ブロウンの速さはどこまでホンモノ?
開幕戦で素晴らしいスピードを見せたブロウンGP。ブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者は、「タイヤが非常にきれいな使われ方をしていました」とブロウンBGP001のシャシーとサスペンションの素性のよさを証言した。
しかし、もしかすると、こういう憶測も成り立つ。
◆最も効率のいいテスト
ブロウンGPは、ホンダからのチームの委譲に手間取り、テストを開始したのが3月に入ってからだった。残り少ない実走時間は多くない。その中でチーム代表のロス・ブロウンが考えたのは、最も効率の高いテストだったはずだ。
ロス・ブロウンは、シューマッハとフェラーリ帝国を築いた敏腕エンジニアとして知られるが、エンジニアとは、マシンを設計して、セッティングを進める”マシン・エンジニアリング”を行なうだけと思われがち。だが、実は、同等に必要な二つのエンジニアリングが存在する。
ひとつは、”ドライバー・エンジニアリング”。チームのドライバーを、時にはなだめ、時にはすかし、叱咤激励して力を100%出せるように(場合によっては行き過ぎないように)コントロールする役目だ。
そしてもうひとつが、”チーム・エンジニアリング”だ。与えられた条件(例えば予算)をどう振り分け、どこにどう使うかをつぶさに検討してチームを運営する。実は、ロス・ブロウンが優れているのはここなのだ。
結果、少ないテスト時間でブロウンが進めたのは、ショートスティントのスピード向上だったと予測できる。限られた時間の中で、レースディスタンスを心配する前に、単発のラップを速くする。レースで使うロングランはその後で、という考え方だ。そして、ブロウンの計画どおり、それはうまくいった。しかし、ロングランは、もしかすると手付かずのまま、の可能性が残る。
レース後半、バトンがペースを落としたのは、本当に余裕があってのことだったかもしれない。しかし、もし、ロングランに不安があって、そしてタイヤのライフをきちんと使い切ることを確認する時間がなかったのだとしたら、後方からベッテルとクビツァがぐいぐい追いついてきている状況の中で、ブロウンがバトンに、「ペースを落とせ」と指示したかどうか。
レースにもしもはないが、もしも2位争いをしていたベッテルが欲張ってクビツァと絡まなかったら、バトンのタイヤはきれいな減り方だたっとは言えなくなるかもしれない。マレーシアでは、それが明確に試されることになる。