F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集 F1 STINGER 【スティンガー】 > F1ニュース >   ホンダ緊急記者会見全録(その2 / 質疑応答編)

F1ニュース F1の動向が一目でわかる新着ニュースや最新トピックを随時更新。

ホンダ緊急記者会見全録(その2 / 質疑応答編)

◆ダウンサイズ・エンジンの技術は、必ずや後の量産車に影響を与える

司会(ホンダ広報・長井氏/以下、司会):今回の質疑応答は、伊東(孝紳社長)、マクラーレンのマーティン・ウイットマーシュさん、そして、技術研究所・専務の新井(ホンダ技術研究所取締役専務執行役員)がお答えを致します。新井は、F1を含めた、四輪レースの研究所のチーフを務めております。

—-伊東さんに質問ですが、F1からのフィードバック、市販車からのフィードバックの双方があり、後者では、ハイブリッド技術は日本は世界的にも優れていると思いますが、そのへんの比率といいますか、どのくらいのことを考えているかということと、これ(参戦)によって、日本の工業界が元気になるということに対して、どのくらい考えておられるかということ。ウイットマーシュさんには、同じように、日本の技術に関して、どのくらい期待をしているか、あらためてお伺いします。
伊東孝紳社長(以下、伊東社長):レースから量産車へ、また、量産車からレースへの比率は、むずかしい質問で、お答えのしようがないというしかないですね(笑)。ただ、おのおの、量産車のハイブリッドに関しては、相当幅広く、いま、やっておりますし、もうじき、いろいろなタイプのクルマが出て来ると思います。ここに至るまでに、量産に至る信頼性ですとか、燃費効果、走りのおもしろさといったことに就いては、相当積み重ねてきたということがあります。これが少しでも、レースにおいて役立つかどうかということは、非常に、関心を持ったテーマであります。

また、レースからということで言いますと、ダウンサイズ(エンジン)でターボ、また、ターボから回生するというような技術というものは、間違いなくこれから、量産車にも影響を与えていく技術であろうと、私は期待を持っております。
かねてより、そういう、F1においても、効率という軸が大きく出て、技術進化が大きく図れるような時には、私どもは十分にチャンレンジする価値があるし、また、積極的にそこに加わっていくことで、われわれも、レースを、正直言うと楽しみにしたい。また、技術も量産車に波及させたい。

また、いまご質問にあったように、それはいま、日本は非常に得意としている技術分野であると思うし、こういう活動をすることによって、日本全体が元気になっていくということは、ぼくは期待したい……というふうに思います。

130516hondamcin002 (2).jpgマーティン・ウィットマーシュ(以下、ウィットマーシュ):私の方には、ホンダに、どういった期待を抱いているのかという質問をいただきました。たしかにホンダは、エンジニアリングでは卓越した知識を持っています。そして、技術に対する思い入れということでは、とても強いものがあるというように、私も感じております。そして最近、ホンダといろいろなコミュニケーションを図るに応じて、真の意味での、モーター・レーシングに対しての熱意を強く持っているということを、再度確認しました。以前に、F1に(ホンダが)参戦していたときには、私も関わっていましたが、そのときにも同じような印象を持っていました。

そして、ご存じのように、F1においても、昨今はさらなる低燃費化ということが追い求められています。それは社会のひとつの流れとなっており、残念ながら、F1の世界においては、それ(低燃費化)を採用するのが少し遅かったのではないかなというのが私見です。いま、社会が求めている自動車というのは、低燃費化を始めとして、社会にやさしいということが求められております。


そして、それを実現するための技術というものを、ホンダは持っています。たとえば、ダウンサイズされた過給エンジン、ハイブリッドの要素、それらの技術面において卓越しているのがホンダです。そういった意味でも、ホンダには大いに期待しています。

私がマクラーレンに身を置いてから今回までの”旅路”の中でも、最もワクワクするアドベンチャーになると考えておりますので、今後、両社のパートナーシップのさらなる発展を、とても楽しみにしています。

◆”環境エンジン”の技術はレーシング・エンジンにも確実に有効
130516hondamcin002 (3).jpg—新井さんにもお伺いします。日本ではあまり理解されていませんが、与えられた燃料を、どう効率よく燃やすかということでは、エコ・エンジンもレース用のエンジンもまったく同じだと思いますが、そのへんはどうお考えか。
新井康久専務執行役員(以下、新井専務) :エコ・エンジンとレーシング・エンジンとは同じではないかというのは、まったくその通りでして、今回の、新しいF1のレギュレーションというのは、どれだけ少ないガソリンで、どれだけ速く走るか。まさしく、環境と”ファン”(トゥ・ドライブ)の性能を両立させるというか、環境エンジンをつくるのと、同じようなコンセプトだと理解しております。

ただ、チャレンジングとしては、出力と効率を、一番高いところに持って行かなくてはならないので、開発としては、非常に、これまでにないようなものになるとは思っております。


—-社員のモチベーションというか、一種の”大会社病”的なことが社内にあるとの説もありました。ホンダに入社する理由として、かつては、”F1をやっているから”という
理由が多かったはずですが、最近では、”大きい会社だから”というような状況になったと伺っていますが、それは最近、変わってきているのでしょうか?
伊藤社長まあ、F1をやってるから(ホンダに)入るというような人は、たしかに、少なくなっているかもしれない(笑)。でも、それに(会社の側が)甘んじちゃいけない。やっぱり、おもしろい会社、なんか、ワクワクする会社──。ないしは、日本全体がそのようにならないといけない、また、そう(いう方向へ)持っていきたい。……というふうには、私も常々思ってますし、これから、そういうふうな(会社=ホンダの)姿を見て、少しでも、そういう企業活動に参加したいという若い諸君が増えるよう、切に望んでますね。

—-今回、参戦に関しての費用といいますか、コスト。また、チャレンジであると思いますが、勝算というのはどのくらいあるのでしょうか。
伊藤社長費用は、それはやっぱり、言えないですね(笑)。隠したいというわけじゃないですが、言えるような内容でもないということで、ご容赦願いたいですが。……まず、何を期待して、この参戦を考えたのかというと、やっぱり”勝つ”ことなんですよね。レースは”一番”(勝つ)に意味があります。これは、われわれの過去、F1の活動、ほかのレースでもそうですが、ずーっと味わってきた歴史、経験、それから考えますと、レースは勝たなきゃいけない。今回は、相当強く、それを意識しながら、活動を続けたいと思いますね。

で、今回、ここに至る経緯というのも、いろいろ関係するところもありますので、やはり、そんなにすぐに、トントントンと行くわけではありませんよね。ワタクシが、いろいろなところで勉強中というか、まさに(勉強の)真っ最中でありました。ようやく、ここに来て、こういう発表ができたというのは、タイミング的にも、内容的にも、素晴らしいことだと思います。非常に、私は喜んでいます! 
◆F1は、態勢のすべてが一流で、さらに、それらが最高に機能したときに、初めて勝てるものだ!

130516hondamcin002 (1).jpg
—-伊東さんにお伺いします。第三期のときには、エンジンに限ってみましても、迷走の連続だったように思います。そして、撤退にあたって、少なからず、混乱を来していたと思いますが、そのあたりの総括と、それを踏まえて、今回の参戦が、どう違うのか。あともうひとつは、取締役全員の承認は得られたのかということ。以上、二点です。
伊藤社長はい、このような重要案件ですので、社内も、十分に議論を尽くしました。当然、取締役会からも、全員の承認をいただいています。第三期、前回の参戦に関しては、総括をどうするかというのは、これはいろいろな(立場の)方がいらっしゃるので、社を代表してというのは言いにくいんですけど、私なりの見方をすると、F1を、エンジンだけじゃなくて(参戦態勢の)全体をマネージメントするというのは、とても大変なことだと思う。それがホントに、正直な私の感想ですね。

私ども(ホンダ)の方は、どちらかというと、エンジンは得意である、と。ただ、F1に”勝つ”ためには、もちろん、高出力のエンジン、それから、とても素性のいいシャシー、そしてそれを運転する素晴らしいドライバー、それを支える素晴らしいメカニック、(チームの)全体をオーガナイズする素晴らしい監督。これらのすべてが一流で、さらに(それらが全部)最高状態であるときしか勝てない! ……というふうに、私は印象を持っています。

そういった意味で、第三期のチャレンジは、チャレンジという意味では最高のチャレンジでしたが、まあ正直言うと、ほんとうの実力という意味では、F1を──車体もそうだし、チームを運営するということに関しては、やはり、われわれはもっと謙虚に、学ぶべきところは学びたい、というのが正直な気持ちです。

ただ、エンジン技術というものに関しては、これは負けるところはないと、ずっと自負を持ち続けています。そういったことで言いますと、この、今回のマクラーレンとホンダというのは、ある理想の参戦形態かなというふうに、私は思っていて、得意領域を、お互いに”持ち合い”ながら、つねに勝利を勝ち取っていくというのは、いま、私が考える理想の形態だと思っていますし、これはやはり、長く続けたいという気持でおります。

ウイットマーシュさんに質問です。来年の一年間は、現行と同じメルセデス・エンジンを使うと思いますが、そのあたりで、メルセデスとの関係がむずかしくなったりはしないんでしょうか?
ウィットマーシュ:F1というのは、大変チャレンジングなレーシング・スポーツです。商業的にも、技術的にも、またスポーツとしても、そして、パートナーシップのマネージメントにしても、大変厳しいということが言えます。現在の(マクラーレンの)パートナー(メルセデス)に対しても、いつも敬意を持って、2014年のシーズンも、いままで通り、プロとして、ともに闘っていきます。そして、今後のわが社の計画においては、そのあとの、ホンダとのパートナーシップを大変楽しみにしております。

photo by STINGER
【STINGER/Hiroaki Iemura】
記事が役に立ったなと思ったらシェアを!

F1 最新レースデータ

F1 ポイント・ランキング

F1ドライバーズ・ポイント
1位マックス・フェルスタッペン491ポイント"
2位セルジオ・ペレス240ポイント
3位ルイス・ハミルトン220ポイント
F1 コンストラクターズ・ポイント
1位レッドブル・レーシング860ポイント
2位メルセデス409ポイント
3位フェラーリ406ポイント

PARTNER
[協賛・協力企業]

  • CLOVER