HAMMY’S EYE 2011 “ハミー”だけが語れるフォーミュラ・ワン 3/5
今年も、話題山盛りの新シーズンが始まる。スペクタクルな戦いをより楽しむための[STINGER]特別企画。ブリヂストン・タイヤとともに14年間F1を
直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた2011年の見どころ!”。ピレリ参戦で、今年のレースは、どう変わるのか!!
“突き抜けた”フェッテルの今年は?
◆ヘレスでは、速くなくてもいい!?
[STG]テストのタイムを見ていると、安定したタイムを並べているルノーが案外いいのではないか、という意見も出ています。そして、タイヤの状況をにらみつつ、経験
のあるチームが有利かとのお話でしたが、そうなると、強そうなのはフェラーリとマクラーレン? じゃ、レッドブルはどうだろうということなんですが?
浜島: レッドブルは速いんじゃないですか?
[STG]ヘレスのテストが終わった段階で、レッドブルは速くなかったですが、実はヘレスは、どのグランプリ・コースにもダウンフォース・
レベルが似ていないんですね。……なので、チームが実戦的に(闘いの舞台となる)どこかのコースをにらんでデータを収拾しているとしたら、当然、
ヘレスでは速くなくていい。こうして、しっかりデータを集めているのだとすれば、レッドブルはつまり、一番準備が進んでいるともいえると思います。
そういえば、去年、韓国GPの段階で、「ベッテル(浜島さんはセバスチャン・フェッテルをこう呼ぶ)は、今年チャンピオンを取れなかったら永久に取れなくなっちゃうかも」とおっしゃってました。でも、結果としては、そうではなかったですね。
浜島: 勝ちましたからね!
[STG]彼に限らずなんですが、ドライバーとして一皮むけたり、生まれ変わるときがあると思いますが、それについては?
浜島: 最後までベッテルは、”自分は速く走って勝たなければいけない”ということを徹底した。その結果としてチャンピオンになれたというのは、彼にとって、凄い自
信になったんじゃないかと思います。モノの見方も変わりますよ。さらに落ち着いて見られるようになるんじゃないですか。
[STG]なるほど。
浜島: 去年日本でも、中山雄一君が、急に変わった。一昨年まで、たいしたことなくて、鳴かず飛ばずだったけれど、一度、勝って──。それで、どうなるのというのが見え始めた。そうやって勝ち始めると、さらにモノがよく見えるようになるみたいですね。
[STG]それは大事なんでしょうね。
◆ドライバーに立ちはだかる”最後のゲート”
浜島: だから、逆もあります。”最後の最後”をくぐり抜けられるかどうか。そういう”ゲート”があって、(ドライバーが)それを力づくでこじ開けられるか、それとも(そのゲートで)止められちゃうか。そういうのがあると思います。
[STG]それは、全部自分の”仕業”ですからね。
浜島: 他人じゃないですから。だからベッテルにとっては(去年のチャンプ獲得は)凄くデカかったですね。
[STG]もし、去年ダメだったら?
浜島: ダメだったらわからないですよ。本当に! 本人も腐るでしょうし、(それに付随して)いろいろなことが逆方向になる場合もあるし。
[STG]去年、一時期はそうだったけれど、でも建て直しました。
浜島: (今年は)彼の成長した走り方に注目したいですね。(フェッテルが強すぎて)つまんないレース(シーズン)になっちゃうかもしれないけど(笑)。
[STG]一人勝ち!? それは困る(笑)。でも、KERS(カーズ=Kinetic Energy Recovery Systemの略。運動エネルギー回生装置)の経験があるということでいくと、マクラーレンとフェラーリしかないじゃないですか。
浜島: それは、そうですね。
[STG]そのあたりがミックスされると、どうでしょう。
浜島: どうですかね(笑)。そんなに難しいことかな。確かに、一昨年のベルギーGPで、マッサが怪我した後に、バドエルがフェラーリに乗ったけれど、操作が忙しくて使い切れなかった、と言ってました。
[STG]その後、交代したフィジケラもそうでした。
浜島: フィジコでさえ、ですからね。だから、器用な人じゃないと使い切れないのかもしれないですね。