滅多にクルマを壊さないリカルドのスピンが語るもの
予選Q3で、ダニエル・リカルド(レッドブル)がクラッシュした。コーナリングの横Gが最大になったところで一瞬にしてテールが流れてコースを外れ、グラベルで減速しきれずにバリアにリヤからヒットした。限界を攻めた結果のスピンだと理解できた。
リカルドは、チームのリリースで、”もしレースでいい結果が出れば大きなタイトルになるチャンスだ”とジョークを飛ばした。クルマを壊したことは褒められないけれど、ぎりぎりを攻めた結果であり、クラッシュが極めて少ないダニエル・リカルドであることからも、スピンの理由は今年のマシンのコーナリング限界が高くなった結果だと解釈できた。
これが去年までのクルマだったら、リカルドはスピンしなかっただろう。今年のマシンは、ダウンフォースが増え、タイヤが太くなったことに併せて限界が高くなり、そこを超えたら為す術ナシだからだ。つまり、今年は、安定性の高いリカルドでさえスピンしたように、予選で攻める走りをすると、高い限界からのコースアウトが増えるかもしれない、ということになる。
一方で、レースでは予選ほどリスキーな走りはしないが、長距離を走るレースでは、高いコーナリングGのためにドライバーの体力が消耗し、終盤に混乱が起きる可能性か高まることになるかもしれない。フェラーリのF1ドライバーからイタリアのライウノのF1解説者を務めるイーヴァン・カペリは、「ミスが増えるだろうね」とコメントしてくれた。
「タイヤも大きくなってちょうどボクたちがやっていた1990年ころに似た感じになると思う」。これは、ルノーのスペシャル・アドバイザーとしてF1に復帰したアラン・プロストと同じ意見だ。
何が起きるかわからない、という意味で、スタートの瞬間は、これまで同様に緊迫してスリリングになることは保証されているが、レース終盤に、何かが起きる可能性が高まった。
今年のF1、いままでにないスペクタクルな展開が予測でき、開幕戦の決勝レースが、ますます楽しみになってきた。
[STINGER]山口正己
Photo by Red Bull Racing / Getty Images/Red Bull Content Pool