HAMMY’S EYE 2011 <イギリスGP→GPドイツGP>
9戦を消化したシーズン。今週末は、隔年開催のニュルブルクリンクで行われるドイツGP。歴史と伝統に彩られた、過酷なニュルブルグリンクでのスペクタクルな戦いをより楽しむために、ブリヂストンタイヤとともに14年間F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた次の見どころ!”
[STINGER-山口正己(以下STG):次回のドイツGPは、19戦の10戦目で、ちょうど折り返し点です。ここまでは長かったですか?
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島):といわれても困るけど(笑)。でも早いですね。今年は、MotoGPと並行して国内もやっているので、時間の流れは去年まで(のF1全戦現地参戦に)似ていますね。地震の影響で、3月と4月にレースがなくて、そこは間延びしたところもありますが、いまは元に戻りつつあります。
STG:今は、アメリカにいらっしゃいますよね? 先週、ヨーロッパだったと思いますが?
浜島:先週は、ザクセンリンクと言って、東独のドレスデンの近くでレースがありました。日曜日だけで12万人入ったんですよ!
STG:連戦なのに、アメリカで、大変と思いますが。
浜島:今週は、サンフランシスコから近いモントレーです。コークスクリューが有名なサーキットですね。
STG:F1の連戦からすると、スペインとモナコとか、以前であればカナダとアメリカのように、近隣諸国が常識と思っていました。
浜島:MotoGPは、こういうのが多いんです。次がインディアナポリスとイタリアのミサノ、オーストラリアのフィリップ・アイランドとマレーシア、というのもあります。
STG:それは、メルボルンとクアラルンプールというF1にあるパターンに多少は近いですね。しかし、ヨーロッパとアメリカの連戦は大変そうだなぁ。
浜島:MotoGPを始めて、面白いことに気付いたんです。
STG:それは?
浜島:所帯道具少ない。だから、F1のように、ヨーロッパのファクトリーとか、どこかに帰るのではないんです。拠点に戻らない。スタッフは、時間ができると、自分の家で休むんです。
STG:なるほど。サーカスというのは、そういうところから言われるようになったんですね!
浜島:ドゥカティ以外は日本メーカー、という事情もあるでしょうね。重要なパーツは、それぞれの行く先々に日本から送られるようです。拠点に戻るF1とは違うんだな、と。2007年に参戦を開始したときに、”ファクトリーに行って会議をやろう”というと、妙な顔をされました(笑)。
STG:去年はF1の全GPをカバーしていましたが、今年はMotoGPを中心に、やはり時差との戦いと思います。
浜島:でも、大丈夫(笑)。
STG:さて、折り返し点を迎えて、何か特別な印象はありますか?
浜島:みんなが新しいタイヤに対して学習が進みましたね。データが取れて、タイヤが理解できて、作戦が変化しているのが面白い。
STG:最初は、タイヤのグリップダウンが大きくなってから急いで交換したりしてましたが。
浜島:そう。最近は、グリップが落ち始めるだろう、という予測を立てて、それより大分早めに交換するようになってます。タイムの変動を見ていると、そういう作戦に切り換えたな、と。
STG:始めてのタイヤというのは、難しいですね。
浜島:それもだけれど、冬テストしかなくて、シーズン中のテストが禁止されているのが大きいですね。細かいところまでデータを取るのが難しいですから。
STG:となると重要なのは?
浜島:金曜日(フリー走行)の使い方ですね。いかにうまくデータをとるかが勝負になると思います。
STG:モナコ、モントリオール、バレンシアと、公道3連戦の後にシルバーストン-ニュルブルクリンクとパーマネント・サーキットが続きます。タイヤ的に見て、前回のイギリスGPのシルバーストンと、今回のドイツGPのニュルブルクリンクを比べると?
浜島:タイヤ的にはニュルの方が厳しくない。ただ、抜きどころが一杯あるから、デグラデーション(グリップの落ち込み)が大きくなる前にタイヤを交換しないと、ズバズバ抜かれてしまう。
STG:今年はDRS(可変リヤウィング)があるのでさらに抜かれやすい。
浜島:ですね。タイヤの交換時期が注目ですね!
STG:ドイツGPはホッケンハイムとニュルブルクリンクの交互開催ですが、2年前のデータであることと、新しいタイヤを考えると、かなり面倒な状況に見えます。
浜島:それだけでなくて、あと天気が不安定。なかなか難しいです。
STG:となると、出たとこ勝負で、ノウハウがモノを言う?
浜島:金曜日にどれくらい効率よくデータを取れるかがキーになりますね。
STG:4年前のニュルブルでは、大雨で、ヴィンケルホックがトップを走る番狂わせがありましたが、そこを含め、ニュルの思い出やエピソードがありましたら、その辺りもお願いします。
浜島:ニュルの思い出は、ブリヂストンの参戦2年目に、M.シューマッハとM.ハッキネンが熾烈なポイント争いをして戦っていましたが、ミカがうまくニュルで勝って、その流れで鈴鹿でチャンピオンを決めました。
STG:ニュルはいいイメージがある?
浜島:でも、ミシュランとやっている時、ドュバスキエ(ミシュランの名物エンジニア)さんから、”ブリヂストンのタイヤはヘンな匂いがする”、と言われたことがあります
STG:匂いですか?
浜島:オカシ薬を使って柔かいコンパウンドを作っているんじゃないかとか(笑)、上薬を塗ってるんじゃないのかと(笑)。
STG:それはある種のほめ言葉でしょうか?
浜島:あの人はほめ言葉を使うのかなぁ(笑)。
STG:さて、追い越せるし、いいサーキットということですが。
浜島:1コーナーと、ビードル・シケインの前もポイントですね。
STG:アメリカから大変でしょうが。
浜島:朝、観ることになるから、そうでもないです。楽しみにしています。
STG:ますます面白くなりそうですね。
浜島:イギリスで、F.アロンソが素晴らしかった。第3スティントの、ウェット路面が乾き始めた時のソフト・タイヤが、突出して速いかった。渇ききるタイミングですね。レッドブルのミスもあるけど、巧いんでしょうね。クルマもよくなっていると思うけれど。
STG:ということは、中盤戦が楽しみですね。
浜島:楽しみです!