小林可夢偉 インタビュー 「最後のテストは特別です」
2011年3月1日
オーストリア ヒンウィル
8日(火)から始まる最後のテストが終わると、いよいよ2011年のF1シーズンが開幕する。ザウバー・F1・チームの小林可夢偉が、昨年までと今年の展望を語った。また、新しいタイヤやレギュレーション、自らの役割についても意見を述べている。
Q.テスト中、ピレリ・タイヤはコンパウンドの違いも含め、全種類を試すことができたのでしょうか?
小林可夢偉(以下、可夢偉) おかげで今手に入るものは全部試せました。それにはレインタイヤも入っていましたけど、路面がそんなに濡れていなかったんで、まだ判らないですね。本来ならインターミディエイト※1を使うコンディションでしたけど、とりあえずチェックしてみたという程度ですかね。
Q.構造の点で、昨年までのタイヤと違う最も重要な点は何でしょう?
可夢偉: 限られた時間でいい仕事をしてくれたということを、最初に断っておきたいですね。ひとことで言うと、去年までのタイヤとはあらゆる面で違うんですよ。グリップは低くて、長持ちしない。無理するとすぐにダメになって、大げさじゃなくラップタイムが5秒も落ちてしまう感じなんですよ。でも、たまたまそうなったわけではなくて、ピットストップの回数を増やしてレースを面白くするという狙いがあったみたいですね。
Q.予定されていたバーレーン・テストでは、バルセロナよりも温度の高い状態で走るはずだったのですが、その場合はドライバーから見てどうなっていたと思いますか?
可夢偉: 路面温度が高ければ、もちろん大きな違いがあると思う。だから、メルボルンには、その点で未知の要素を抱えることになります。まぁ、全員が同じ条件だから、目の前の課題にどれだけ早く対応できるか、準備を整えて臨むだけですよ。
Q.KERS※2の再登場や可動リヤウイングのために、ドライバーへの負担が大きくなるといわれていますが、これについてはどうでしょう?
可夢偉: 大事なのは、そういう変更をどうやってどれだけタイムを伸ばせるか、ということなんです。今も、新しいシステムに慣れる努力をしてます。ドライバーがうまく使えるかどうかで有利にも不利にもなる。集中力がいっそう求められるのは確かですね。その点は、自信を持ってますけどね。とにかく、レーシング・ドライバーなんて、いつも何かしら文句を言ってるもんですよ。それが仕事の一部じゃないかと思うこともあるぐらいです。
Q.本当に追い越しのシーンが増えるのでしょうか?
可夢偉: たぶん増えるんじゃないですかね…。ただ、KERSの効果はほとんど全チームが使うわけなので、そんなに期待はできないと思います。あとはリヤウイング次第ですけど、決勝では使用できるタイミングが、前との差が1秒以内というルールをちゃんと管理できるか不安な面もありますよ。
Q.あなたの売り物の追い越す才能がこれまでほど活かせなくなる可能性はないでしょうか?
可夢偉: たぶん…。特に加速での追い越しは簡単になってしまうでしょうから。ルールで決まったことをあれこれ言ってもしかたないですよ。
Q.新しいチームメイトとはすぐに打ち解けていましたが、自分の方が経験豊富という状況はどんな感じですか?
可夢偉: 僕自身はぜんぜん大丈夫です。これまでの経験を最大限に活かしてマシンを良くしていくだけなんで。まったくの新人と比べれば、たった1年の違いでも大きいですよ。たとえば、セルジオ(・ペレス)が今どういう心境か、想像がつきます。いろいろあって大変なんじゃないですかね。テストなら、まだ時間に余裕があるからいいんですけど。本当に大変なのは、初めてのレースでしょうね。フリー走行なんかアッという間に終わって、予選、決勝って。すべての新人が受ける洗礼ですよ。
Q.バルセロナでは、C30はどこか新しくなるのでしょうか?
可夢偉: いくつか新しいパーツが届くはずです。それが、開幕戦の仕様になりますよ。どれも空力関係です。早く試してみたいですね。開幕を迎えるのに近い形のマシンを走らせるんで、最後の冬季テストは特別ですよ。そこで、初めてほかのチームとの力関係が判るわけですし。それが当たっているとは限らないけれど、興味深いことは確かですよ。
※1 ※インターミディエイト
ドライとウェットの中間のコンディションで使用するタイヤ。
※2 KERS
ブレーキング時のエネルギーをチャージして、推進力にするシステム。