可夢偉会見全録【アブダビGP(木)】 「次に来る人につなげたい」
◆連絡が来たのは月曜日
・・・・改めて、アブダビGPに出場できるのは、驚きですか?
可夢偉:ビックリですねぇ。かなり。
・・・・オースチンのアメリカGPでは、こういう展開は?
可夢偉:想像しなかったですね、正直なところ。
・・・・チームが募金を募るニュースを知ったときは?
可夢偉:すごいな、と。あのターゲットまで行くのはきついんじゃないかな、と正直思っていたし、実際、ターゲットにいく(届く)のはきつかったし。まぁ、やり方としては、すごいな、と。
※クラウド・ファウンデーションの目標額は、2.350万ポンド(約4億2,768万円)
・・・・結果的にターゲットには達しなかったけど、出場できた。
可夢偉:ここに来ているし、そこまでの勇気とチャレンジは、多分素晴らしいと思うし。
・・・・出場することについて具体的なコンタクトがあったのは?
可夢偉:月曜日です。もてぎのスーパーGT(最終戦)に行っていて、呑気に帰って来て、朝起きたら、連絡がきて、走るみたいだけど走る? と。
・・・・以前は、ちゃんとした体勢でなければ、万が一出場することがあっても、というようなニュアンスでしたが。
可夢偉:まぁ、そうなんですけど、いろいろな状況で、来年レースをするのはきついと思うし、来年レースするのがきついということは、今後レースをすることもきついということもあるから、もしかするとこれがF1レース最後になるかもしれない、ということを踏まえて、これは思う存分、レースをしておくべきかな、と。
・・・・来年はキツイ。
可夢偉:そう、シートがないですから、実際。
・・・・チームから連絡が来ると?
可夢偉:思っていなかったです。
・・・・お金目的ではなくて連絡が来たことは嬉しい。
可夢偉:そうですね。まぁ、あとは、最終戦の記念撮影にも参加できるということは、終わりよければ、ともいうし、光栄ではあるじゃないですか。
◆エンジニア不在も、「ちょっと面白い」
・・・・すでにガレージでクルマは見た?
可夢偉:(頷く。)
・・・・ソチよりは、ずっとまし?
可夢偉:見た目はすごいことになってますけど。ステッカーだらけで(笑)。エンジンカウルも、すごいことになってますね。ステッカーをベタベタと貼り合わせたようになっていたので。
・・・・クルマは新しいものが用意されていた?
可夢偉:そうそう。それを塗る時間がなかったんだと思います。
・・・・他の空力パーツやパッケージ全体は?
可夢偉:マーカスが乗っていたやつです。
・・・・レースエンジニアは?
可夢偉:居るんですけど、来年は違うチームに決まっているんです。子供が生まれるみたいで。
・・・・来てない?
可夢偉:ええ。今回は、ニコラというマーカスのパフォーマンス・エンジニアだった。
・・・・ファクトリーとデータの共有がないというのは、初めて?
可夢偉:まぁ、ちょっと昔に戻ってみた感覚、ですかね。
・・・・ローカルでやる、というのは、マカオのF3見たいな感じですね。
可夢偉:ちょっと面白いじゃないですか(笑)。
・・・・ファクトリーにはほとんど人がいない、と聞いたんだけど、レースウィークエンドは?
可夢偉:多少はいるみたいです。
・・・・でも、そこにいるのはシミュレーションやったりする人たちではなくて?
可夢偉:その人たちがこっちにきちゃったので。
・・・・本来なら、ファクトリーにいる人が来ている。
可夢偉:そう、その人たちが、クルマの状況とかがわかるので、エンジニアたちが来れない分をそっちで補おう、と。
・・・・通常より人は少ない?
可夢偉:少ないですね。兼任が多いですね。これで1台くらい、言わしたい(やっつけたい)な。
・・・・ここで走ると75レース目のキリ番です。
可夢偉:75ってキリが良いんですか?
・・・・それより、100行ってほしいです(笑)。
可夢偉:あと2年くらい要りますよ。きついなぁ、2年。
・・・・これまでのレースで一番厳しいでしょ?
可夢偉:実際には厳しいですけど、まぁ。
・・・・うまくいっちゃったらどうします?
可夢偉:喜んでやりますよ。
◆ホンダへのアピール
・・・・アメリカでホンダへのアピールをしたわけですが、その後、特に進展がない状況だと思いますが、ホンダと同じ日本人としてどんな気持ちですか?
可夢偉:う〜ん、(言葉を選びながら)
どうしたらいいんですかね。レースドライバーじゃないし、難しいところで、ボクが、こう、なにを言ったところで、なかなか社内的にいろいろな考え方の人がいると思うんで、そんな簡単じゃないなということがよくわかったんで、まぁ、できる限り自分の中で、可能性をつかめるように努力して、その結果、どうなるかな、という感じではあると思います。
どうしたらいいんですかね。レースドライバーじゃないし、難しいところで、ボクが、こう、なにを言ったところで、なかなか社内的にいろいろな考え方の人がいると思うんで、そんな簡単じゃないなということがよくわかったんで、まぁ、できる限り自分の中で、可能性をつかめるように努力して、その結果、どうなるかな、という感じではあると思います。
・・・・それもあきらめずに。
可夢偉:もちろん。
・・・・なにかお手伝いできれば、と。
可夢偉:ええ。
・・・・さっき、”最後のレースかも“、と言っていたけれど、もちろん、まだF1で走りたい気持ちはあるわけですよね。
可夢偉:でも、来年乗らなかったらボクは29歳でしょ、再来年30でしょ。30のオッサンが帰ってくる、といっても17とか18歳の若い子がレースしているところに入るというのは、けっこう現実的に、その歳でF1に戻ってくるというのはかなり何かが無ければまず戻ってこれないと思うし。
・・・・他のカテゴリーで実績を積んで、というのは、プラス材料には?
可夢偉:ならないと思います。逆に、なんのカテゴリーがなるのかな、と。GP2でも(フェリペ・)ナッセがあんなところでシートつかんで。
・・・・20ミリオンには勝てないですね。
可夢偉:そういうことです。
◆日本は厳しい状況にいるけど、やり残している
・・・・日本でF1をサポートできるといったら、日本の自動車メーカーくらいしかないわけじゃないですか。
可夢偉:まぁ、ひとつ言えるのは、やっぱり、日本て、結果を残せばおのずと、結果がついてきたかもしれないけれど、そのターゲットが、F1で勝ってチャンピオン争いするくらいの状態に持って行ったらもしかしたたらすごいブームが来るかもしれないですけど、でも問題は、日本てある意味、一時期ブームが来て、モータースポーツのおいしくないところも見えたところにいるから、ある意味、モータースポーツをおいしくないと思っている人たちが、またそこに賭けてくれるか、というと、とてつもない成績を残している人がいないと、多分賭けないと思うし、そこに行けなかったというのは、僕の責任かもしれないし、現状、そういうところに行くには、まずすでに今の状態でサポートが必要になっている、というのは、また違う話だと思うし。
まぁ、日本人が(F1に)来ようと思ったら、今の段階では、メーカーがサポートして、ちゃんと最後まで送り届けて、というところまでやらないと、日本の状態はキツイと思います。例えば、他のドライバーを見ても、小さい頃からずっと同じところ(チームやメーカー)がサポートし続けて、F1にいったらパンと20億準備する、という企業が日本にはないじゃないですか。そこはちょっと闘えない要素でもあるんで。
・・・・今の段階では、来年どうするか、というのは、いろいろ考えているんでしょうけれど、未定?
可夢偉:はい。
・・・・2016年に新しく参入するチームは、一人はベテランがほしい、という考え方もあると思いますが、そこへのアプローチは?
可夢偉:まだ、そんな状態じゃないです。それより現状は、来年どうやってつなぐか、という問題ですから。
・・・・次善の策としては、どこかのチームのサードドライバー?
可夢偉:ですね。気持ちとしては、レースしたいな、というのもあるので、なかなか難しいですよね。
・・・・やっぱりF1にこだわる、というのは、最高峰だから?
可夢偉:そうではなくて、まだ闘えると思うんですけどねぇ。
・・・・やり残した感がある。
可夢偉:そう。そうです。まぁ、それだけです。なんとかそれで、次に来る人たちまでつなげればいいと思います。
photos by
Ryoichi Fukaya(可夢偉)
Honda Motor Co., Ltd. (ホンダのパワーユニット)
(STINGER/Fukaya:まとめ山口正己)