HAMMY’S EYE 2011 <シンガポールGP→日本GP>
いよいよ、今週末に開催される日本GP。舞台はもちろん、どのドライバーからも「本物のドライバーズ・サーキット」として認められる鈴鹿だ。ブリヂストンタイヤとともに14年間、F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英エンジニアの視線で迫る、”タイヤからみた日本GPの見どころ!
[STINGER]-山口正己(以下STG):さて、いよいよ日本GPですが、鈴鹿が、チャレンジングと言われる所以をタイヤから見て、ということで。
まずは、タイヤの暖め方に、鈴鹿独特のコツのようなものはありますか?
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島):鈴鹿だから、というのは特にはないですが、1周の距離が長くてコーナーが多いでしょ。
STG:ですね、1周5.807kmはスパ-フランコルシャンについで長い部類ですね。
浜島:そのために、特に予選で、暖めの頃合いが難しいですね。暖めすぎると、コース終盤の130Rやシケイン入り口でタイヤがデレデレになっちゃう。逆に暖めが足らないと、1コーナーが厳しくなる。
STG:適温というか、最適な温度にするには?
浜島:美味しいところを見つけるしかない。こればかりは乗っている人にしか分からないですね。
STG:データではなくて感覚?
浜島:鈴鹿の経験は、重要です。特に予選は、それが大きく影響すると思います。
STG:レースではどうでしょうか。
浜島:追い越しが簡単ではないので、レースで中は、あまり関係ないと思います。
STG:鈴鹿は、改装でコースの前半半分が新しい舗装になって、路面がデグナーカーブを境に2種類になっています。その難しさはどうでしょう。
浜島:難しいですね。スタートして、1コーナー、そしてS字を走る。そのグリップの感覚を切り換えるのは難しい。プロでもね。デグナーから先が滑りやすいからと言ってオイル旗が出てるわけでもない。興奮していても、グリップの違いを見極めなければならないですね。
STG:ギリギリで攻めているから、難しさも一入。
浜島:ですね。2年前、しょうがないといえばしょうがないですが、たくさん飛び出しましたね。その後経験を積んでコースアウトは減ったけれど、デグナーまで前半の東コースがドライで、そこから後がちょい濡れくらいの差がありましたからね。
STG:ところで、鈴鹿でもっとも難しいといわれるS字ですが、左右に揺さぶられるコーナーですが、他のコースにない想定以上の入力がある、との説があります。去年、N.ロズベルグのタイヤが外れたのはそのせいとも、といわれていますが。
浜島:過酷ですね。4Gくらい出でていますから。右、左と、首が大変です。
STG:首が大変なら、タイヤも。
浜島:ですね(笑)。
STG:1コーナーの飛び込みと2コーナーのスピード維持。この迫力は筆舌に尽くしがたいが、タイヤはここで、どんな状況になっているのか。1コーナーで左に曲がって、もう一度2コーナーで左に曲がり込みます。タイヤ的には、トルコのターン8よりは楽ですか?
浜島:トルコのターン8に比べて、コーナリングしている時間が短いですから。トルコは数秒右フロントに荷重がかかる。鈴鹿はもう少し短時間です。でも、出ている力は同じです。
STG:上手く走るには?
浜島:う〜ん、いかにスムーズに走るか、ということだと思います。
STG:セッティング的にキモになるのは?
浜島:1〜2コーナーからすでにクルマを合わせると130Rがオーバーステアになっちゃう。その頃合いを見極めて、いかに帳尻合わせをして、ドライバー、クルマにマッチしたセッティングを、トータル・ラップタイムで考えないといけないですね。
STG:去年のタイヤ(笑)と比較して、可夢偉のヘアピン・オーバーテイクショーは現実味が低そうな気がしますが、どうでしょう。
浜島:タイヤの比較はわかりませんけど、でも、DRS(可変リヤウィング)とKERS(運動エネルギー回生装置)があるから、使うタイミングで、かなり行けるんじゃないかと思います。スプーンでピタピタにつけていれば、追い越せると思いますよ。
STG:となると、追い越すのが高速の130Rですから・・・。
浜島:ちょっと怖いですね(笑)。
STG:そこをいかに上手くこなすか、というのもみどころになりますね。
浜島:ですね!
STG:タイトルが決まると、後は花相撲、と見られがちですが、F1はオリンピックと違って、ある種”連続”しているわけで、今年が終わってもそこで気を抜くと来年に響く。ということで、終わりなき戦いである、という視点をタイヤからみて、いかがでしょう。
浜島:テストの禁止多くなったし、いろんなネタを試しておくのは、来年に向けて重要ですね。仰るように連続しているので、チャンピオンシップが決まったからといって気を抜けませんね。データの精度をどれだけあげておけるか、といのが、シーズン終盤に重要であることにかわりないですから。
STG:日本GPはどちらで?
浜島:テレビで観ます。ちょうど同じ日程で、日吉ダムのイベントがあるんで、関西方面に出張しているんです。数千人集まるモーターサイクルのイベントですが、鈴鹿が気になりつつ(笑)。もちろん、日本GPはいろいろな意味で楽しみにしています。
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