ホットライン2011 round3 中国GP 1/2
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、中国GPの裏舞台をズバリ診断する。
◆読めないレース! おもしろかった中国グランプリ
羽端恭一(以下、羽端 )あれ、いま、どこですか? 日本行きの飛行機を待ってるエアポート?
[STINGER]編集長山口正己(以下[STG])上海です。上海には、二つの空港があって、成田に当たるプードン(浦東)と羽田に当たる虹橋(ホンチャオ)がありまして、今回は、ホンチャオ〜羽田便で帰ります。ちなみに、J.バトンとジェシカちゃんが一緒。つっても、彼らはボール・ポジションの席ですけど(笑)。
羽端: あ、ファーストね!(笑)。
[STG]一番前だから、最初に日本に到着する、なんてことはないか(笑)。
羽端: ははは、でも、マレーシアから連チャンだったから、久しぶりの帰国ということになりますね。
[STG]です。なんか懐かしい。日本は大丈夫だったか、みたいな気分と、それから中国は、ツイッターやフェイスブックが規制されているので、いろいろフラストレーションも溜まっていたし。
羽端: あー、それはちょっとね。でも”シャンハイ”は、とてもおもしろいレースだった!
[STG]です、です。専門家の中には、ドライバーの腕で勝負がつかないから面白くなかった、という訳知り顔の説もありましたが、今年の規則は、”マシンをどう使うか”というチームとドライバーの闘いになって、猛烈面白い!! 単細胞の私は、すでに次を考えてドキドキしてます(笑)。
羽端: 私は、レース映像は地上波で見てるので、結果はわかってるといえばわかってる状態で映像を見てましたが、それでも、終盤まで、誰が勝つのかわからなかった!
[STG]“レースはスタートだけが面白い。その後はオマケだ”と分かったようなことを言ってましたが、今年はそのお約束がガラガラと音を立てて崩れている(笑)。
羽端: 私は、これはレッドブルの三連勝だと思ってました。ピットストップ、マクラーレンはバトンのミスで──あれはジェンソンが勘違いしたと思うな、自分のピットの場所を?(笑)・・・で、しっかり自分たちのジョブをしたセブ(フェッテルの愛称)とそのクルーが首位になって、そのまま逃げ切る、と。
[STG]バトンは、ステアリングのボタンを見ていたんだそうです。ピットのスピード制限が、予選の100km/hから60km/hに変わったので、それが気になったらしい。でも、それで”決まっちゃった”と思ったけれど違った。
羽端: 「セブvsジェンソン」は、そうやって勝負づけがついたけど、ルイスがあそこまで進出してくるのは、ちょっと読めてなかったような?
[STG]でも、L.ハミルトンは最初からそれを読んでいた。
羽端: お、そうなんだ! あれはタイヤ戦略の違いですかね? セブだけが「ツーストップ」でレースをこなそうとしたのかな?
[STG]L.ハミルトンは、Q3をワンアタックでやめているんです。タイヤを決勝に温存するために。で、土曜日に、「このタイヤをうまく使えば、レース終盤に面白いいことが起きるかも」と予言までしています。
羽端: お〜!!
[STG]その辺りは、こちら(マクラーレンの土曜日リリース)をご覧ください(笑)。
羽端: なるほどね、いやあ、レースって単純じゃないなあ! そのタイヤですが、レッドブルでいうと、マークは三回換えてるのでは?
[STG]力のあるレッドブルの常套手段なら2回、でも、M.ウェバーは、18番手のスタートで、タイヤを酷使することがわかっていた。マレーシアの可夢偉戦で懲りた(笑)。
羽端: そうか! あと、チームラジオからのネタでは、これは放送で流れたんだけど、終盤、ピットからセブに対して、「もう換えないぞ、そのまま行け!」と。あれは、ルイスがもし”来て”なかったら、セブも三回タイヤを換えたのかもしれないけど?
[STG]流れとしては、そうかも。しかし、これは、ある意味、経験の浅いレッドブルの力不足、という言い方もできるかもしれないですね。ロス・ブロウンは、シューマッハを10周でピットに呼んでいる。あれは見事、という声がありました。
羽端: このコース、そしてこのレースの場合、「最速のプラン」は、おそらく「スリーストップ」なんでしょうね。そのタクティクスを淡々と実行したルイスに、最後にプレゼントがあった。
[STG]結果としては、そういうことになりましたね。ピレリの大将(ポール・ヘンベリー・テクニカル・ディレクター)も、「最後まで分からなかった」と言ってます。
羽端: もうひとつ、セブを抜いたときのルイスのパッシング・シーンは、このときの二台、ルイスとセブでは、タイヤの状態が違うということがよくわかる感じでよかったです。
[STG]L.ハミルトンは、「抜いたのは予想と違うところだった」と言ってますね。
羽端: あれって、コーナーの立ち上がりみたいなトコでしたよね。タイヤが”きびしかった”セブは、ラインを選べない。一方、フレッシュ・タイヤのルイスは、前のセブを見ながら、自由なラインで加速できる。
[STG]ということだと思います。
羽端: ふーん、タイヤが違うと、こうなんだ! そんなことを、われわれにもわからせてくれるようなシーンでね。なかなか興味深い瞬間でした。
[STG]そうそう、専門家にしか分からないレースは、面白さが伝わらない。実は、前回のマレーシアで、コーナーで写真を撮っている仲間が、”すごく面白かった”といったら、プレスルームでデータとにらめっこしていた連中から、”面白くなかったと言われちゃいました”と。コーナーで事情が分からなくて観ている目の方が、正しいと思うけど(笑)。
羽端: それと、このレースは、ルイス・ハミルトンというドライバーは「速くて強い」! このことを、あらためて示してくれたと思います。さすがだな、と・・・。もちろん、マクラーレンは速くなったでしょうが、それ以上に、ルイスが偉い、と。
[STG]元々”腕”は群を抜いている。でも速すぎてタイヤが追いつかない、という状況が何度かあったけど、さらに成長した、ということでしょうね。
羽端: その「追いつかない」という表現はいいですね! ルイスの”らしさ”を見事に語ってる。このレース、マクラーレンとレッドブルの差が縮まったというより、ルイスのスキルに拍手したいです。
[STG]賛成!!
ホットライン2011 round3 中国GP 2/2に続く。