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[STINGER覆面座談会]–最近、アクシデントが少ないのは? 2/2

(その1からつづく)

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スパ-フランコルシャンの名物”オールージュ”。実は、このコーナー自体ではなく、この先の、飛び上がり気味にGが抜けつつ通過する左コーナーの方がスリリング。スタート後の1コーナーでの混乱は、そこに早く行きたいレーサー心理?!


◆ティルケ・コースの安全性が完走率に貢献!?
事情通B(以下、B):ここ数年の完走率は、一目でわかるくらい高くなっていると言うことに気づいたわけだけど。

ミーハーA子(以下、A):接触が少なくなったのは、コースの安全が高くなったからかしら?

B:それは確実にあるね。しかし、最近のF1コース設計を全権委任されているヘルマン・ティルケ氏が最初に作ったセパン・サーキットの完成は14年前の1999年だけど、最初の完走率は、50%なので、実はあまり関係ないかも。

ティルケ・デザインは、去年初めてF1を行なったアメリカGPのサーキットofアメリカを除いて一番新しいアブダビで、完成が5年前。アブダビの場合、完走率が、90%から始まって、87.5、83.3、70.8と逆に落ちているけれど、これは別の要素がありそう。

A:ナイトレースだからとか?

B:昼間スタートして夜ゴールするトワイライトレースね。で、フリー走行がほぼまっ昼間。太陽が出ていると気温が高い時間帯。太陽が沈んだときのデータがほぼない状態。なので、レースの半分の夜間の準備が完璧じゃなくて、だから、ある程度”予測”で走らざるを得ないのかも。回数を重ねて走行量が増えると、ドライバーは慣れてくるけれど、データの蓄積が追いつかずにアンバランス、という辺りが、完走率を下げているかもね。

でも、アブダビGPのヤス・マリーナは例外で、他のコースのデータは、ここ3年が圧倒的に完走率が高くなって、マシントラブルを含むアクシデントが減っている。

◆安全性の高さ=安全?
A子:サーキットの安全性ばかりじゃない、ってこと?

B:もちろん、サーキットのレイアウトもひとつの要素だけどね。

謎の通行人Mr.XW(以下、Mr.X):富士スピードウェイもティルケだ。安全すぎて面白くもなんともないコースになってしもた。

B:またまた突然ですね、Mr.X。でも、おっしゃる通り。安全は大切だけれど、オーバークォリティという意見が多いですね。

Mr.X:大自動車メーカーが経営しているんだから、安全は100%保証キボンヌだかん。

B:なんで突然三河弁なの? ま、いいけど。でも、コースサイドのエスケープゾーンが舗装になって、はみ出しても戻れちゃいますからね。

Mr.X:ふふふ、だったら、どうして同じティルケ設計のシンガポールの完走率が高くないんじゃ?

A:F1 DataWeb見たら、75.0% -70.0%-66.7%–87.5%-79.2%でした。

B:シンガポールGPのマリナ・ベイ・サーキットは、特別。

A:どういう風に?

B:まず、スタートが夕刻なので、夜祭の高揚感の中でレースが始まる。ドライバーの意識が、まずもって高揚している。それを後押しするようになコースレイアウト。

A:公道ですよね?

B:市街地を使った特設サーキットだから、直線を交差点でつないでいる。で、周囲はコンクリートウォールだけれど、コーナーの先は、交差点をまっすぐ行けるように、ランオフエリアが広〜く取ってある。

A:だったら安全なんじゃないの?

B:ドライバーの安心感は高くなるね。

A:あっ、安心して無理する?!

B:たぶんそういうことだと思います。50年前に比べると、カーボンファイバー製でマシンの安全性が圧倒的に高くなったけれど、以前に比べて、”多少のことじゃ大丈夫”と思って、乱暴な方向になっちゃったのと似ているかも。

A:もしかして、”ぶつからないクルマ”って、最近よく宣伝で見るけど、アレも同じ? なだか複雑だなぁ!!

B:どんな制御が発達しても、レールの上を走っているんじゃないので最後は、人がコントロールしているってことだね。

◆シミュレーションの発達が”人”を不在にしている?
B:そして、もうひとつ、シミュレーション技術の発達ですね。

A:事前にいろいろわかっちゃっているってことですか?

B:もちろん、すべてじゃないにしても、ほぼほぼ全部が、収拾したデータの蓄積と、それを裏打ちするシミュレーションで完成の領域にあって、コントロールの多くが、運転手じゃなくて、機械が制御できちゃっている。

A:だからエンジンブローもなくなった?

B:エンジンだけじゃなくて、サスペンションもギャボックスも、すべてにおいてクォリティが圧倒的に高くなった。

A:スタートでアクシデントが減っているのも?

B:規則的なこともあるけれど、気温や路面のミューが微妙に影響するクラッチの滑らせ具合やミートポイントも、数年前からドライバーの仕事じゃなくなっている。

A:だからスタートで隊列がバラケにくいワケですね!!

Mr.X:グロジャンがいなければ。

B:グロジャンは、その辺りの理解が深まって成長したと思いますよ。

Mr.X:琢磨は、キルスイッチに触っちゃった。

B:10年近く前の話ですからね、それは。まさにその辺りも進化したと思います。そもそも、スタートを迎える時のレーサーは、精神的にテンションがかかって非常に不安定な状況にいる。それをチームが知っているべき、という意見もあった。

A:ちょっと触ったくらいで切れちゃうスイッチを作ったチームが悪い、ってこと?

B:そう。まあ、とっさのときに電気を止めるための重要なスイッチだから、ねじって倒してもう一回ねじらないと切れないくらいとはいわないけれど、ドライバーのテンションがハイになったそういう状況であることを理解した配置や操作でなければ、ということで。琢磨が乗っていたBARは、その領域に到達できていなかったかも。

Mr.X:ガスコンロのつまみも、点火するときは回しにくい方に回す。

B:たまにはいいことを言いますね。とっさのときに回しやすい方に回すと消える仕組みになっている。

A:いまのクルマなら、キルスイッチを切ってしまうこともないのかな?

B:たぶん。すべてが、進化して、機械のコントロールになったから、間違いが減った。

A:なんか複雑だなぁ。

◆スパとモンツァには、期待!?
B:ここで、マシンにストレスがかかる4大高速サーキットと言える、イギリスGPのシルバーストン、ベルギーGPのスパ-フランコルシャン、イタリアGPのモンツァ、日本GPの鈴鹿の完走率を見ると。ちょっといいことに気づく(笑)。

スパとモンツァ.jpg


A:それぞれ、83.3、79.17、79.17、82.97。あっ!!

B:ここから2戦のベルギーGPとイタリアGPは、完走率が、低い。

A:やったぁ!! って、なんか複雑。でも、今週末のベルギーGPが楽しみになったのも確かです!!

 ※photo by Jiri Krenek / data by F1 DataWeb
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