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HAMMY’S EYE 2011 <ハンガリーGP→ベルギーGP>

11戦を消化したシーズン。夏休み明けの緒戦は、サーキットの中で最も激しい高低差があり、超高速のオー・ルージュが待ち受ける、最もチャレンジングなサーキットの一つ、スパ-フランコルシャンで行われるベルギーGPだ。最初のブリヂストンタイヤとともに14年間F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた次の見どころ!”

[STINGER-山口正己(以下STG):現在の規則を踏まえながら、金曜日から決勝レースに向けてのチームのセッティングの進め方や、その考え方が、いかにタイヤ中心に考えられているか、ということをもう一度おさらいする、ということでお願いします。
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島):よろしくお願いします。

STG:11戦を消化して、新しいタイヤの使い方が安定してきたと思います。
浜島:そうですね。ずっとと晴れていたら、基本は金曜日に基本的なことを決めておきたい、ということですね。オプションとプライムのラップタイムを比較することが最優先と思います。それを予選決勝に活かすのが基本ですね。

シーズン当初は、デグラデーション(タイヤの磨耗によるグリップダウンの具合)のタイミングが読みにくかったけれど、各チームとも、データが集まって、そこがわかるようになった。なので、グリップが落ちる直前に狙いを定めて、早めにピットインして対処する作戦ができるようになって、戦略の幅が広くなりますたね。

110820HY-0.jpgSTG:最初はグリップが落ち始めるまでわからなくて、遅くなってから慌てて、というパターンでしたが、事前に察知してピットインさせるようになったということですね。
浜島:ええ、ただ、プライムとオプションのタイム差が、金曜日に撮ったデータと決勝の時とで、路面状況がちがったりすることで変化することがあるようです。

STG:日曜日になったら”プライムもけっこういいじゃないの?”という状況もあると?
浜島:そう見えます。なので、他チームの様子を見ながら作戦を立てなければならない、という難しさはありますね。

STG:なるほど。
浜島:もうひとつの注目点は、インターからドライのつながりというか、ギャップが大きい。なので、判断がちょい濡れのどの辺でドライに換えるかが、まだ明確に分かっていないと思います。1〜2周の違いで、大きく差がついて、それがレースを左右することがありますね。

STG:すこしずつデータが集積されて、作戦も集約してくる。しかし、観ている方は、わからない方が面白い(笑)。
浜島:ははは。見ている方は良いかもしれませんけど、やってる側のチームとしては、不確定要素があるのはいやでしょうね。

STG:ということで、金曜日のフリー走行から、プログラムの組み方が安定してきたのではないかと思いますが。
浜島:できるだけ不安定要素を消していきたい。そのバランスが、面白さであり、難しさであり、ということでしょうね。観る方とやる方と、それぞれの立場によって感じ方は違うと思います。

110820HY-1.jpgSTG:天候不順のためかもしれないですが、金曜日午前中のフリー走行1ですが、コースが汚れていたり、ラバーグリップがないことからデータを取りにくいことから、今まではトップチームがあまり走らないというのが当たり前でしたが、積極的に走行をしている姿が印象的です。その辺りにも変化があるのでしょうか。
浜島:天候もあるでしょうね。けれど、シーズン中のテストが禁止されているのが大きいと思う。できる限りデータが欲しいので、金曜日も最初から走っているのだと思います

STG:その辺りは、浜島さんが書かれた発売中の「F1 戦略の方程式」に詳しく書いてあるんですね?
浜島:そうですね。違う解釈ができるのではないかと思います。

STG:「F1 戦略の方程式」のオススポイントは?
浜島:前半と後半で大きくわけて書きました。前半は、チームと仕事をすることに関して、私の失敗談も含めて書いています。たとえば、英語力ですが、フェイスtoフェイスで接すると、”This is a pen”程度の英語力で通じますよ、とか(笑)。これから、若い人が海外に出て行くのに、物おじしなくていいことが伝わると嬉しいですね。

STG:後半が、もう少し専門的ですね。
浜島:ええ、ラップタイムの見方や、タイヤはこんなものですという話を書きました。いままでと違う切り口を紹介できていると思うので、読んでいただければ、違う視点でレースを観ることができると思います。

STG:テレビ観戦も楽しくなる(笑)。早速読みます!
浜島:よろしくお願いします(笑)。

_G7C2347.jpgSTG:ところで、タイヤを暖める、という表現がよく使われます。気温と暖まりの関係や
、”暖める”ということをもうすこし掘り下げてみたいのですが。
浜島:それも、「F1 戦略の方程式」に書いてあります(笑)。チューインガムの例ですね。

STG:冷たくて固いガムと、暖かくて柔かいガムを噛む例え話ですね。
浜島:気温の低いときに、ガムを口に入れて噛むと、柔らかくなるまで時間がかかる。けれど、気温が高い時なら、すぐに柔らかくなる。あれと同じですね。

STG:ナルホド。その暖め方ですが、コツの様なものはありますか?
浜島:実際に、タイヤ、ホイールスピンさせると表面の温度だけしか上がりません。ホイールスピンさせつつ、ウェイビングして、ゴムを変形させることで発熱させる必要があります。

STG:中まで暖まらないといけない?
浜島:ですね。ホイールスピンとウェイビングを上手く組み合わせて暖めます。限界ギリギリでやればやるほど効率よくタイヤ暖まるので、だから時折、スピンするマシンがあるわけです。

STG:シビアな状況、ということですね。
浜島:もうひとつ考えなければならないのは、ホイールスピンさせるにはアクセルを踏み込むわけですから、ガソリンが減る、ということです。

STG:シビアに燃費を考えていくと、ガス欠の恐れも出てくる。
浜島:ですね。特にミシュランとコンペティションをしていた時代には、チームラジオで、厳重に管理していました。燃料の何百ccが効く時代でしたから。

STG:暖めるもの大事だが、燃料のことも考えなければ。
浜島:ですね。ステアリングを切りつつ、アクセルワークを上手に組み合わせて暖めるのは重要な要素ですが、温度をあげなければならないのは、トレッドゴムを暖めてグリップさせるだけでなく、中の空気を暖める必要もある。

STG:その心は?
浜島:車高を適正に保つためです。空気が冷えると体積が減って、車高が低くなってしまう。現在の空力は微妙に車高の影響を受けますから。

STG:タイヤ・ウォーマーの具体的な温度設定ですが、外すと温度が下がると思いますが?
浜島:我々が推奨していた温度は100℃でしたが、ウォーマーを外してピットロードを走っているうちに、表面温度は、アッという間に下がる。ピット出口で路面温度と同じくらいになってしまいます。去年までホイールの中にヒーターが入っていましたが、今年はそれがないのでより顕著と思います。

STG:
暖めるために左右にクルマを振ってウェイビングをしますが、単にハンドルを切っているだけではない気がします。種類や差があるのでしょうか。暖め方のコツとして、ドライバーに勧めることはありますか?
浜島:小林可夢偉君と話したのは、ウェイビングとホイールスピンのバランスです。サーキットによって、コーナー多いとウェイビングしなくていいし、ストレート長いとより冷えやすくなる。その違いを感じつつ、ドライバーが上手いバランスを探す必要があります。

110820HY-5.jpgSTG:ウェイビングも、単にハンドルを左右に切ればいいのではないですよね? 時折、フォーメイション・ラップでスピンするドライバーもいますが、それは、ステアしながらアクセルオンをしていて、外見よりも、タイヤには大きな荷重がかかっているから、つまり、かなりシビアなバランスの上で蛇行させているからではないか、などと思います。その辺り、上手な人は誰でしょう。
浜島:アロンソがピカイチですね。ハミルトンも上手だと思います。セバスチャン(S.フェッテル)も上手。

STG:可夢偉は?
浜島:上手ですね。しきい値、ある程度より気温が低いと、うまく暖められない人もいる。今シーズン前半、アロンソは暖められたけれど、マッサがうまくいかなかったように。いまはマッサも上手になっていますが。

STG:今年のピレリと去年までのブリヂストンは、その方法が違ったりするものでしょうか。
浜島:それはちょっとわかりませんね(笑)。

STG:さて、次は今週末のベルギーGPですが、ハンガリーから4週間のインターバルがありました。規則で休めと言われていても、本当に休んでいるのかどうか。
浜島:頭の中で考えるのは禁止されていないですから(笑)。創意工夫の時間と受け取られていると思います。

STG:外からみるとここが一区切りに見えます。
浜島:基本はそんなに変わると思えないですが、空力が研ぎ澄まされてくるんじゃないかな、と。

STG:マクラーレンが、ドイツ-ハンガリーを連勝しまました。レッドブルとポジションが変わったのではないかという声もありますが。
浜島:どうじてょうね。レッドブルもネジを巻いて来るでしょうから、ベルギーGPが見物だと思います。

110820HY-3.jpgSTG:スパはかなり特殊なコースと思いますが、どこがどう特殊なのでしょう。
浜島:タイヤ的に見ると、オー・ルージュはタイヤの負荷が大きい。たしか、瞬間的には、リヤタイヤに2トンくらいの負荷がかかったと思います。底打ちするところですね。ですから大変シビアです。空気圧がちょっと低くかったりすると、タイヤが故障しやすいサーキットですね。それに、オー・ルージュの先を登り切った先にある下り区間はフロントの左が傷みます。

STG:そこでうまくタイヤを使うために、必要なことは?
浜島:バランスよく使える人が有利ですね。下りで突っ込みすぎない、とか。

STG:その辺りがスパの見どころになりますね。
浜島:ですね

STG:ますます面白い展開になりそうです。
浜島:楽しみです。

STG:「F1 戦略の方程式」を読んで勉強しておきます。
浜島:よろしくお願いします!!(笑)

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