[STINGER覆面座談会]–最近、アクシデントが少ないのは?1/2
ハンガリーGPの完走率。ジワジワ高くなっている完走率の数値が、1998年から突然、高くなっている。スリックタイヤから、グルーブドタイヤ(溝付きタイヤ)になったのがこの年から。ここで完走率は新記録になったが、この後、星印の2回を除いて、完走率のデータは、1997以前を下回わらずに上昇している。
ミーハーA子(以下、A子):素朴な疑問が浮かんだんだけど、最近、アクシデントが少なくないですか?
事情通B(以下、B):そういわれれば確かに。
A子:一番ドキドキするのがスタートなんだけど、1コーナーで多重クラッシュとか、去年まではあった(写真はベルギーGP)けど、今年はないし。
B:残念?
A子:正直言ってそうです!!
B:正直でよろしい。そういえば、エンジンブロー、という言葉を最近聞かないね。
A:以前は、白煙を吹き上げてリタイアとか、よくあったけど。
通りすがりの怪人Mr.X(以下、Mr.X):佐藤琢磨がよく、やらかしていた。
B:な、なんですか、突然!! ムカシ話をホジクリ返しますね。ちょっと待ってくださいよ。フムフム。完走率を調べてみたら、面白いことに気がついた。
A子:なになに?
B:ちょっとにわかには信じられないんだけれど、完走率が低くてサバイバルレースのイメージがあるカナダGP、今年の完走率は90.9%なんだ。2000年から2008年(2009年は開催せず)は50〜72.7%、1990年代は、一度76.2%という数字があるけれど、それ以外は、30〜50%台という具合なのに。
A:どんどん高くなってますね。
B:例えば、前半戦の最後を飾ったハンガリーGPだけを観ても、今年は、22台出走して完走19台で84.2%だったけど、初開催の1986年の完走率はたったの36.5%だった。
A子:そんなに低かった?!
B:当時は、ターボエンジン時代になったばかり。1500ccで1000馬力以上というすさまじい時代だから、そのせいもあるかも。でも、その後、ターボが禁止になっても、50%前後を行き来しているね。 でも・・・。
A子:でも?!
B:数字が、1998年に突然、高くなっているんだ。
A子:さすが詳しいですね!!
X:こういう時に重宝するのが”F1 DataWeb“である。
B:その通り!! や、やりにくいなぁ、Mr.Xが来ると。でも、おっしゃる通り、ドライバーの戦績から、レース毎の結果まで子細に掲載されている優れモノのサイトなんだよ。
A子:そこに”完走率”も出ている?
B:そう。で、その、突然完走率が高くなった1998年から、タイヤに溝が入った。つまり、スリックタイヤではなくなった。F1の規則を司るFIAが”スピード抑制策”のためにそうしたんだ。溝を入れた分だけ、タイヤの接地面積が減ってグリップが下がるから。
Mr.X:マシンの幅も規制された。
B:おっしゃる通り、2000mmから1800mmに大幅に狭められた。
A子:あ〜っ、思い出した。なんか凄くかっこ悪くなっちゃったと思った時だわ!!
B:そうそう、でも、見慣れたら、そんなこと忘れてたでしょ?
ともあれ、トレッド幅規制もあって、FIAの思惑通り、1998年のハンガリーGPの予選タイムは、スリックタイヤを履いた1年前より2秒以上ラップタイムが遅くなった。結果として、完走率が高くなったのかもしれない。
A子:そうなんですね!!
B:もう少しデータを吟味すると、最近3年間のハンガリーGPは、完走率80%以上で安定しているんだよ。
A子:それはなぜ?
B:そいつは、次回。
A子:え〜、待ちきれない!!
B:ヒントは、機械と人の関係。
A子:ん〜〜? 機械と、人〜っ?
(その2につづく)
※photo by Jiri Krenek / data by F1 DataWeb
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