HAMMY’S EYE 2011 “ハミー”だけが語れるフォーミュラ・ワン 4/5
今年も、話題山盛りの新シーズンが始まる。スペクタクルな戦いをより楽しむための[STINGER]特別企画。ブリヂストン・タイヤとともに14年間F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストン タイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた2011年の見どころ!”。ピレリ参戦で、今年のレースは、どう変わるのか!!
小林可夢偉とミハエル・シューマッハ
◆可夢偉/ザウバーは、J・キー次第?
[STG]可夢偉が、スポーツジムで、自転車を漕ぎながらテトリスの最高速をやるんだそうです。で、反射神経とか訓練していると、真顔で言っていました。最近のF1は、そういう能力が要るんじゃないか、と。その”忙しい”と言っているなかで、可夢偉のような若いドライバーがウマくやってくるのではないかと。そんなことも含めて、ザウバー・F1・チームについてはどうご覧になっていますか?
浜島: 可夢偉クンは、去年も順調に成長したと思いますし、今年は彼がドライバーの中のリーダーとして、チームを引っ張っていくんで、そこがポイントですね。彼がどれくらい落ち着いて、自分が何かあったときも、チームを引っ張っていけるかどうか。
[STG]もともと可夢偉は、そういうポテンシャルはある人と思いますが。
浜島: でも、ヤンチャだったときもありますからね(笑)。彼は、GP2ヨーロッパで叩きのめされたのがよかったと思います。(流れが)悪い方に行ったときに、そこで身にできるか、破裂しちゃうか。その違いじゃないですか?
[STG]今年は、可夢偉にとって、試練の年?
浜島: でも、今年のザウバー・F1・チームは、予算もそれなりにあるんでしょ?
[STG]カラーリングを見ると、”潤沢”には見えませんが(笑)。いや、わかりませんけど。格好はイマイチかな、と。
浜島: ただ、可夢偉クンが成長するのと、テクニカル・ディレクターのジェイムス・キーがチームのトータルの潤滑性をきちんとやれば、もうちょっと伸びるんじゃないですかね。[STG]チームとしては、ファシリティ(設備)も悪くないし、去年の5月から、ジェイムス・キーを中心に、今年のクルマの開発方向を始めていて、今年のC30は、去年のC29のピーキーなところをなくすことを目指したようです。
浜島: 以前は、首脳陣が頭が固かったですからね。
[STG]ウィリー・ランプの時代ですか。
浜島: 彼は人の意見を聞いているようで意外と無視する(笑)。
[STG]え、凄く素直な人にみえましたが!!
浜島: そういうところは、よくなっていると思います。去年、それは感じました。
◆フロントが”はりつく”クルマなら、マイケルは速い!
[STG]フェルナンド・アロンソが、ミハエル・シューマッハが手ごわい相手になるのではないか、というコメントをしています。テストの状況もまずまずということで、2年目のシューマッハについては、どんなふうにご覧になっていますか?
浜島: 身体もできてきたんじゃないですか? 彼にとって今まで辛かったのは、ひとつはシーズン中のテストがなかったこと。彼の場合、天才とは言われていたけれど、乗りこなして、乗って乗って、身体を慣らす、というのがあると思います。それから、聞いた話では、今年のタイヤの方が、フロント(のグリップ)が強い傾向にある、ということですから、そうなると(2011年のクルマは)彼には合っているという方向ではないでしょうか
[STG]なるほど。
浜島: なおかつ、メルセデスGP自体が、マイケル(シューマッハの愛称)に合った方向にクルマを造ってくれていれば、彼としては乗りやすくなるんじゃないですか。
我々がマイケルと(一緒にクルマを)開発していたときも、フロントタイヤ(の径)がどんどん大きくなったのも、彼のアドバイスでしたから。彼はフロントが”リッチな”クルマ(フロントタイヤがしっかり食いつく)じゃないと、好きじゃない。逆に言えば、乗りこなせない。フロントが強いクルマの方が速いんです、マイケルは。(多くの場合)実際に速いドライバーは、フロントが強いクルマを乗りこなせる人ですね。
[STG]それは弱オーバーステア、ということですね?
浜島: そうです、弱オーバーのクルマが絶対速い。それで、メンタルとかフィジカルな体力が優れている人は、それを300kmのレースの間、ずっと維持できる。そのへんが十分ではない人は、(後半など)急激に疲れるから、ラップタイムが落ちたり、リヤタイヤを滑らせてしまって使えなくしてしまう、ということが起きるんですね。
だから、クルマがその傾向に合うことと、プラス、フロントに強い方向にピレリさんが(タイヤを)造っていれば、(シューマッハは)助かるかもしれないです。
[STG]タイトル争いとしては、レッドブルとフェラーリとマクラーレンが来て、ルノーが追うかたちかな、と。で、メルセデスがどのあたりに来るかということか。ただし、トップ3はメルセデスを相手にしていない、という図式だという声があります。メルセデスGPに開発力がそんなにない、ということで。
浜島: あのチーム、デザイナーは誰と聞かれると?
[STG]答えられない(笑)。ロス・ブロウンが図面を引いているわけではない。ロリー・バーンやエイドリアン・ニューウェイがいるわけでもない。
浜島: で、ロスも、今はチームの運営に干渉していないんじゃないですか? だから(今年のメルセデスは)正念場ですね。