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ハミルトンの”失格”に学ぶ

金曜日以降、世界各国のF1関連のニュースは、「ハミルトンの失格」に集中している。ハミルトンが実際に起こったことを充分に説明できていない証言をしたと言うのは動かしがたい事実だ。しかし、”それ以上でも以下でもない”ということを忘れないようにした方がよさそうだ。

想像による、時には意図的な”作文”で、事実と違う解釈が一人歩きする。こうした事態を情報として”楽しむ”と言っては不謹慎かもしれないが、視点を変えると、F1GPのさらなるすごさを発見できることもある。今回はその好例と言っていいだろう。

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マーティン・ウィットマーシュ

◆マクラーレンのチーム代表
マーティン・ウィットマーシュは、今年から総帥のロン・デニスに代わってマクラーレンのF1活動のけん引役になった。着任早々の面倒な事件、ではある。

マレーシアGPのスケジュール開始の金曜日、ウィットマーシュ・チーム代表は、ブロウンGPのロス・ブロウン、トヨタF1のジョン・ハウェット、ウィリアムズのアダム・パーとともに、恒例のフライデーズ4に臨んだ。そこで、当然、ウィットマーシュへの質問は、ハミルトン失格”事件”と、それが原因でチームのデイブ・ライアンが休職したことに集中した。

質問者たち(いつでもF1の会場での質問は”容赦のないもの”と決まっている)は、”ハミルトンがウソを言ったのか”、”突然停職処分になったスポーティング・ディレクターのデイブ・ライアンが、そうしむけ、だから引責退職にしたのか”という方向に集中した。

ここで注目したいのは、ウィットマーシュが、普段とほとんど変わらない態度と声色で質問に対応したことだ。内容よりもむしろそのことが、マクラーレンというチームの強さと、F1がどういう戦いであるべきかを象徴していた。

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ロン・デニス

◆完璧なコメント
例えば、ウィットマーシュは、ハミルトンはウソを言ったのか、という質問に対して、”事実を説明するに充分なコメントではなかった”と答えた。ハミルトンを擁護しつつ、必要充分で隙のないコメントだ。

また、”デイブ・ライアンがウソを言わせたのか、ということに対して、その上司(ウィットマーシュもその一人)は、誰も関わっていなかったのか”、という質問に対して、「関わっていない。彼はその時の状況をすべて判断できるので、その必要はないし、彼もそう思っていたはずだ」とよどみなく答えた。責任分担が明確なF1は、指揮系統がはっきりしている。与えられた”権限”に上司が横から口出しなどしないのは当たり前のことだからだ。

そして、ウィットマーシュは続けた。「デイブは、チームのスポーティング・ティレクターとしてその責任を持つ立場だったので、スチュワードに対して責任をもって、なにが起こったか、欠けることなくを正直になさなければならなかった」。

◆責任の所在
つまり、ライアンに責任がある、と言っているのだが、日本の場合なら、ライアンに責任を押し付けて保身を考える答えに見える。しかし、ウィットマーシュは、「パドックで誰にでも聞いてみれば分かるが、彼は献身的な男だ」と付け加えることを忘れていない。

さらに、日本の常識からいくと、こうした席上で、「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」と言うのが常識と思われている(しかし、一体誰に謝っているのだろうか?)ようだが、当然、ウィットマーシュはそんな馬鹿げた形式的あいさつはしなかった。

ところで、デイブ・ライアンを欠いたことは、マクラーレンにとってどんな問題になるのかといえば、野球に例えれば、審判に忠実ではなかったことで、退場を命じられたの似ている。それが選手ならそう大きな問題ではないかもしれないが、デイブ・ライアンは、WBCの原監督な立場。ウィットマーシュも、「この週末に、我々のチームは極めて重要な人物を失った」といっている。

デイブ・ライアンは、一時的に休職し、それがマクラーレンにとってマレーシアGPでは大きな痛手になる。だが、ライアンの人間性からして、むしろチームはより強く結束するかもしれない。F1という戦いが、極めてシステマチックに進んでいるのと並行して、ヒューマン・ファクターに支えられていることが、今回の一件で再認識されるはずである。

冷たいチームといわれがちなマクラーレンが、実はロン・デニスの浪花節マインドを持っている意外にも温かみのあるチームであることが今回も裏付けられた。

戦いも含めたビジネスの高等教育を受け、それを航空機会社のBAE(現在のBAEシステム)で発揮し、そこからマクラーレンにヘッドハンティングされたウィットマーシュに、その思想は、早くも受け継がれているようだ。

いずれにしろ、マクラーレンに注目することで、マレーシアGPは、コースの外でもF1GPの面白さを加速したといって間違いないだろう。

【STINGER / Yamaguchi Masami

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