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HAMMY’S EYE 2011 <ドイツGP→ハンガリーGP>

10戦を消化したシーズン。今週末は、ニュルブルグリンクでのスペクタクルな戦いの余韻が冷めないところで、早くも次のハンガリーGPが始まる。ブリヂストンタイヤとともに14年間F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英さん(ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー)の視線で迫る、”タイヤからみた次の見どころ!”

◆フェラーリの御家事情
[STINGER-山口正己(以下STG):
ドイツはなかなか面白い展開でした。
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー(以下、浜島):そうですね。フェラーリがコンサバな作戦で負けちゃいましたけど(笑)。

STG:具体的には?
浜島:せっかくタイヤが長持ちして、そこそこ速いのに、マクラーレンといっしょにタイヤ交換に入ってしまったら勝てない。もったいなかったですね。

110728HY-1.jpgSTG:しかし、ボクらが見てもわかるそうしたことを、専門家のフェラーリのエンジニアがどうして?
浜島:クビにされるのが怖いんでしょ(笑)。いや、半分冗談ですけど、現在のマネージメントだと、思い切った作戦取れない。
STG:なるほど!
浜島:去年から、そういう傾向になっていますね。去年の最終戦でクリス・ダイヤーが、飛ばされました。

STG:タイトルを取れなかった責任を取らされた?
浜島:確かに失敗だったけれど、シーズン中盤前なら飛ばされない。
たまたま、シーズン終盤だったのが不運でしたね。

STG:アルド・コスタも同じく”責任”をとらされた? そうした状況だと、作戦が”守り”に入ってしまいますね。
浜島:ほかに合わせて、という方向に走ります。(フェラーリは)マイケル(M.シューマッハの愛称)でやっていたとき、思い切った作戦が取れていた。それがはまっていたと思います。自由度がありましたね。

STG:その体制ならば、コンサバティブな作戦になってしまうのは、しょうがないといえばしょうがない。
浜島:ですね。

110728HY-2.jpgSTG:ニュルブルクリンクの表彰台の下で、元ブリヂストンの今井弘さん(マクラーレン)が、”疲れました”とつぶやいていいました(笑)。浜島さん的に言うと、”レース中ずっと心臓が停まっていた状態”だったようです。
浜島:敵が失敗しても守らなければならない状況だったでしょうから。多分、彼が担当するルイス(・ハミルトン)より、フェルナンド(・アロンソ)の方が速いことを分かっていた。速いというのは、一発ではルイスが上だけれど、タイヤが長持ちして速い、という意味です。ラップチャート見ると、フェルナンドのタイムが落ちてきていない。だからスティントの切り方で逆転される可能性があったわけです。

STG:それを今井エンジニアは分かっていた。
浜島:ですね。でも、フェラーリはそれができなかった。昔、タイヤを供給していた時の(1998年)のマクラーレンみたい。余裕で勝てたのに、マイケルに合わせてミカ(・ハッキネン)がピットインしてしまって、負けたことがあります。

STG:だから今井さんはドキドキした。
浜島:今井君、敵がはまってくれればいいなぁ、と考えていたんでしょうね。で、その通りになっなけれど、最後のピットインが終わるまでは、ハラハラ、ドキドキだったと思います。

STG:以前、タイヤ交換をしないのに、相手を攪乱するために、タイヤ交換の準備をして見せたりしたことがありましたね。フェラーリとマクラーレンが騙しっこをしていた(笑)。
浜島:その当時より、ガソリン給油分がないので、タイヤ交換のタイミングは分かりやくて騙されないはずなんですけど。

STG:そうした作戦が重要になったということは、タイヤの使い方が子細に分かってきた、ということでしょうか。
浜島:ですね。ギリギリまでのデータをみんなが理解した、ということだと思います。そこに相手の動きが加わった。その結果、マクラーレンは落ちる、フェラーリは落ちないのに、ツラれてしまった、ということだと思います。

◆可夢偉のタイヤ使い

STG:可夢偉は、スタートで5台抜いてきました。”イン側にいたらみんな勝手にとっちらかってくれた”とのことで”自分はなんにもしないない”とのことでしたが、スタート直後、燃料が満タンで車重が重い状態では、タイヤを滑らすことで(滑ってしまうことで)表面が暖まって、いい感じになる、という、ザウバーの弱点が逆手に利用できるのではないか、という気もします。
浜島:スタートはまっすぐ走るのが絶対速いんです。

STG:というと?
浜島:レーシング・カートを、降りて押してみるとすぐに分かりますね。ちょっとでもハンドルを切ると相当重くなる。

STG:F1エンジンでも、パワーが食われる?
浜島:です。左にふってポジション確保したいのは分かるけれど、エンジン回転もさがってしまう。スタートでステアリング切らない方がいいことを可夢偉君は十分理解しているのだと思います。

STG:ポジション取りも巧いですね。
浜島:ですね。去年のハンガリーGPのスタートもそうでしたね。

110728HY-3.jpgSTG:彼は”フィッシュになった”とジョークを言っていましたが、動物的にすり抜けるラインが見えているんじゃないかと思います。
浜島:ザウバーは、ダウンフォースが足らないですし、滑ると表面は暖まるけれど、タイヤ全体を変形させないと暖まらないんです。一昨年デビューしたブラジルGPの時に”冷めちゃったけど”と聞きに来て、よく説明して理解しています。なので、低い気温でも、燃料が重いスタート直後は、正しい理解でタイヤを暖められると思いますね。

STG:今回のオンガロリンクの特徴は?
浜島:意外と周回遅れが出るコースだということです。

STG:1周が4.381kmと短くて周回数が70周と多いですからね。
浜島:マイケルが周回遅れになったことがあるクヤシイ思い出のサーキットですから(笑)。タイヤの交換時期を間違えると、面倒なことになりますね。

STG:今のところ曇り空ですが?
浜島:涼しいと、タイヤが持っちゃう可能性があるので難しくなりますね。暑いなら対処の仕方あるけれど。公開練習で、その辺りが分かるといいけれど、データが取りきれないと難しいレースになると思います。

STG:ドイツGPも、暖かくなっていたら展開が変わった。
浜島:ですね。

STG:可夢偉のザウバーはタイヤが暖まりにくいとのことですが、今回も気温が低いとツライレースになりそうでしょうか?
浜島:そんなに悪くないと思います。コーナーがたくさんあるので、暖めに関しては、若干楽な方向です。去年の結果からいけば、(可夢偉自身が)戦い方を分かっているんじゃないかと思いますよ。

STG:楽しみになってきました。ありがとうございます。
浜島:こちらこそ!!

[STINGER]山口正己

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