ホンダ復帰!?
1980年代のF1GPで、圧倒的な強さを誇ったホンダの1500ccターボ。2014年からのエンジン規定は、1600ccのターボになる。ここで出なくて、いつ出るのか、という声が聞こえる。
◆日本GP 5年契約へのモチベーション
3月2日に鈴鹿サーキットで、日本GPの開催延長が発表された。まずは、春からめでたいことだが、その事実だけでなく、想像力に火がついて、ますます嬉しくなった、というお話。
まず、ファンとして、2014年から5年契約の発表をしたモビリティランドにおめでとうとありがとうを言いたい。契約に至るまでの、それこそ契約金に始まるいろいろ詳しい裏舞台を知らない我々外野は、決定を喜べばいいだけだが、契約にこぎ着けるまでには、我々の想像を大きく超えた様々な苦労があったはず。
3月2日午前11時から始まった会見に参加して、その思いを強くした。鈴鹿サーキットのピット上にあるスイートルームの壇上で、”継続”の発表声明を読み上げたモビリティランドの増田浩社長の声は、はつらつとして、高い山を乗り超えた喜びと達成感とともに、安堵感を伝えるものだった。そうした苦労をしても5年契約を実現したかった、ということを感じさせるトーンだったのだが、そうなると、その理由が気になるのである。
鈴鹿サーキットとしては、まず今年で25回目という日本グランプリで四半世紀の歴史を刻んだ舞台を残したい、という思いがまずあったはずだ。そこがベースになった上で、次に脳裏をめぐったのは、鈴鹿サーキットを運営する株式会社モビリティランドは、本田技研の親族会社だということだ。富士スピードウェイを買い取ったトヨタと少し違って、ホンダの創始者・本田宗一郎さんが、直々に土地探しから開拓したサーキットである。日本GPを継続しておきたい理由が、そのホンダにもあったのである。
ここで思い出すのは、2月8日に青山のウェルカムプラザで行なわれたホンダの2013年モータースポーツ発表会で、”F1はどうするんですか?”という質問に対して伊東孝紳社長が答えたコメントだ。
伊東孝紳社長は、「勉強中です」と答えた。
伊東社長のこの答えは、”当然、やります”と聞こえた。これまでなら、”F1の規則は、我々の目指す方向と違うので”というような的外れな答えになっていた。しかし、それではなかった。否定しなかったのではなく、肯定した、と受け取れた。
もともとF1エンジンは、与えられた燃料をいかに効率よく燃やすか、という点で、エコ・エンジンと同じ。燃費がよければ搭載燃料を少なくできて、マシンが軽くなって相対的ポテンシャルがアップする。モーター・レーシング用のエンジンは、実はエコであることを、自動車メーカーは世間に伝えるべきなのである。
したがって、どんな規則であろうと、ホンダにかぎらず自動車メーカーは、F1を中心とするモーター・レーシングに参戦しなければならないのだが、それはさておき。
◆”勉強中”のシナリオ
復帰したときに日本GPがあるかないかでは、エンジン・サプライヤーとして参加するホンダにとって、モチベーションに大きな違いが出るのは当然のこと。それが5年契約の原動力になったのではないか、ということも、これまたすんなりとつながるのである。つまり、ホンダは復帰する、という解釈ができる。
問題は、いつからか、ということになる。これも伊東社長が、明確に表現している。いや、伊東孝紳社長は、いつからどころか、”出ます”とは一言も言ってない。しかし、”勉強しています”という言葉に、その答えが隠れている。
勉強は、一夜漬けではダメなことは誰でも知っている。ハイクォリティのF1であることは当然、伊東社長もお見通し。ならば、”勉強の時間”は必要で、エンジン規定ががらりと変わって1600ccのターボになる来年からの参戦は、若干の無理がある。しっかり勉強して、2015年の参戦を目指す、ってことではないか。
もちろん、”勉強”のためには、現場検証も必要になる。今年のF1会場には、”あれれ、どこかで見たことがある人だなぁ”という関係者にたくさん出会えそうだ。すでにマクラーレンのテクノロジーセンターでホンダ関係者を見かけたという情報もある。
ところで、3月2日の鈴鹿サーキット・ファン感謝デーで、マクラーレン・ホンダと1500ccターボを積んだウィリアムズ・ホンダに初対面したスティングくんは、ホンダの復帰をワクワクして待っている。もちろん、スティングくんの部屋で、そういう方々をこっそり紹介する予定。お楽しみに。
その2に続く。
[STINGER]山口正己