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HAMMY’S EYE 2011 <ベルギーGP→イタリアGP>

伝統のモンツァ。イタリアGPは、今年最後のヨーロッパ・ラウンドだ。モンツァは、前戦ベルギーGPのスパ-フランコルシャンと並ぶ高速コース。とはいえ、スパはスパ、モンツァはモンツァだ。戦いの行方に、ブリヂストンタイヤとともに14年間、F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英エンジニアの視線で迫る、”タイヤからみた次の見どころ!”

[STINGER-山口正己(以下STG):いまはどちらですか?
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島):フランクフルトです。東回りは時差ぼけが厳しいですねぇ(笑)。

110907HY-1.jpgSTG:というと?
浜島:MotoGPです。8月24日に成田から、アメリカのシカゴ-インディアナポリスと移動して、そこからそのままヨーロッパに移りました。8月28日のレースを終えて、ワシントンからドイツのフランクフルト経由でイタリアのボローニャに入って、サンマリノGPがミサノ・サーキットであって(笑)、月曜にテストに立ち会いました。で、今日(取材は6日火曜日)、航空会社のストライキがあるというので、あわててフランクフルトまで移動して、時差調整できないままで、今は成田へのフライトを待っています(笑)。

STG:時差には強いと思っていました(笑)。
浜島:いつもはほとんど影響受けないんですが、今回は厳しかったですね。

STG:日本からヨーロッパにくると、早起きになる計算ですが、逆は確かに調子が狂いますね。
さて、今回のテーマは、高速コースのタイヤ・セッティング、ということでお願いします。高速サーキットは、タイヤにかかる負担も大きくなるので、タイヤ・サプライヤーにとっては、ドキドキするのではないかと思いますが(笑)。
浜島:ドキドキしますね(笑)。F1はダウンフォースも大きいし、ストレートの終わりの最高速部分では、ダウンフォースに押される分だけ車高が下がって、結果としてネガティブ・キャンバー(正面から見た時にタイヤがハの字になる)が大きくなって、タイヤのエッジで走る形になるので、厳しくなりますね。

STG:タイヤの内側だけが接地する形ですね。
浜島:そうです。ネガティブ・キャンバーが強くなるとほど、タイヤの一部だけで荷重を受け止めることになりますから。極論すると、缶コーヒーの缶がタイヤだとしたら、缶を傾けたら端っこだけで接地することになるでしょ? そういう状態なら、一部に力が集中して、ストレスが強くなって辛くなるわけです。

110907HY-3.jpgSTG:ベルギーGPの、L.ハミルトンと可夢偉の接触現場の写真を観て、猛烈なキャンバーに今更ながらに気がつきました。
もしかすると、曲がらないので無理やり曲げようとして、キャンバーを付け、そのキャンバーのおかげで、レッドブルを含む多くのチームが左フロント内側にブリスター(偏磨耗による異常発熱でできる気泡)ができたのではないかな、と。
たとえばここでのキャンバーのように、タイヤ・サプライヤー側と、チーム側で、見解の相違が出る状況があるのでしょうか。
浜島:ブリヂストンがやっていたときも、スパ-フランコルシャンや、イタリアGPのモンツァ、トルコGPのイスタンブール、それから鈴鹿は、ネガキャン(ネガティブ・キャンバー)の付け方で、チームと交渉しましたね。あまり強くしないようにお願い(笑)して、守っていただくようにするんですが、せめぎ合いになる。チームとしては高速になればなるほどネガキャンを付けたい。高速コーナーでタイヤ全体を使いたいですから。

STG:基本設定をハの字にしておけば、コーナリングでタイヤが踏ん張ったときに横Gでタイヤが平らになって、全部が接地する形になる。
浜島:ですね。でも、コーナー以外はエッジで走ることになるわけですから。

STG:メーカーとしてはそれは遠慮していただきたいと(笑)。
浜島:速度が速いと車高の問題も出ます。逆もあるんです。

STG:逆、ですか?
浜島:ブレーキングとストレートの関係で、スパでは内側にストレスがかかるけど、トルコGPのような、どんどん曲がり込む高速で名高いターン8の場合は、ネガキャンがついてないと外側が辛くなるんです。

STG:そういうコースではネガキャンをつけてほしいわけですね。
浜島:です。コースによっていろいろなんです。

STG:スパでは、予選で、4周走ってブリスターが出たという話もありました。
浜島:かなり柔らかいコンパウンドを使ったのだと思います。そのまま使うと壊れるかどうかは、実物や中身を見ないとわからないですね。

STG:いつも以上にタイヤの使い方を工夫する必要があるわけですね。
浜島:ですね。ネガキャン付けて走っている場合は、スパの場合レースが44周なので、何セット使うかを考えて均等割りしてもらった方がいいですね。

110907HY-4.jpgSTG:マクラーレンがブリスターの発生という観点からは、今回はレッドブルよりよかったように見えますが。
浜島:バトンは、運も味方していますね。ジェシカ効果もあるかも(笑)。
最初にハードを使って、トラブルで入ってきている。そこでハードの使用義務は済んで、セーフティ・カーの後(タイミング)を有効に活かせた。予選13番手からスタートして、表彰台に行けたのは、最初にハードを使ってしまえたというのが大きな理由と思います。
STG:最終予選のQ3に残れない場合は、タイヤを履き替えてスタートできますからね。
浜島:バトンは、それを有利に使ったと思います。

STG:全体的にマクラーレンが好調に見えたのは、ネガキャンの頃合いを含めたセッティングがうまくできているからでしょうか?
浜島:マクラーレンは温まり早いですからね、以前から。でも、逆に、気温が高いと辛い。モンツァが暑かったら、マシンのポテンシャルがどうなのかわかると思います。

STG:同じ高速ですが、スパとモンツァに違いがあたますか?
浜島:明らかに、コースが屈曲しているスパは、ダウンフォースがないとコーナリングが厳しい。モンツァは、極端に言うとストップ&ゴーで、レスダウンフォース(ダウンフォースが少ない)。荷重も後ろ寄りになるのでリヤが安定する。スパはトータル性能。モンツァはドッカンブレーキ、という違いがあります。

STG:ということは、スパは傾向的に鈴鹿に似ている。
浜島:ですね。

STG:モンツァのキモはどこになるでしょうか。
浜島:ストレース部分が多いので、ダウンフォースと最終コーナー。車のポテンシャルないと速く走れないですね。その状況で、高速の最終コーナーと高速のシケインをどう対処するかだと思います。

110907HY-5.jpgSTG:やはりレッドブル優勢ですかね?
浜島:傾向としてはそうでしょうけど、レッドブルは、モンツァになるといつも辛い。そういってしまうと身も蓋もないですけど、パワーが足りないですから。毎年エンジンパワーで苦しんでいる。

STG:パワーあれば、ウィング立てられる。
浜島:ですね。過去、去年までのレースで、エイドリアン(デザイナーのニューウェイ)と話すと、ダウンフォースを下げなくちゃ、と言ってます。レッドブルはいつもより辛いと思いますよ。

STG:気温下がると、燃費がよくて、つまり燃料をリーン(薄め)にしているメルセデス・エンジンが有利になって、マクラーレンがよくなるかもしれないですね。雨だとどうでしょう?
浜島:雨だと分かっていればレッドブルでしょうね。

STG:他に注目は?
浜島:トロロッソがよくなってきてますね。可夢偉君の脅威です。

STG:ザウバーのライバルといえば、フォース・インディアもよくなっていますね。
浜島:ブリヂストンから行ったタイヤ・エンジニアの松崎君の活躍があるかもしれないですね。

STG:ザウバーには、そういう役目がいないのではないかと思います。
浜島:専門にタイヤを見る人が必要かもしれないですね。

STG:浜島さん、ザウバーにいかがですか?(笑)
浜島:年寄りに、出番はないです(笑)。

STG:可夢偉からラブコールをしてもらいますよ(笑)。
浜島:(笑)。フランクフルトは20℃切っています。風引かないように気をつけてください(笑)。

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