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HAMMY’S EYE 2011 <中国GP→トルコGP>

 “ハミー”だけが語れるフォーミュラ・ワン
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話題山盛りの新シーズンも3戦を消化した。スペクタクルな戦いをより楽しむための[STINGER]特別企画。ブリヂストン・タイヤとともに14年間F1
を直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた次の見どころ!”。

[STINGER]山口正己 (以下[STINGER])ピレリ・タイヤに変わって3戦を消化しました。開幕に向けて、各チームに対して、タイヤのデータを届けると思いますが、例えばブリヂストンの場合、シーズンオフの間に、チームにどんな情報を提供してきたのでしょうか。
浜島裕英 ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島) 基本は、タイヤの動的データですね。コーナリング・フォースとかコーナリング・パワーのデータをチームに提供します。本来なら、規則で、秋口には来年向けのタイヤを決めないといけない。ディメンションですね、大きさや形、性能などです。それに対してチームから質問が来ます。

[STG]チームによっては執拗に(笑)。
浜島:そうでもないです。その辺は比較的サラリと。

[STG] とはいえ、今年に向けてのシーズンオフの場合は、時間的なことからそれが決まっていなかったので、チームとしては大変だった?
浜島:チーム側としては困ったと思います。これは想像ですが、おそらく室内データは出ていたけれど、冬のテストを通して、最適なモノに変えると(ピレリの担当者が)言っていたので、それがどんなものになるか分からなかったはずですから。

[STG] その遅れた分をシーズンが始まってたら取り戻そうとしているわけですね。
浜島:もうひとつは、風洞用タイヤが供給されていたかどうかです。50%か60%の大きさのスケールモデルです。

[STG] それがないと、風洞のテストが進まない。
浜島:テストが結構大変だったのではないかと思います。

[STG] ブリヂストンで去年までタイヤ・エンジニアとして活動していた人々は、この2011年には、どうしているでしょうか?
浜島:タイヤのエンジニアについては、ピレリが募集していて、受けにいった人もいます。

[STG]
日本人では、去年チーフ・エンジニアだった松崎淳さんが、フォース・インディアに行っていますね。
浜島:あとは、フィッティング・チーム(現場に持ち込んだタイヤを、各チームのホイールに組み込む)は、全員ピレリが雇ってくれました。

[STG] フィッティング・チームの作業は単にタイヤを替えるだけに見えますが、ノウハウがある?
浜島:フィッティングの作業自体は、そう変化がないと思いますが、FIAへのアロケーション(各チームへの割り当てタイヤ)の報告もありますから、実務面が同じ人というのは大きいと思います。

110428HY-1.jpg[STG] さて、次のトルコGP。イスタンブール・サーキットのコースは、例の大きく長く曲がり込む高速の左コーナーがありますが、最もタイヤに厳しいあのコーナーに特化して、タイヤを活かす難しさや、タイヤの負荷などを教えてください。
浜島:あそこでいかにうまく走るかを目指したセットアップが重要ですね。ピレリがどうかはわかりませんが、ブリヂストンの場合、右のフロントのネガティブ・キャンバーを多めに取るようにチームにお願いしていました。

[STG] タイヤを内側に傾かせておいて、コーナリングGがかかったときに、タイヤが路面に垂直に接地するように、ということですね? チームとしても、その方向にセットすると思いますが。
浜島
:それでも、タイヤ全体を使ってもらうようによリ多めにキャンバーを着けてもらいました。タイヤのトレッド面の真ん中から外まで満遍なく使えるようにしてもらうためです。

◆そろそろタイヤの使い方に慣れてくるころ
[STG]
ピレリとて、「レースを面白くするため」とはいえ、タイヤがもたずにピットインが繰り返されるのでは、耐久性に対するプロモーション的によろしくないでしょうから、内容を変えてくるのではなかと思いますが。
浜島:それは人さまの会社のことなのでわかりません(笑)。

[STG] もしくは、エンジニアやドライバーが、対応するためにすべきことは?
浜島:中国でわかったのは、タイヤに厳しいコースでは、スティントの長さを固執しないで、できるだけ早く交換する、というのが速く走れそう、ということですね。

[STG] トルコGPといえば、2007年に、L.ハミルトンがタイヤをバーストさせる苦い思い出があります。
浜島:L.ハミルトンのタイヤの使い方が、我々の想定を外れて(笑)、厳しかったですね。

[STG]
その、タイヤに厳しいはずのL.ハミルトンが中国で勝ちました。
浜島:作戦がよかったですね。使えるギリギリまで使って、すぐに交換した。予選のQ3をワンアタックにして新品を残しておいた。

[STG]
レースが始まる前らか作戦を遂行した?
浜島:ですね。

[STG] ドライバーのドライビングもですが、いかにうまく与えられたタイヤを使うか、という意味で、チームの総合力も問われている。
浜島:ですね。これからは、みんな似たような作戦なるかもしれないですね。ウェバー(レッドブル)のタイムの伸びシロを見ても、本質的なスピードは悪くなかっ
た。(フェッテルは)長いスティントに固執して、結果として負けた。今後は、作戦がこれまで以上に重要になるでしょうね。

[STG] そういうことは、レッドブルもフェッテルも分かっていたはずですよね?
浜島:先頭走っていると、変えたくない、という心理が働くと思います。ピットインしてタイヤを交換すると20秒はロスする。リスクをともないますからね。自分が交換して遅れて、相手のタイヤがもっちゃったら。この間は、ベッテル(浜島さんはセバスチャン・フェッテルをそう呼ぶ)のでグラデー
ションは大きかったようですから。

[STG]
前車に追いついた時に使えるDRS(可変ウィング)について、いろいろ意見はありますが、どうご覧になっていますか?
浜島:規則で決まっているんだからそれを楽しく使えばいいと思います。FIAもいろいろ工夫しています。中国(上海サーキット)は、直線があまり長くないのでそう追い越しなかったようですが。

[STG] コーナーで写真を撮っていた仲間によると、”テレビには映らなかったかもしれないけれど、下位グループ、例えばヴァージンとイスパニアが、何度も追い越したり追い越されたりするバトルは見応えがあった”とのことでした。
浜島:そうですか。上位陣も、DRSの使い方が洗練されてくると思います。

[STG] ところで、トルコGPは、マッサが2006年から2008年の3連続で勝っていますが。
浜島:あ、左回りね。

110428HY-2.jpg[STG] え? トルコGPのイスタンブール・サーキットは、左回り??
浜島:マッサは、ブラジルGP(インテルラゴス・サーキット)もそうだけれど、左周りが比較的得意じゃないかと思います。フェラーリ自体、左周りのコースの成績がいいような気がします。今度調べてみてください(笑)。

[STG]
なるほど。早速調べてみます。

[STINGER]山口正己

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