テストでホンダをどう観る?!
いよいよ、2015年シーズンに向けての合同テストが始まった。最も気になるのは、当然、マクラーレンに搭載されるホンダのパワーユニットである。
続々と発表されたニューマシンの写真を見て、それぞれを比較することで面白いことに気がついた方からヒントをもらった。リヤカウルの大きさである。
実は、去年のフェラーリの不振は、シミュレーションの”優先順位の失敗”という声があった。それについては、別項に譲るが、簡単に言うと、空力を最優先してボディ形状を決め、そこに納まるパワーユニット(以下PU)を設計したことで十分なパワーが得られなかった、というものだ。つまり、空力ボディを優先した結果、限られたスペースの中で設計されたエンジンが非力だったという説である。
この説が正しいことを前提にして今年用のF105Tを観察すると面白いことに気がついた。去年の2014Tと比較した下の写真をご覧いただこう。
上が2015年型、下が2014年型。2015年型の方が幾分太って見える。
新旧フェラーリは同じように見えるが、2015年型の方がボディ後部が”太って”見える。つまり、内側の体積が大きくなっている。去年を反省して、PUのスペースユーティリティーを広げたに違いない。
そしてもうひとつ、そのフェラーリとマクラーレンの2015年型の比較が下の写真だ。
ホンダのPUを搭載するマクラーレンのエンジンカウルの方がスリムに見える?!
フェラーリは太らせたが、マクラーレンはそのフェラーリより細く見える。そして、つい先日、ホンダの研究所から聞こえてきた声がある。「パフォーマンスは悪くないらしい。問題は壊れることだ」というものだ。
壊れることは、修復に相応の時間はかかるが、解決に糸口を見いだせる。ならば、パフォーマンスがあって、かつ、小さいスペースにPUが納まっているならば、新井康久代表が「開幕戦に、ちゃんといいグリッドに着きたい」と言っていることは、背伸びではないことになる。
もうひとつ、去年不調だったフェラーリとの比較ではなく、最強PUのメルセデスを搭載した2014年のマクラーレンと今年のマクラーレンの比較をしてみよう。残念ながら、昨年の写真は真俯瞰ではないが、似たようなカットを比較すると、去年より今年の方がスリムに見える。
左が2014年型、右が今年のMP4-30である。角度が違い、カラーリングのせいもあるが、スリムに見えるのはひいき目か。
新井康久代表は、昨年暮のインタビューで、目標設定について尋ねた質問に、「どこに(目標設定を)置けば、勝てるようになるのか、もしくは同等になるのか、というのを決めて目標設定をするわけなので、適当にやっているわけではないです」と答えているが、当然、目標は去年群を抜いていたメルセデスであり、さらに、改善されたフェラーリであり、そしてイルモアからエンジンの切れ者であるマリオ・イリエンを引き込んで格段に進化するはずのルノーもいる。
当面の目標は、”去年のメルセデスを超えるところ”と設定したと見られるが、もう一つ新井代表は、「目標設定をどこにおくのか」という質問に、「そこは、自分たちがどう考えるか、ですよね。信頼性に対して余裕を持った方がいいのかとか、その辺りはチームとして議論の対象になりますし」と答えていた。
この答えが、伝え聞く、”パフォーマンスは悪くないが壊れる”という声に呼応するものだとして想像力を膨らませると、メルセデスより小さいPUで、出力が出ているが、壊れる問題を内包した状況で、ホンダはテストに挑む、という図式が見える。
ヘレスで始まるテストをじっくり観察したい。
photo by FERRARI/McLaren-Honda/[STINGER]2014
[STINGER]山口正己