小林可夢偉 予選後会見全録–イタリアGP
与えられたクルマの力をいかんなく引き出す。実は、これがレーシングドライバーの能力だ。もちろんチームと一緒になってそれを積み上げていく。「もしかしたら2周遅れ」も覚悟していた可夢偉とザウバーは、1.6秒と読んでいたトップとの差を1.4秒で仕あげてみせた。可夢偉は、持てる力を使い切るいい予選を戦った。
◆朝の走行で、クルマは何とか”まとまった”が・・・
—-フリー走行の17番手から、予選は13番手へ。でも、これで精一杯という感じ?
小林可夢偉(以下、可夢偉) その通りです(笑)。
—-前とのギャップもそれなりにあって。すぐ前はシューマッハですが?
可夢偉 コンマ3(0.3秒)以上あったんで・・・。さすがに、(走りを)全部”まとめて”も、コンマ3は届かないんで。まあ、あれ(13位)が、ぼくらの持ってる(パフォーマンスの)なかで、ベストのポジションだったと思います。
—-昨日の段階で、ダウンフォースが足らない、ペドロと同じエアロパーツなのに何故・・・ということでしたが、原因は?
可夢偉 具体的にはつかめてないんですけど、結果的に、クルマとしては”正常”になって。それがほんとに、今日一番の大きな成果で、初めて、何とかセットアップができたという感じなんですけど。
セットアップも(午前の走行の)一時間で仕上げられるとは思ってなかったんですけど、思ったよりも、いい方向に行ったので。いい感じで、予選もできたと思ってます。
—-ダウンフォース不足の改善はできた?
可夢偉 ウイング自体はそのままなんで、ダウンフォースが増えたというよりも、ぼくらが「このウイングだったら、このくらいのダウンフォースがある」というレベルに、ようやく到達したんで。それまでは、(エアロ)パーツは付いているのにダウンフォースがないという、メカニカル・トラブル的な状況だったので、それが直って、クルマも正常に動き出して、セットアップもやりやすくなったということですね。
◆ロー・ダウンフォースで闘えるクルマに、一応、なっている!
—-明日のレースに向けては?
可夢偉 ちょっといまのところ、「レース・ペース」に関しては読めないですけど、いいスタートをして、いつも通りに・・・。(レースが)速いペースだと、(対応していくのが)むずかしいかと思うんですけど、うまくタイヤを使いながら、レースをコントロールできればと思います。
—-ダウンフォースが少ないクルマで、タイヤをいたわるというのはむずかしいかと思いますが?
可夢偉 非常にむずかしいんですけど、でも、そのダウンフォースを減らしたなかで、ちゃんと闘えるようにバランスするというのが(ぼくらに課せられたことなので)・・・。
どうしても、ダウンフォースを増やしちゃうと、直線が遅くなるんで。そうすると、前のクルマを抜くというより、自分のポジションを守るという闘い方になるので。
それでは、このレース、闘えないということがわかってるので。できるだけ、「ロー・ダウンフォース」で、どれだけ予選で、また、レースで闘えるクルマをつくるかというのが今回の課題だったので。いまのところ、それ(意図した戦略)がほんと、スムーズに行っていて、明日、闘ってみて、自分たちがどういうレースができるかというのを見たいです。
—-スタートですが、ここは1コーナーまでの距離が長くて、そして1コーナーでは高速からのブレーキングになると思いますが?
可夢偉 そうですね、さっきGP2のレースがありましたが、すごくアクシデントが多くて、気をつけないといけないんですけど。ぼくらのポジション(グリッド)は(順位を)上げるしかないので、レース的にはきびしいと思います。
自分が思う最大限に、ポジションを上げられればいいなと思いますが。ただ、その状況というのは、その場その場で考えないといけないんですけど。しっかり、自分のなかで、どういう”位置取り”をするかを考えながら、明日、レースできればと思ってます。
—-最近のスタートは、いつもシューマッハの近くですね?(笑)
可夢偉 仲いいですね、最近(笑)。
—-スタートは、もちろん、アグレッシブに行く?
可夢偉 いえ、そんなに”行く”つもりはないですね。基本的には、やっぱりレースは長いんで、”生き残る”ことを優先的にして、1ポイントでも取れればいいというレースなんで、落ち着いて、最後までレースしたいと思ってます。
—-今日の予選に、点数を付けるなら?
可夢偉 あまり点数は付けたくないんですけどね、50点!
◆予選ではなく、レースで闘うためのセッティング!
—-最終的に選んだウイングの仕様というのは?
可夢偉 ”レースを闘えるクルマ”ということで(選んでます)。ダウンフォースがなくて(でも)タイムが出せるクルマなら、レースでは一番強いと思ったので。予選だけ闘うなら、また違う方法もあったと思いますけど。
レースを考えると、ダウンフォースがなくても、トップスピードさえあれば、(前を)抜くことはできるんで。
—-なるほど、レースで「抜く」ためということね?
可夢偉 抜かれたら、レースは終わってるから。抜きに行く、抜けるクルマをつくるには、これしかないから。だから、ほとんど”キメ打ち”で、どういうクルマをつくるか。
—-乗りにくさがあったとしても、それはガマンして?
可夢偉 どうやって、タイム(アップ)につなげるか・・・。
—-このコースは、そういう”方針”は決めやすかった?
可夢偉 (気持ちとしては)ラクではあったんですけど、でも、あまり嬉しくないコースです(笑)。
ただ、昨日は、セットアップも何もできない状態だったので、今日(午前のフリー走行)の一時間でセットアップして、ここまで持ってこられたというのは十分だと思ってます。
—-昨日と較べて、何かを交換した?
可夢偉 何も交換してないです。何でダウンフォースが足りないかというのは、わかんないです、原因が(笑)。それがやっと直って、やっとセットアップができるということで・・・。
—-フロアも換えてないのに、なぜ?
可夢偉 ダクト周り、ですかね。あそこらへん、すごくむずかしくて。ちょっとしたことで、変わるみたい。車高だったりとか、その組み合わせで。P1(フリ
ー走行1)スタートしたときには、(ダウンフォースのレベルが)30ポイントくらい違ってた。
—-それは、モンツァだから? ほかでも起こり得る?
可夢偉 (ここが)初めてです。同じダウンフォース・レベルで、30ポイント違うというのは、何でやねん?ということで。(パーツ的に)壊れてるわけでもなく、意味がわからなくて。
—-それが今回”起きた”ということは?
可夢偉 今回は、新しいリヤウイングなので。
◆ここでポイントが取れたら、万々歳だ!
—-ザウバー車の、プライムとオプション・タイヤのタイム差は、コンマ1〜2?
可夢偉 コンマ2〜3(0.2〜0.3秒)ですね。
—-ブレーキングは心配なし?
可夢偉 そうですね。
—-13番手なら、レースを闘えるポジション?
可夢偉 もちろん、何台か、前は落ちて(消えて)くれるし。正直な話、2台くらい抜けたら、ポイント(圏内)に入れる。そういう意味では、十分なポジション・・・。このコースで、ポイント取れれば、かなり、万々歳。ぼくらとしては、(ポイントは)あり得ないコースなので。
—-タイヤ交換も含めて、今回はどんな戦略?
可夢偉 タイヤの”保ち”がどのくらいか、わからないので、(作戦は)まだ・・・。
—-もしかしたら、アッという間にピットインしてとか?
可夢偉 いや、それはわからない、まったく・・・。
—-燃料が重いときのクルマ(ザウバー)は?
可夢偉 周りとの差がわからないので・・・。まあ、あんまりよくはなさそうですけど。
・・・でも、(ザウバーの)ウイングは”可哀想”ですよ! ルノーやマクラーレンのウイング見たら、闘うの、イヤになる。ほんと、”イジメられっ子”みたいなクルマやから(笑)!