこまでいけるんだ、というのを自分で見たかったし、そこに行きたかったですよね。結局中団チームでもがいていたのが限界やったから。
・・・・マクラーレンのリザーブとか、テストドライバーとか。
可夢偉:レースに出れば。トップ2のチャンピオンシップを闘えるクルマに乗っていれば、もしかしたらもっと面白いことができたかもしれない。
・・・・今日は最後までレースをしたかった?
可夢偉:したかったですね、気分は。終わりとは思っていないけど、さすがにちょっと。クルマがクルマで危なかったので。しょうがないですね。まぁ、自分自身、やり切ったというか、乗れたのでスッキリするし、乗れなかったらモヤモヤして自分の一生を終えたのかな、と思います。
・・・・お疲れさまでした。
可夢偉:お疲れさまです。一年間ありがとうございました。
(STINGER/Fukaya:まとめ山口正己)