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鬼の居ぬ間

ブロウンGPの快進撃中だ。バーレーンでは、今年初の完全ドライコンディションでも速いことを証明した。しかし、忘れてはならないのは、その裏に、フェラーリとマクラーレン、ルノー、そしてBMWザウバーの”不調”がある、ということだ。不調組は、そっくりそのままKERS組である。

◆「三味線」の理由
今年のシーズンは、車両規則が大きく変わって始まった。「F1GPの歴史始まって以来、最大の車両規則変更」と表現するエンジニアもいた。そこで思い出しておきたいのは、シーズンオフのマシン開発の【目標設定】のことである。

勝負に勝つためには、マシンレベルを高いところに設定すべきだが、高すぎると耐久信頼性に難が出る。その結果、どのチームも設定レベルは概ね同じになるのだが、考え方の違いから、序盤戦でのポテンシャルが二つに分かれる傾向がある。信頼性を重視した慎重型と、ポテンシャルを重視した攻撃型だ。

KERSを使うかどうかに限って言えば、ブロウン、トヨタは後者に当たる。マクラーレンとフェラーリ、それにBMWザウバーは、積極的な前者型だ。現状では十分な能力を発揮していないKERSを選択して、レースを通して熟成していく構えだ。

また、ライバルと想定するチームの目標設定を予測しておくとことも重要だ。

通常そうしてお互いの”読み合い”が行なわれ、シーズンオフのテストのデータ、特にタイムは相手を攪乱させるための材料に使われる。日本語風に「三味線を弾く」というのはこのことだ。実力を見せないことで、ライバルの目標設定の観察を避けているのである。

◆シーズン序盤の意味
空力規則が大きく変わり、タイヤもスリックに変更された。そして、さらに大きいのがKERSの登場である。ブレーキのエネルギーを回生して使うという”未来のシステム”は、FIA(国際自動車連盟)が肝入りアイテムとして投じた。肝入りにはふたつの理由がある。
ひとつは、当然、”F1が経済状況や環境を無視していない”というアピールのため。こうした気遣いにおいて、FIAは徹底的だ。そしてもうひとつも徹底姿勢が伺える。競争を均衡化して、レースを面白くする、という視点である。

結果的に、KERSの装着を『自由』としたところがキモになった。プライベートチーム、(そうブラウンのような)は、KERSを積まないことに決め、反対にメーカー系チームもしくは、メーカーに深く関連しているチームは、ふたつの理由でKERS装着の方向にある。

ひとつは、ブランド・イメージとして、時流を掌握していることをアピールをしたいためと、義務づけられる時に向けての先行開発のためだ。だから現状で不利と分かっていても彼らはKERSを選ぶのである。この”気分”をマックス・モズレーFIA会長はお見通しで、KERSの規則を押し込んだのかもしれない。KERSを積んだ組は遅くなり、そうでない組は身軽で速い。今年のF1が、序盤戦で特に拮抗した接近戦になっているのは、ある意味、モズレー会長の思惑通りか?

◆鬼の居ぬ間
そして、そうした高度なテクノロジーが入ったとき、F1は、勢力図が変わることが多いのである。しかし、それはしばらくすると逆転する。高度なテクノロジー(今年で言えばKERS)が、やがて熟成されて力を発揮するようになるからだ。KERSなしで押し通しているチームは、伸びしろがないことから、結果として後退することになる。

KERS=鬼がいないうちに洗濯をしてしまう。ブロウンGPはそれを巧みに利用している。同時に、トヨタのチャンスは、KERS組が苦労している間、という見方もできてくる。

鬼は、KERSだけではない。空力の規制と、スリックタイヤもそこに入る。これらを”目標設定”に到達するように完璧になし遂げたとき、フェラーリとマクラーレンがどこまで速くなるか、そこに注目だ。すでに、マッサがスペインの予選で4位を奪った。KERS搭載を押し通しているフェラーリとマクラーレンが不気味である。

【STINGER / Yamaguchi Masami】
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