マクラーレン「MP4-29」 ファースト・インプレッション
2014年の歴史的車両規則変革に向けて、早々に発表されたマクラーレンMP4-29。
MP4-29は、1982年にロン・デニスが、チームの創始者であるブルース・マクラーレンの遺志をついでチームを運営していたテディ・メイヤーからチームの権利を買い取って、自身のプロジェクト4とジョイントさせ、”マクラーレン・プロジェクト4″を略したMP4をマシンのコードネームに冠した29番目のクルマ、ということになる。
ちなみに、ロン・デニスがチームを引き取る前年の1981年のマシンコードはM29であり、ある意味、歴史が一巡し、そのマシンが大きく規則が変わる2014年用だったことは、偶然ながら歴史の機微を感じさせる。
まず、MP4-29は、タイトル・スポンサーのボーダフォンが契約終了で抜けたとことで、ボディから赤が消え、シルバー1色となったが、そのことを忘れさせる奇抜なシェイプが目を引く。
最初に目が行くのは、今年のトレンドになりそうな先細りのアリクイのような形状のノーズ部分だ。モノコック先端部の高さ規制が、昨年の625mmから525mmに低められ、外見的に最も大きな変化は、フロント回りに集中している。
とはいえ、2014年シーズンに大きく変化して施行される車両規則の中で、最も大きな影響を与えるのは、このフロント部分ではなく、エンジン関連の変更で、熱をエネルギーに変換して有効利用する考え方は、まったく新しいチャレンジとして、大きな注目を集めている。
ここまで、マクラーレンが搭載するメルセデス・エンジンは、ハイパワーに定評があったが、1600ccV型6気筒のターボの新規定と、熱回生のテクノロジーを、どんな形で披露してくれるのか興味が持たれる。もちろん、2015年からチームにパワープラントを提供するホンダとのジョイントに向けて、さまざまな開発が行なわれることも、2014年のマクラーレンの動きを注目させる大きな理由である。
[STINGER]山口正己
「MP4-29」スペック
■シャシー
型式:MP4-29
モノコック:カーボンファイバー・コンポジット/ドライバー・コクピット・コントロール&燃料電池
サスペンション(前):カーボンファイバー・ウィッシュボーン&プッシュロッド・サスペンション/インボード・トーション・バー/ダンパーシステム
サスペンション(後):カーボンファイバー・ウィッシュボーン&プルロッド・サスペンション/インボード・トーション・バー/ダンパーシステム
エレクトロニクス:シャシー、エンジン、データ・コントロール・ユニット/電子制御ダッシュボード/オルターネーター電圧コントロール/センサーおよびデータ分析テレメトリー・システム(すべてマクラーレン・アプライド・テクノロジーズ製)
ボディーワーク:エンジンカバー/サイドポット/ルーフ/ノーズ/フロントウイング&リヤウイング/DRS(全てカーボンファイバー・コンポジット)
タイヤ:ピレリ P Zero
無線:KENWOOD
ホイール:ENKEI
ブレーキ・キャリパー:akebonoキャリパー・シリンダーズ
マスター・シリンダー:akebonoマスター・シリンダーズ
バッテリー:リチウムイオン・バッテリー
ステアリング:マクラーレン・レーシング・パワー・アシステッド
計器:マクラーレン・アプライド・テクノロジーズ・ダッシュボード
塗装:アクゾノーベル・カー・リフィニッシュズ・システムズ製
■エンジン
型式:メルセデス・ベンツPU106Aハイブリッド
燃料搭載量:1.6リッター
気筒数:6
最大回転数:15000
バンク角:90度
バルブ数:24
燃料:エクソンMobil製 高性能無鉛ガソリン(5.75%バイオ燃料)
スパーク プラグ:NGK製F1専用レーシング・スパークプラグ
潤滑油:Mobil 1 エンジンオイル
重量:145kg (FIA レギュレーション最低重量)
ERS(エネルギー回生システム):MGU-K/MGU-H/エナジー・ストア(リチウムイオン・バッテリー)
■トランスミッション
ギヤ・ボックス:カーボンファイバー・コンポジット・ケース
ギヤ:8速+リバース
ギヤ・セレクション:マクラーレン・レーシング製シームレス・シフト 手動式フライ・バイ・ワイヤ
クラッチ:カーボン/カーボン、手動式フライ・バイ・ワイヤ
潤滑油:Mobil 1 SHC ギヤオイル
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Photo by McLAREN MERCEDES