重量発表で作戦が見えた!!(Rd17アブダビGP)
初めて行なわれたアブダビGPは、前例のない特殊なシチュエーションとなった。フリー走行の1と3は日中の灼熱の中で行われ、予選と決勝レースは夕刻から夜にかけてスケジューリングされた。結果、フリー走行1と3は、”本番”である予選と決勝との温度差が大きく、走行データが参考にならない、という副次的な状況を生むことになった。
しかし、予選結果は、そうした”異変”に左右されることなく、日中でも日が陰っても、速いクルマは速いことを示していた。そして、発表された重量から、今回もいくつかの事実が見えてきた。
今シーズン4度目となるポールポジションを獲得したハミルトン。
◆ハミルトン+マクラーレンは確実に速い
ハミルトン+マクラーレンは、ここ7戦のうち4戦でポールポジションを奪っている。特にアブダビGPのヤス・マリーナ・サーキットでの速さは別格。すでに、フリー走行の段階から、その速さは群を抜いていた。最大の理由は、セクター2の長いストレートでKERSが”効いている”ことだが、「KERSがなくてもハミルトン+マクラーレンは速い」とM.ウェーバーが予選後に脱帽している。確かに、屈曲したセクター3でもハミルトン+マクラーレンは遅くなかった。
では、同じKERSを搭載するフェラーリはどうかと言えば、勝手が違う。その理由はライコネンがここ数戦、必ずプレスリリースでコメントしているように「F60の開発をやめた」からだ。「他チームは依然として開発を続けているから、こっちが遅くなるのも当然」とK.ライコネン。
ハミルトン+マクラーレンは、フェッテル+レッドブルより5kg重い。10kgで0.37秒遅くなる(ブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者談)ことから、単純計算でいけば、フェッテル+レッドブルよりコンマ2秒弱遅いはずだが、逆にコンマ7秒も速かったのだ。タイムが拮抗している今年の状況から、ハミルトン+マクラーレンの速さはずば抜けていた。レースはハミルトン+マクラーレンの独走が予測できる。ただし、レースは予定とおりに行くかどうかは、誰にもわからない。
◆超重の作戦
中嶋一貴+ウィリアムズ、アロンソ+ルノー、そしてグロジャン+ルノーが700kg以上。ほぼ”満タン”だ。レース序盤は苦しいはずだが、中盤以降、ライバルたちが1回目の給油をすませた後にセーフティカーが出るような事態があれば、大どんでん返しが起きる可能性がある。ただし、グロジャン+ルノーは、セフティカーの引き金にはなるかもしれないが、その恩恵を甘受する可能性は低そうだ。
セフティカー出動のきっかけになりそうな場所としてピットロード出口が話題になっている。下って左に曲がる最初の”コーナー”は、小林可夢偉によると「直角以上に曲がっている」と感じるという。「行っちゃえ!とやったら、ドカンと行きそう」とも。レースになって気合が入ってきたときに、誰かがそこでクラッシュしたら、間違いなくレッドフラッグが出るか、セフティカーの出動になる。
また、コーナーのほとんどが直角で、セフティゾーンとの関係で、”踏みたくなるけど踏めない”状況という。アクセルオンが早すぎたり強すぎると、リヤが滑って酷ければスピンする。だから踏めずに我慢しながら走らなければならない。中嶋一貴はその状況を、「いやらしい」と表現したが、踏むに踏めないジレンマが、レース中でたまり続け、我慢の限界を誰かが超えれば、そこにもセフティカーの出番になる。
セフティカーの可能性が高いとみる(期待する–?)チームが多いことは、予選後に燃料調整ができる予選11位以下の重量に注目するとよく分かる。アルゲルスォリ+トロ・ロッソ以外の全員が690kg以上というデータに揃っている。
◆KERSカーと”同期生”に挟まれた可夢偉
小林可夢偉は、13番手からスタートする。左前にライコネン+フェラーリ、左後ろに中嶋一貴+ウィリアムズ。可夢偉は、走行ラインと反対側の滑りやすい”ダーティーサイド”のグリッドからスタートする。同じような重さのライコネン+フェラーリと小林可夢偉+トヨタ、そして重い中嶋一貴+ウィリアムズの3台が、スタートでどう動くか、先陣争いだけでなく、ここもスタートの見どころになりそうだ。
予選順位 | No. | ドライバー | チーム | 総重量 | STG重量 | 目安 |
1 | 1 | ハミルトン | マクラーレン | 658.5kg | -11.5kg | ▽▽ |
2 | 15 | フェッテル | レッドブル | 663kg | -7kg | ▽ |
3 | 14 | ウェーバー | レッドブル | 660kg | -10kg | ▽▽ |
4 | 23 | バリチェロ | ブラウン | 655kg | -15kg | ▽▽ |
5 | 22 | バトン | ブラウン | 657kg | -13kg | ▽▽ |
6 | 9 | トゥルーリ | トヨタ | 661kg | -9kg | ▽ |
7 | 5 | クビツァ | BMWザウバー | 654.5kg | -15.5kg | ▽▽▽ |
8 | 6 | ハイドフェルド | BMWザウバー | 664kg | -6kg | ▽ |
9 | 16 | ロズベルグ | ウィリアムズ | 665kg | -5kg | ▽ |
10 | 12 | ブエミ | トロ・ロッソ | 661.5kg | -8.5kg | ▽ |
11 | 4 | ライコネン | フェラーリ | 692kg | +22kg | ▲▲▲▲ |
12 | 10 | 小林可夢偉 | トヨタ | 694.3kg | +24.3kg | ▲▲▲▲ |
13 | 17 | 中嶋一貴 | ウィリアムズ | 704kg | +34kg | ▲▲▲▲ |
14 | 11 | アルゲルスォリ | トロ・ロッソ | 696.5kg | +26.5kg | ▲▲▲▲ |
15 | 7 | アロンソ | ルノー | 708.3kg | +38.3kg | ▲▲▲▲ |
16 | 21 | リウッツィ | フォースインディア | 695kg | +25kg | ▲▲▲▲ |
17 | 20 | スーティル | フォースインディア | 696kg | +26kg | ▲▲▲▲ |
18 | 2 | コバライネン※1 | マクラーレン | 697kg | +27kg | ▲▲▲▲ |
19 | 8 | グロジャン | ルノー | 710.8kg | +40.8kg | ▲▲▲▲ |
20 | 3 | フィジケラ | フェラーリ | 692.5kg | +22.5kg | ▲▲▲▲ |
<目安>
*670Kgを基準値として、重くなる場合は▲、軽くなる場合は▽
*▲と▽は、一つ=0〜10kg、二つ=10〜15kg、三つ=15〜20kg、四つ=20kg以上
※1:ギアボックス交換で5グリッド降格