F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集 F1 STINGER 【スティンガー】 > F1ニュース >   開幕戦の見所のおさらい

F1ニュース F1の動向が一目でわかる新着ニュースや最新トピックを随時更新。

開幕戦の見所のおさらい

140313kmmo001 (1).jpg

明日から始まる開幕戦。セッション開始を前に、もう一度、流れを復習しておく。

勝つのはどこの誰?
まずは、シーズン開幕を前に、スペインのヘレス・サーキットで1回、バーレーンのザヒール・サーキットで2回の合計3回延べ12日間行なわれた合同テストで明らかになったのは、”メルセデス勢が強いことと、ルノー勢が苦しいこと”だった。

もう少し細かく観察すると、以下の5つが見えてくる。

1) メルセデス・エンジン勢の圧倒的優位
140313kmmo001 (3).jpg今年から採用される”パワーユニット”は、メルセデス好調、ルノー不調、フェラーリまずまず、という状況である。ルノー勢は、走り込みの段階まで行けておらず、特にレッドブルが頭を抱える状況にある。理由の多くは”冷却が追いつかない”模様。しかし、だとすると、ルノーのパワーユニットが劣っているのではなく、むしろパワーがあることで、回生システムが発生する熱の処理ができないチーム側の問題かもしれない。

そう考えると、実はメルセデスよりルノーが強力なパワーユニットかもしれず、シーズンが進んで、冷却のテーマが克服できれば、勢力図が一転する可能性もある。

2)  メルセデスAMGチームが最有力
メルセデスのパワーユニット搭載チームのも中でも、ヘレスで行なわれた最初の合同テスト初日から、メルセデスAMGチーム優位が明らかだった。第1回テスト2日目にフロントウィング脱落のトラブルはあったが、これは言ってみればシェイクダウン・テストにありがちな、つまり、つぶして行けるトラブルだった。

テストを通じて、常にメルセデスが上位のタイムを記録し、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが走り込んだ距離は4973km。二人のどちらかがチャンピオン、という気の早い声もある。

3) レッドブルが大不振?!
140313kmmo001 (4).jpg4年連続チャンピオンのレッドブルとセバスチャン・フェッテルに黄色信号が点滅している。冷却の問題に見舞われて、メルセデスの半分も走れていない。シミュレーションが高度に進化していても、レースは実際に走るわけで、実際に走らないことには、最終的な煮詰めができてこない。

ただし、レッドブルは、走りさえすれば、即座にそれなり(バーレーンのタイムで言うと1分36秒辺りの去年のレースペース)をマークしていることも忘れてはならない。冷却の問題が解決すれば、レッドブルが強さを復活させることは難しいことではない。開幕戦でそれが無理でも、少なくともヨーロッパ・ラウンドが始まる5月には、レッドブルは甦っているはずだ。

そして、開幕戦のスケジュール開始を翌日に控えた木曜日の夕方6時。不調のはずならどたばたしているはずのレッドブルのピットガレージが、ひっそりとしていたのが不気味だった。すでに作業が終わっているムード。いや、もしかして、諦めの境地? どちらなのか、明日になれば何かが見える。


4) ウィリアムズの大躍進

140313kmmo001 (5).jpgメルセデスのパーワーユニットの供給を受けるチームとして、最初にマクラーレン、続いてフォース・インディアが注目されていたが、そこに割り込んできたのがウィリアムズだった。

今年のように、大きな規則変革が行なわれると、レースそのものの組み立ての機微が分かっているチームが強い。歴史で言えば、1975年に誕生したウィリアムズは、フェラーリとマクラーレンに続く老舗。マクラーレンが、ご本家からマクラーレンを買い取ったのが1980年であることを考えると、ウィリアムズは、フェラーリに次ぐ歴史を持っていることになる。

そのフェラーリからフェリペ・マッサを迎え、マルティーニ・カラーで美しく着飾ったウィリアムズは、隠れ本命として一躍注目を集めている。

フェリペ・マッサの担当になった日本人の白幡メカニックは、”今年は大丈夫です”と深い言葉をニコヤカな表情でコメントした。


ルノー勢の問題は、ターボではなく、エネルギー回生ユニットか

去年、6秒しか使えなかった回生エネルギーが30秒も使える。使えるということは、そこで発生する熱もそれだけ増える、ということであり、ルノー勢の問題は、ターボ・エンジンではなく、回生エネルギー発生装置サイドにあるわけだ。

140313kmmo001 (2).jpgルノー・エンジン使用チームの中でもケータハムだけがそれなりの距離を走れている、という事実は、裏を返せば、ケータハムが回生エネルギーを規則内で充分に活かすレベルにない、とも言える。

そもそもターボエンジン単体なら、ルノー勢はF1を含む経験やノウハウは潤沢に持っているはず。これほど大きなエネルギーを発生する、つまり、熱の問題が大きくなるシステムの冷却の問
題は、レッドブル側、もっと言えばエイドリアン・ニューウェイがコントロールできない領域まで巨大化している、という観方もできるわけだ。

ゆっくり走れば完走できるのだが、いずれにしても、熱の問題をどう解決するかを考えなければならないほどに、F1のエネルギー回生システムのレベルは高い、と言えそうだ。


ターボラグは簡単にコントロールできない

パワーユニットの問題が話題を独占しているが、そちらが安定したときになにが起きるかといえば、ターボのパワーコントロールが挙げられる。ターボ・エンジンは、扱いやすくなっているとはいえ、強大なパワーを発生することで知られる。さらに、そこに回生エネルギーが加わると、発生パワーをいかにしてタイヤに伝えられるかが、ドライバーはもちろん、チームのエンジニアの最大の課題になってくる。

その上、ピレリ・タイヤが固めのコンパウンドを用意してグリップレベルが下がる方向にあり、さらに空力の規定でダウンフォースが減少し、ここでもグリップ・レベルが下がるから、コントロールはさらに難しくなる。

特に低速からの立ち上がり部分ではこれが顕著になる。ヘレスのテストでも、低速で通過するシケインからの立ち上がり部分でマシンが暴れる場面が、特にメルセデス・エンジン勢に多く見られた。

さて、明日から始まるセッションで、勢力図がどうなっているのだろうか。


[STINGER]山口正己

Photos by
Jiri Krenek(コントロールライン)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team(メルセデス・エンジン)
Infiniti Red Bull Racing / Getty Images(RB10)
WILLIAMS F1 TEAM(FW36)
CATERHAM F1 TEAM / LAT Photographic(CT05)
記事が役に立ったなと思ったらシェアを!

F1 最新レースデータ

F1 ポイント・ランキング

F1ドライバーズ・ポイント
1位マックス・フェルスタッペン491ポイント"
2位セルジオ・ペレス240ポイント
3位ルイス・ハミルトン220ポイント
F1 コンストラクターズ・ポイント
1位レッドブル・レーシング860ポイント
2位メルセデス409ポイント
3位フェラーリ406ポイント

PARTNER
[協賛・協力企業]

  • CLOVER