ホットライン 2016 round5/ スペインGP(1/2)–メルセデスの同士討ち
メルセデスの二人の接触というショッキングな場面から始まったスペインGP。最後は、18歳の優勝というこちらもショッキングな結末となった。
メルセデスの同士討ちが何故起きたか、そして18歳の優勝をもう一度かみしめ、マクラーレン・ホンダの進化も再認識しつつ、クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、記憶に残るスペインGPを振り返る。
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◆何と、メルセデスがまとめて”消えた”?
羽端:いやぁ、レースは何が起こるかわからない・・・・なんて、よく気軽に言いますけど、ホントに、あり得ないようなことが起きてしまって。
STG:本当に!
羽端:スペインでは”事件”はいっぱいあったので。でも、何と言っても衝撃だったのは、やっぱり「一周目」ですよ!
STG:メルセデスの二台が、絡みました。思わずゲゲッと叫んでしまった(笑)。
羽端:ええ。私もたまらず、声が出てしまいました。
STG:1コーナーではアクシデントは起きないと読んでましたから。
羽端:お、それは?
STG:1コーナーアウト側のエスケープゾーンの”障害物”です。舗装されたエスケープゾーンに、高さ5cmくらいかな、カマボコ状の障害物が設置されているのです。ロシアGPのソチにはそれがなかったために、外に出ちゃった方が有利というおかしな状況になっていましたが、コースオフしたらデコボコを乗り越えるために、タイムロスする、というちゃんとしたペナルティが与えられる。スパ-フランコルシャンの1コーナーも以前は大回りすると有利でしたけど、そういう”ズル”ができなくなった。
羽端:ははあ、はみ出したら遅くなる? だからみんな、割りと慎重に行くようになる?
STG:です。でも、3つコーナーを回ったところで、その分の鬱憤が(笑)。
羽端:フフ(笑)、耐えきれず、ですか。でも、あの接触、スチュワードは「レーシング・インシデント」という判断をしたようですね。まあ、私もそう思います。ニコ(ロズベルグ)がインを必要以上に閉めすぎた。その狭くて”道”がないところへ、乱暴にもルイス(ハミルトン)が突っ込んでいった。二人の”イケナイ”部分を探せば、こういうことになるかとは思いますが。
STG:私は、ハミルトンが悪いというか、判断ミスと思います。以前のロズベルグだったら、インを閉めるようなことはしなかったかも。まぁ、いい人だったから(笑)。でも、去年優勝したメキシコGPのスタジアム表彰台で、壮絶な声援を受け、そこからの7連勝で”別人”になった。それをハミルトンは計算に入れていなかった。つまり、今までロズベルグをナメていた結果かな、と。
羽端:なるほどね。お、インが開いちゃったな、閉めなきゃ・・・・がニコ。あ、空いてるぜよ、行くぞ!・・・・がルイス。 ただ(後方への)合図の意味も込めてインを閉めようとした時には、実はその相手がもう来てしまっていた。
STG:去年のメキシコ以前のロズベルグだったらその通りと思います。でも、今は変わったことをハミルトンは認識しなくちゃと思います。”閉めなくちゃ”、じゃなくて、”オイオイ、来るのか、冗談じゃない、行かせないぞ!!”というような(笑)。
羽端:ははあ。ルイスとしてはこれまで通りに、空いてるから行ったのに、相手が閉めに来たという感じだったかもしれない。ただ、相手の”閉め”が間に合わないくらいに、自分が速かったともいえる。
STG:その関係性を、ハミルトンが読めなかった、ということで。
羽端:もうちょっと二人が離れていたら、閉めるから外へ行ってね、とニコが示して。そうか、そう閉めるなら外へ出すよというのがルイスで。普通は、そういうやり取りで、そのコーナーは終わるのでは?
STG:いや、ハミルトンはニコは閉めない奴、と決めているような(笑)。
羽端:あ、そういうことですね(笑)。ニコはそういうドライバーだったんだ、ずっと。そのへんの、ルイスの認識の違いですか。まあ、外(観客)から見れば、後ろから来るかもしれないから、そこは(前にいた方のニコが)一車線分空けておけよ、と。それは言えるかもしれないけど。でも、それも、300キロ近い速度での話で。
STG:以前のロズベルグなら一車身開けたかも、ですね。でも、ハミルトンが前だったとしたら? 間違いなく閉めますね。ニコもそうする、と思えればああはならなかった。すでにニコは、閉めたきゃ、いつでも閉める”人格”に生まれ変わった、と(笑)
羽端:そこですか(笑)。・・・・フム、そのへんを、ルイスは読んでいなかった。うーん、なるほど。それで、ルイスは車体の全部が芝生に出ちゃって。そこで滑り出すと、どんなドライバーでもコントロール不能。その結果、まるでルイス車がニコ車を”抱きかかえる”ようにして、二台一緒に砂の上で滑走状態に。
STG:でしたね。
羽端:他のチームに、まったく迷惑をかけなかったというのが、すごいですよね(笑)。まぁ、2台がそれだけ速い、ということでもあるけど。
STG:確かに当たり方が偶然すぎるほど2台こっきりでした。
羽端:だから、まあ、どうしようもなかったことなので、遺恨もないのでは? というのが私の説ですが。
STG:いや、遺恨は間違いなく残ると思います。ハミルトンがニコが”相手”と認めざるを得なかったので。
羽端:いまや、かつてのニコではない、と。ちなみに、「インシデント」って辞書で引く
と「出来事、ちょっとした事件」なのだそうで。
と「出来事、ちょっとした事件」なのだそうで。
STG:そう、ちょっとした「重たい出来事」だったかな、と。それより気になったのが、メルセデスの対応、というか、”パワーユニットの設定を間違えていた”という理由。ホントかよ、と思いましたが、落しどころとしては、素晴しい、というか(笑)。
Photos by MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team / DAIMLER