新井代表会見 1/2 (ホンダF1記者会見)
10日(水)に東京-青山にあるHondaウエルカムプラザ青山で「Honda F1記者会見/McLaren-Honda 2015」がおこなわれ、会見に参加したマクラーレン・ホンダのアロンソとバトンと共に、ホンダF1レーシングの新井康久代表が質疑応答に応じた。
ここでも新井代表は、これまで通りのトーンを貫いたが、状況をより詳しく説明する内容だった。
「われわれのクルマは、パッケージングのポテンシャルは非常に高い。開幕戦、期待していてください!」
◆”開発トークン”については、ホンダは納得している
・・・・エンジン開発に関する問題ですが、紆余曲折の末に、パワーユニットを供給する他の3社(メルセデス、フェラーリ、ルノー)に与えられる開発用のトークンのアベレージというかたち(トークンは去年から参戦している3社に与えられたエンジン開発に必要なポイントのようなもので、ホンダは3社が開幕戦までに残したトークンの平均値分のトークンが与えられる)に落ち着いているようですが、この案は、ホンダとしては了承できるものですか?
新井康久代表(以下、新井):最初は、(新参の我々は)開発ができない、というテクニカル・ディレクションでしたが、最終的に既存の3社の残りトークンの平均値、というふうになりました。われわれは”公平性と透明性”をリクエストしていたので、公平という意味では4社で合意できるレベルになったと思っています。
・・・・しかし、トークンをどれだけ使えるかということについては、2月28日時点でということで、いまはまだ、はっきりしていません。こういうのは、やりにくいのでは?
新井:たとえば、去年からのレギュレーションで闘っているチームも、2014年2月28日で開発が凍結されました。彼らも、今年のシーズン用に開発をしていたと思います。
ホモロゲーション(申請)の仕方次第ですね。(開発をしていた)その技術を、どこに使えるかなので、問題はないと思っています。
◆パッケージには自信がある
・・・・ロン・デニスは、ホンダのパワープラントには”いままでにない技術”がある、というようなことを言っています。それはいったい、どんなことなのか、教えていただけませんか?
新井:ハハハ(笑)、それは周回数を重ねてから、ということで(笑)。
ひとついえるのは、大切なのは、パッケージだということ。F1はエアロの要求が大きくて、コンパクト(な車体)の中に、出力を下げないパワープラントを収めることが要求されていた。そこから、レイアウトとパッケージには苦労しました。でも、それがひとつの闘える武器になったかなと思っています。ロンもパッケージには自信を持っています。それが、マクラーレンとホンダ、お互いの信頼関係になっています。
・・・・でも、出力をちゃんと出さないとレースにならない。やり方としては、まず目標(出力)を達成して、その後に、耐久性、信頼性を後追いするということですか?
新井:設計技術でいくと、目標を達成すると急に重くなるというものではないです。ただ、信頼性はおっしゃる通りなので、そのつもりで準備しています。
・・・・ドライバーからは何か?
新井:見たことないくらいコンパクトだと、ジェンソンは言っています。
◆これ以上小さくできないくらいに攻め込んでいる
・・・・現状、マクラーレンと組んでいる中で、ホンダが”新しいパッケージング”を用意したことによって、彼らが想定していたよりも、シャシーなりエアロダイナミクスの面においては、より良い上昇カーブを描けるという状態では”やっていけてる”とお考えでしょうか?
新井:エンジンとシャシーのパッケージングで言ったら、それは事実です。そして、ポテンシャルは非常に高いと思っていますし、これ以上(パワーシステムを)小さくしろと言われても、たぶんムリじゃないかと思えるくらいに”攻めて”います。
先日(2月1〜4日の)のシェイクダウンは、目的がだいぶ違っていて・・・・。みなさんの期待がね、ヘレスでガンガン走って(笑)、トップチームと拮抗するように期待されていたかもしれませんが、そう簡単にはいかなくてね。パッケージングを攻めたことによって・・・・先ほど、ちょっと言いましたけど、出力よりも、すべてのシステムが全部正常に動いていて、データ設定が思い通りに行くかどうかということを確認していたので。
われわれ、ラップタイムについては、こんなもんだろうと理解していましたね。(だから)何も心配してないんですけれど。数字だけ見ると、こんなに差があって大丈夫かと思われると思いますけれども、目的は、そこに置いていなかったので、最初のシェイクダウンということで、ステップはちゃんと通過できたと思います。
◆いまのF1は、将来の自動車技術に目を向けている
・・・・いまホンダがF1でやっていることで、将来、市販車の方に応用できる技術というのは、具体的にどういうものがあるんですか? たとえば、熱回生の話というのは、いまひとつ、熱回生が市販車に使えるというイメージが湧かないんですが、そのあたりをご説明いただけたらと思います?
新井:いまのF1のレギュレーションの中に、(技術として)秘められている可能性で市販車に入れられるものというのは、熱回生もそのひとつですが、どのくらい近い将来かというと、そんなに近いところではないと思うんですね。
そのほかに、技術的にいうと、たとえばハイブリッドで使うエンジンの電池・・・・これ
は、あれだけのエネルギーを”出し入れ”するわけですから、市販車のハイブリッドよりも相当、延長線上としてみても、そういうところにチャレンジしていく。
は、あれだけのエネルギーを”出し入れ”するわけですから、市販車のハイブリッドよりも相当、延長線上としてみても、そういうところにチャレンジしていく。
それから、最も基本的な(エンジンの)「燃焼」の技術について、それはいまの市販車は、効率は非常にいいです。エンジンの中を見せるわけにはいかないですけど、それなりに工夫をして、いい燃焼状態をどれだけキープできるかということで(ホンダの)市販車の技術は相当なものだと思っていますし。そうでないと、いまの出力は出せないとも思ってます。
ですから、相当、ハイブリッドの技術もそうですし、燃焼も、また熱回生もそうですけど、いまのF1のレギュレーションで、いろいろ決められたものというのは、やはり、F1自体が将来の自動車技術にちゃんと目を向けて、トライをしてるんじゃないかと、私どもは理解していて、ですから、賛成して参戦している意義もあるわけですし、まあ、チャレンジし甲斐はあるということです。
◆「熱」は害でもあるし、パワーでもある
・・・・もちろんカテゴリーは違いますが、昨年、国内のスーパー・フォーミュラでは、ホンダはかなり苦しんだということがあったと思います。
いま、レースのテクノロジーやレギュレーションが変化していく中で、”熱害”と言うものが生じやすいということがあると思うんですが、そのあたり、何かご意見をお持ちでしょうか? 去年「さくら」にできた施設が素晴らしいというのは、トライバー二人の話からも理解しましたが、稼働状態としては100%に至っていると考えてよろしいのでしょうか?
新井:われわれ、熱というのは”害”になるか”利用”するかというのがありまして。内燃機関なので、ガソリンを燃焼させて、それをどれだけ上手にエネルギー変換して、クルマを走らせるのに使うということで。
今回のレギュレーションで、廃熱の回収ということがあるんですけど、そのほかにも、たとえば、出力を出そうとして、ターボで過給圧すると、過給の空気の温度が上がっちゃうわけですね。どれだけ冷やせるか、冷やせないと馬力が出ないとか。
いろんなことで、熱を上手にマネージメントすることこそが、内燃機関の効率を上げるひとつの方法だと理解していて・・・・。技術的にはそこにチャレンジしてるわけです。
国内のカテゴリーでも、出力を上げようとすると、熱の問題は出て来る。F1はもっと厳しいので、誰しももっとパワーをと思ってるところを、バランスを取るというか。お互い、攻め合って、パッケージングもタイトにするというか。そういうことで、熱の利用、熱の処理の仕方というのは、レースでは重要。それが将来のクルマに向けても必要だという風に思ってます。
「さくら」についでですが、稼働をし始めたのが昨年(2014年)の1月くらいですけど、まだ100パーセント稼働にはなっていません。ただ、「さくら」の方に、市販車は完全に移ってますから、栃木の研究所で F1はやっています。
(2/2につづく)
Photos by
STINGER(会見画像)
McLAREN / Steven Tee(MP4-30)