開幕戦の見所のおさらい
ただし、レッドブルは、走りさえすれば、即座にそれなり(バーレーンのタイムで言うと1分36秒辺りの去年のレースペース)をマークしていることも忘れてはならない。冷却の問題が解決すれば、レッドブルが強さを復活させることは難しいことではない。開幕戦でそれが無理でも、少なくともヨーロッパ・ラウンドが始まる5月には、レッドブルは甦っているはずだ。
そして、開幕戦のスケジュール開始を翌日に控えた木曜日の夕方6時。不調のはずならどたばたしているはずのレッドブルのピットガレージが、ひっそりとしていたのが不気味だった。すでに作業が終わっているムード。いや、もしかして、諦めの境地? どちらなのか、明日になれば何かが見える。
メルセデスのパーワーユニットの供給を受けるチームとして、最初にマクラーレン、続いてフォース・インディアが注目されていたが、そこに割り込んできたのがウィリアムズだった。
今年のように、大きな規則変革が行なわれると、レースそのものの組み立ての機微が分かっているチームが強い。歴史で言えば、1975年に誕生したウィリアムズは、フェラーリとマクラーレンに続く老舗。マクラーレンが、ご本家からマクラーレンを買い取ったのが1980年であることを考えると、ウィリアムズは、フェラーリに次ぐ歴史を持っていることになる。
そのフェラーリからフェリペ・マッサを迎え、マルティーニ・カラーで美しく着飾ったウィリアムズは、隠れ本命として一躍注目を集めている。
フェリペ・マッサの担当になった日本人の白幡メカニックは、”今年は大丈夫です”と深い言葉をニコヤカな表情でコメントした。
去年、6秒しか使えなかった回生エネルギーが30秒も使える。使えるということは、そこで発生する熱もそれだけ増える、ということであり、ルノー勢の問題は、ターボ・エンジンではなく、回生エネルギー発生装置サイドにあるわけだ。
ルノー・エンジン使用チームの中でもケータハムだけがそれなりの距離を走れている、という事実は、裏を返せば、ケータハムが回生エネルギーを規則内で充分に活かすレベルにない、とも言える。
そもそもターボエンジン単体なら、ルノー勢はF1を含む経験やノウハウは潤沢に持っているはず。これほど大きなエネルギーを発生する、つまり、熱の問題が大きくなるシステムの冷却の問
題は、レッドブル側、もっと言えばエイドリアン・ニューウェイがコントロールできない領域まで巨大化している、という観方もできるわけだ。
ゆっくり走れば完走できるのだが、いずれにしても、熱の問題をどう解決するかを考えなければならないほどに、F1のエネルギー回生システムのレベルは高い、と言えそうだ。
パワーユニットの問題が話題を独占しているが、そちらが安定したときになにが起きるかといえば、ターボのパワーコントロールが挙げられる。ターボ・エンジンは、扱いやすくなっているとはいえ、強大なパワーを発生することで知られる。さらに、そこに回生エネルギーが加わると、発生パワーをいかにしてタイヤに伝えられるかが、ドライバーはもちろん、チームのエンジニアの最大の課題になってくる。
その上、ピレリ・タイヤが固めのコンパウンドを用意してグリップレベルが下がる方向にあり、さらに空力の規定でダウンフォースが減少し、ここでもグリップ・レベルが下がるから、コントロールはさらに難しくなる。
特に低速からの立ち上がり部分ではこれが顕著になる。ヘレスのテストでも、低速で通過するシケインからの立ち上がり部分でマシンが暴れる場面が、特にメルセデス・エンジン勢に多く見られた。
さて、明日から始まるセッションで、勢力図がどうなっているのだろうか。
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team(メルセデス・エンジン)
Infiniti Red Bull Racing / Getty Images(RB10)
WILLIAMS F1 TEAM(FW36)
CATERHAM F1 TEAM / LAT Photographic(CT05)