メルセデスGP MGP W01
メルセデスGP MGP W01
ブラウン改めメルセデスGPが送り出す2010年型マシン、MGP W01は、2009年シーズンのチャンピオンシップをリードしたブラウンBGP001とレッドブルRB5を足して2で割ったような姿をしている。目を引くのが、RB5の特徴のひとつだった、いわゆる”Vノーズ”だ。これはフロントアクスル付近にあるノーズのピーク両端を盛り上げるのが目的ではなく、モノコック底面をラウンドさせ、空力効率を高めるのが目的。底面の肉を削り取った分、上面に肉を盛って断面積に関する規定の帳尻を合わせているのだ。
結果、ブラウンBGP001の特徴のひとつだった、ステアリング・ラックをモノコック下部に置き、ロワー・ウィッシュボーンと抱き合わせるレイアウトを捨てた。ステアリング・ラックは相変わらずモノコック下部にあるが、モノコック自体が上に持ち上がったため、ロワーウィッシュボーンと抱き合わせることはできていない。といってアッパー・ウィッシュボーンとの抱き合わせでもなく、単独で露出している。空力的には「?」だが、これが最適な解決法だったのだろう。
フロント・サスペンションの下反角が強く付くのを嫌ったためか、モノコック下部にセンター・キールを出し、ロワー・ウィッシュボーンをマウントしているようだ。これも空力的に疑問が残る措置だが、サスペンション・ジオメトリーと空力性能を秤に掛けた末の最適ソリューションなのだろう。ロワーアーム長が長くとれるのは、ジオメトリーだけを考えれば健全だ。
Vノーズの採用に合わせてノーズ先端も高くすればもっとRB5に近づいたが、そうはしなかった。旧ブラウンGPの技術陣は低いノーズに空力的な最適解を持っているため、それを崩したくなかったのだろう。
その他、目を引くのはエアポッド(エンジン吸気取り入れ口)周辺の造形である。空力的には不利になるはずだが、開口面積は大きい。しかも内部に鉛直の仕切りが見える。左右バンクに吸気を効率良く振り分ける狙いだろうか。エアポッドの左右にはスリットがあり、カウル内にエンジンとは別の用途の空気を導いている。ハイドローリック用熱交換機冷却用だろうか。
ちなみに、ノーズ先端にカーボンファイバーの地肌が現れているのは、”シルバーアロー”誕生の故事に由来する。1934年、メルセデスはW25を引っ提げてアイフェル(ニュルブルクリンクのオールドコース)でのレースに臨んだが、レース前日の車検で規定(750kg)を1kgオーバーしていることが発覚。規定を満たすため、純白のペイントをはぎ取った。結果、W25はアルミの地肌がむきだしに。これがシルバーアローの事始めで、現代のF1マシンからペイントをはぎ取ると、カーボンファイバーの地肌が見えるという寸法である。